2011 Fiscal Year Research-status Report
象牙芽細胞における刺激受容機構と象牙質形成の機能連関
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23792132
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
津村 麻記 東京歯科大学, 歯学部, 助手 (90582346)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 象牙芽細胞 |
Research Abstract |
平成23年度の研究計画では歯髄スライス標本作製、パッチクランプ記録、細胞内Ca2+濃度測定を行うというものであった。 現在までに本研究費で購入したマイクロスライサーにより歯髄スライス標本を作製し、スライス外周に存在する象牙芽細胞を用いて実験を行っている。まず、Dentin matrix protein-1, dentin sialoprotein, nestinの3種類の免疫蛍光染色を行い、全てに陽性を示したことで実験に用いた細胞は象牙芽細胞であることを確認した。パッチクランプ記録は本研究費で購入したマニピュレーターを用いて行った。細胞内からと細胞外からの刺激を行い、TRPV1電流と刺激のための細胞外溶液と細胞内溶液の投与から応答が出るまでの遅延時間を比較することで2種類のTRPV1アゴニストの結合活性化部位を特定した。 細胞内Ca2+濃度測定ではTRPV1チャネルアゴニストに加えて低pH刺激を行い、TRPV1チャネルの象牙芽細胞における発現を示した。また、各種TRPV1チャネルアゴニストの結合活性化部位を特定した。加えて、カンナビノイド(CB)受容体アゴニストとアンタゴニストを用いることでCB1受容体の発現、denylylcyclase阻害薬を用いることでTRPV1チャネルCB1受容体とのクロストークにおける細胞膜下シグナル経路、Na+-Ca2+交換体阻害薬を用いることによりTRPV1チャネルとNa+-Ca2+交換体のカップリングの存在を明らかにした。 TRPV1チャネル以外のその他のTRPチャネルの発現の有無については、現在までにTRPV2, TRPM8, TRPA1チャネルの検討を行った。細胞内Ca2+濃度測定により、各種TRPチャネルのアゴニストとアンタゴニストを用いることで象牙芽細胞における発現が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では象牙芽細胞の細胞膜刺激受容機構とそれに伴う象牙質形成機構を明らかにするために以下の研究を行うとした。1)TRPV1チャネルを含めた各種TRPチャネルの刺激受容と活性化部位の検索、2)各TRPチャネルおよびその他細胞膜タンパク質(カンナビノイド受容体)とのクロストークにおける細胞膜下シグナル経路、3)各TRPチャネルのリガンド濃度依存性についての検討。また、Na+-Ca2+交換体(NCX)とCa2+-ATPaseの象牙質形成への寄与について検討するために象牙芽細胞に存在が報告されているNCXとCa2+-ATPaseのsiRNA投与動物における象牙質構造をマイクロCTを用いてコントロールと比較する。 現在までにTRPV1チャネルの刺激受容と活性化部位の検索を行い、カンナビノイド受容体とのクロストークにおける細胞膜下シグナル経路を明らかにした。機械感受性チャネル、温度感受性TRPチャネルであるTRPV2, TRPM8, TRPA1チャネルについては象牙芽細胞における発現を示す結果が得られた。TRPV2, TRPM8, TRPA1チャネルについては平成24年度にCa2+流入の特性についての検討を行うが、当初の計画では平成23年度に行う予定であった。それはTRPV1チャネルとカンナビノイド受容体とのクロストークにおける細胞膜下シグナル経路の検討をする際、予定より時間がかかってしまったためである。 NCXとCa2+-ATPaseの象牙質形成への寄与については当初から平成24年度に検討することにはなっていたが、研究目的の達成度としては達成度は計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度はその他のTRPチャネルの発現の有無やCa2+流入の特性、神経伝達物質の存在の検索、Na+-Ca2+交換体(NCX), Ca2+-ATPaseの象牙質形成への寄与に対する検討を行う。TRPV1チャネルについては免疫化学染色と免疫蛍光染色によりTRPV1チャネルとCB1受容体の共発現の有無の検索を行う。 その他のTRPチャネルについては現在までに、TRPV2, TRPM8, TRPA1チャネルについての検討を行った結果、象牙芽細胞における存在が示されており平成24年度はそれぞれのCa2+流入の特性についての検討を行う。象牙芽細胞におけるTRPチャネルmRNA発現のスクリーニング:RT-PCR法は計画通り行うが、siRNAを用いたTRPチャネルサブファミリーの発現の検索については良い結果が期待できなかったため、免疫化学染色、免疫蛍光染色を用いて行うことに変更する。 神経伝達物質の存在の検索については当初の研究計画から培養方法を変更する。当初は、歯髄スライスと急性単離した三叉神経節細胞を同一culture dish内で初代共培養を行うというものであったが、歯髄スライスと三叉神経節細胞は別のdishで初代培養を行い、実験前に三叉神経節細胞を歯髄スライスのdishにまくという手法である。三叉神経節細胞を歯髄スライスのdishにまいてすぐには使用できないため、60分間インキュベーター内で静置した後に使用する。この方法により作製した標本は三叉神経節―歯髄スライス標本として使用できることは確認済みである。その後の実験方法は変更なくパッチクランプ法を用いて神経伝達物質(ATP)の存在の有無を検索する。 NCX, Ca2+-ATPaseの象牙質形成への寄与に対する検討については当初の研究計画通りに行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は15万円以上の装置は購入する予定はないが、多くを試薬や動物などの消耗品の購入に使用する予定である。平成24年度に使用する試薬はTRPV1チャネルだけでなく他のTRPチャネルの検索を行うため、様々な種類のTRPチャネルのアゴニストやアンタゴニストが必要になる。また、当初の研究計画にはなかったが免疫染色も行うため、TRPチャネルやその他の細胞膜タンパク質(カンナビノイド受容体)の抗体も必要になる。したがって、抗体、TRPチャネル関連の試薬は高価であるため多くが消耗品である動物や試薬の購入に使用される。これは当初の研究計画通りであり、平成23年度に繰り越した金額は消耗品の購入にあてる。加えて得られた結果をもとに学会発表を積極的に行い、論文としても発表する予定である。そのため研究成果発表に必要なポスター制作費や交通費、宿泊費、論文発表の際の論文校閲や別刷代などにも使用予定である。学会発表は、国際学会、国内学会ともに発表する予定であるため、旅費も研究計画通り使用する。また、論文発表についても2編から3編を平成24年度に発表できるよう現在準備を進めていることから当初の研究計画通りの予算で使用する。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] Functional coupling between TRPV1, CB1 and NCXs in rat odontoblasts
Author(s)
Tsumura M, Shibukawa Y, Muramatsu T, Sobhan U, Sato M, Ichikawa H, Tazaki M
Organizer
6th International Conference on Na+/Ca2+ Exchange 2011
Place of Presentation
Naples, Italy
Year and Date
平成23年10月2,3,4日
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[Presentation] NCX expression in enamel/dentin-forming cells
Author(s)
Shibukawa Y, Tsumura M, Sato M, Ubaidus S, Muramatsu T, Matsuda T, Baba A, Tazaki M
Organizer
6th International Conference on Na+/Ca2+ Exchange 2011
Place of Presentation
Naples, Italy
Year and Date
平成23年10月2,3,4日
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