2011 Fiscal Year Research-status Report
拡散強調MRイメージングによる舌癌リンパ節転移予測プロジェクト
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23792152
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
坂本 潤一郎 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (40506896)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 画像診断 / 癌 / 臨床 / 拡散現象 / 灌流現象 |
Research Abstract |
当該年度では拡散現象および灌流現象を模した拡散・灌流MRファントームを作製した。また、この作製した拡散・灌流MRファントームを東京歯科大学千葉病院現有のSiemens社製 1.5T MRI装置を用い、頭頚部用コイルにて通常のT1、T2強調画像およびHASTE法拡散強調MR画像の撮像を行った。灌流ファントームに送り込む送液の流量を変化させ、撮像を行い、拡散現象および灌流現象の描出性および最適な評価法を検討した。その結果、拡散強調MR画像は単位時間当たりの流量増加に伴い、主に灌流現象の影響が増加することが分かった。また、拡散強調MR画像より得られる信号強度(SIおよびSI0)は真の拡散現象(D)、灌流現象の割合(f)、および偽の拡散現象(D*)により、SI/SI0 = (1-f)・exp(-bD) + f・exp{-b(D*+D)}と表現され、実験結果より拡散現象と灌流現象とを近似的に分離することが可能であることが分かった。また、現在、臨床に用いられている最適化されたHASTE法MR画像の頭頸部腫瘤性病変の良悪性鑑別に対する有用性についてレトロスペクティブに分析した。HASTE法拡散強調MR画像を含めたMR検査を行った頭頸部腫瘤性病変を有する患者のうち、最終診断が得られた44患者46病変を対象とした。撮像した拡散強調MR画像より拡散現象および灌流現象の両者を含んだ見かけの拡散係数(ADC値)を撮像に用いる反転傾斜磁場の強さを変えた3種類の算出法で算出し、比較した。いずれの算出法においても、およそ80~90%の正診率で悪性腫瘍を正しく診断できた。また、算出法によって灌流現象の影響が変化することも分かった。この結果については英文雑誌(Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology, Oral Radiology)に投稿し、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
拡散現象および灌流現象を評価するためのファントームの作成に多くの時間を要した。計画当初は拡散・灌流MRファントームのチューブ内を流れる水溶液の拡散現象および灌流現象を評価する予定であったが、それでは生体の組織における現象を模擬しているとはいえず、再考した。いくつかの過去の文献に同様の実験を行っているものもあり、その多くはスポンジにより組織における細胞を模擬し、チューブ内に封入、水溶液を流し、灌流現象を模擬するものであった。今回、スポンジを用いることも考えたが、より組織を忠実に模擬したモデルを構築するため、スポンジではなくマイクロカプセル(人工イクラ)をクロマトグラム管に封入し、水溶液を流すファントームを考案し、作成した。また、最適な評価法については未だ検討中であり、特に偽の拡散現象(D*)の算出についてはカーブフィッティングによる数学的解析を要し、高度な機能を持つ解析ソフトの導入を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に引き続き、拡散・灌流MRファントームにより得られたデータの解析を行い、評価法について最適なものを検討する。拡散・灌流MRファントームでの検討により得られた最適な撮像法および評価法を用いて、東京歯科大学倫理審査委員会からの承認を得、インフォームドコンセントの得られた健常ボランティア10名程度の拡散強調MR画像の撮像および拡散現象、灌流現象のデータを評価を行う。健常ボランティアでの評価として、咬筋の運動前後の撮像を予定していたが、拡散強調MR画像において信号が得られにくいことより、顎下腺の信号強度に変更することを考えている。拡散・灌流MRファントームでの検討により得られた最適な撮像法および拡散現象、灌流現象評価法がin vivoでの評価が可能かどうかを検討する。また、東京歯科大学千葉病院における倫理審査委員会承認のもと、MRI検査が必要となった外科手術を前提とした舌癌患者のうち、インフォームドコンセントの得られたボランティア患者20名以上に対し、拡散強調MR画像を撮像し、病変における拡散現象および灌流現象を評価する。外科手術後のリンパ節転移の有無および転移リンパ節数の最終診断との関連性について評価する。得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最適な評価法については未だ検討中であり、特に偽の拡散現象(D*)の算出についてはカーブフィッティングによる数学的解析を要する。そのため、高度な機能を持つ解析ソフトの導入を予定している。また、成果については学会および英文雑誌に投稿を予定しているため、旅費および英語論文校正費に使用する予定である。
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