2011 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平上皮癌の浸潤におけるHPIPタンパク質の役割の解明
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23792115
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
山本 剛 昭和大学, 歯学部, 講師 (80384189)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | HPIPタンパク質 / 口腔扁平上皮癌 / LC/MS/MS |
Research Abstract |
本年度は、(1)HPIPの局在解析、(2)HPIPとPBXの局在解析を行った。HPIPの凍結組織切片を用いた局在解析では、予備実験の結果と同様に正常粘膜上皮で陽性像を認めず、異型上皮及び口腔扁平上皮癌において陽性細胞を認めた。研究計画に記載の様々な口腔粘膜病変を用いて免疫染色を行った結果、乳頭腫や白板症では陽性像を認めなかった。しかし、白板症の中でも、軽度の異型を伴っている症例では基底層から有棘層にかけて若干の陽性像を認めるケースがあった。異形上皮では、研究計画所に予備実験の結果として掲載した症例と同様に多くのケースで基底層から有棘層にかけて陽性細胞を認めたが、高度異形上皮において基底細胞層の基底膜側に限局して強いHPIP陽性像を認める症例が4症例あった。今回染色した高度異形上皮と考えられる症例の50%以上を占めており、上皮の癌化と浸潤開始にHPIPがなんらかの働きを担っている可能性が示唆される。しかし上皮内癌ではHPIPの陽性所見が不規則であり、ほとんど陽性所見を認めない症例も1例存在した。口腔扁平上皮癌では、分化度よりむしろ浸潤形態と明確に相関しており、diffuseな形態を示す浸潤先端部で特に強くHPIP陽性所見を認めた。HPIPとPBXのco-localizationでは、我々の予想と反してHPIPの核内陽性像が非常に少なく、今後検討し直す必要性があると考えられる。HPIP強制発現系では,XhoIサイトを付加したプライマーセットがHPIPの3‘末端、5’末端配列の関係で機能せず、現在それぞれUTR側に伸ばしたプライマーセットを用いてクローニングを行っている。このプライマーセットは機能する事が確認出来ている為、このproductを用いてコンストラクトを作成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的のうち、「HPIPの口腔扁平上皮癌診断マーカーとしての有効性と局在の解明」については概ね目的が達成出来たと考えられる。HPIPは、癌細胞が浸潤する形質を持つ過程で何らかの働きを持っている可能性が示唆され、特に高度異形上皮、上皮内癌、初期浸潤癌の形態学的に診断困難な境界病変の診断に関して有用なマーカーとなる可能性が高い。平成23年度研究計画で、遺伝子導入がややプランから遅れてはいるが、当初研究計画には入っていなかったN2サプリメントを用いたスフェロイド培養系でHPIPの発現が上昇しているという新たな知見も得ており、EMTや癌幹細胞とHPIPが関連し、浸潤に繋がっている可能性も考えられている。遺伝子導入はクローニングの段階で若干のトラブルはあったがすでに解決しており、順次研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね研究計画通りに進行させる予定であるが、平成23年度研究で癌幹細胞との関連が示唆された為、HPIPを強制発現させた細胞を用いてSP分画の割合を検討する実験を追加する予定である。また、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析において膜抗原にも着目して研究していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実績の概要に記載の如く、平成23年度研究計画に予定していた遺伝子導入が年度をまたいでしまっている為、研究費の使用に若干のずれが生じている。平成24年度は、支出額の大きい研究経費としてマイクロアレイ、LC/MS/MS解析を行う。新たに予定しているSP分画については、すでにルーチンで動いている系の為、新たな研究経費の必要性は生じない。
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