2011 Fiscal Year Research-status Report
Fusobacteriumにおける硫化水素産生機構の分子構造基盤の確立
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23792130
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
毛塚 雄一郎 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (50397163)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 硫化水素 / 歯周病 / Fusobacterium / 酵素 / 立体構造 |
Research Abstract |
Fusobacterium nucleatumは、L-システインを基質として硫化水素を産生することのできる酵素を少なくとも4種類持つことが明らかとなっている。今年度は、このうち主に2種類の酵素(Fn1220とFn1055)について、酵素学的および結晶構造解析を行った。L-システインを基質とした硫化水素産生への寄与が最も高いFn1220は、研究開始当初までに酵素単独および基質類似体(L-セリン)複合体の立体構造を決定していた。これに加え、基質であるL-システインを用いて、新たに基質複合体の立体構造解析に1.84 Å分解能で成功した。これらの複合体構造において各々のアミノ酸は、Fn1220の補因子であるピリドキサール5’-リン酸(PLP)と共有結合した状態で観測された。Fn1220は、2分子のL-システインから、L-ランチオニンと硫化水素を産生する。この反応は、L-システインのβ置換反応であり、得られた2種類の中間体は、β置換が起こる前後に生成するアルジミン(external aldimine)であることが確認された。これにより、L-システインを基質として硫化水素(とL-ランチオニン)を産生する一連の反応を原子レベルの立体構造に基づいて議論することが可能となった。反応中間体と直接相互作用するアミノ酸残基に部位特異的変位を導入した酵素の酵素学的解析により、基質のカルボキシル基を認識するThr69とGln142が触媒活性に対する寄与が大きいことが示された。一方、Fn1055については、L-システインに対する酵素学的パラメーターを決定した。また、新規結晶化条件の探索に成功し、2.07 Å分解能で立体構造を決定した。得られた構造はFn1220と類似しており、これら酵素の反応機構の解析を進める上で互いに有用な情報となり得ると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
得られた成果は、2種類の酵素に限定的であったが、Fn1220については計画通りに解析を終了しており、Fn1055については翌年度に予定していた実験項目を前倒しで実施することができた。実施項目の入れ替えはあったものの、研究実施項目全体で考えれば、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度成果の得られなかった残り2種類の酵素について集中的に解析を進める。うち一つの酵素に関しては、大腸菌を用いてリコンビナントタンパク質として発現させた時に、発現量が極めて少ないことが問題となっている。タグの種類、発現させる領域および培養条件等を詳細に検討して対応したい。もう一方の酵素については、今年度Fn1055を優先した都合により、実験時間の確保が困難となっただけであり、来年度に当初の計画を実施することに障害はないと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費、旅費、人件費、その他(論文投稿、校閲および物品の運搬費)としてそれぞれ44、40、40、16万円を目安に使用する計画である。次年度に使用することとなった研究費(約1.6万円)は物品費に上乗せする。これは、今年度の直接経費の1%に満たない額であり、研究費のほぼ満額を使用したことになる。
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Research Products
(4 results)