2012 Fiscal Year Annual Research Report
Fusobacteriumにおける硫化水素産生機構の分子構造基盤の確立
Project/Area Number |
23792130
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
毛塚 雄一郎 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (50397163)
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Keywords | 硫化水素 / 歯周病 / Fusobacterium / 酵素 / 立体構造 |
Research Abstract |
口腔細菌により産生される硫化水素は口臭の主要な原因物質であり、歯周病を進行させる一因としても知られる。歯周病原細菌であるFusobacterium nucleatumは高い硫化水素産生能を持ち、これには少なくとも4種類の硫化水素産生酵素が関与する。今年度行った立体構造解析の結果、このうちの1つであるFn1055は、同一サブユニットが2回回転軸で関係付けられる二量体構造を取っていた。サブユニットはα/β構造を持つ2つのドメインからなっており、補因子であるピリドキサール5'-リン酸は、これらの作るクレフトの底部でLys46と共有結合を形成していた。解析に用いた結晶の非対称単位には4つのサブユニットが存在するが、1つは触媒部位を含むクレフトが開いた形を、他の3つは閉じた形をしていた。得られた結晶構造は、Fn1055による触媒反応が、クレフトの開閉を伴うL-システインのβ脱離反応により進むことを支持するものであった。さらに、この反応において塩基として働くと考えられるアミノ酸残基を見出し、これが反応に必須であることを明らかにした。 研究期間を通して、この歯周病原細菌における2つの主要な硫化水素産生酵素(Fn1220とFn1055)に対し、酵素学的および結晶構造解析を行うことができた。Fn1220については、2種類の反応中間体複合体の立体構造解析に成功し、L-システインを基質として硫化水素(とL-ランチオニン)を産生する一連の反応を原子レベルで議論することが可能となった。Fn1055については上述の通りである。さらに、同細菌由来の別の硫化水素産生酵素に対しても、同様のアプローチで研究が進展している。いずれの酵素も異なる機構によりL-システインから硫化水素を産生している。本研究課題の実施により、F. nucleatumの持つ多様な硫化水素産生機構の分子構造基盤が形成できたものと考える。
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Research Products
(7 results)