2012 Fiscal Year Annual Research Report
「オートファジー受容体」の口腔上皮細胞の感染防御機構における役割の解明
Project/Area Number |
23792158
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
猪俣 恵 朝日大学, 歯学部, 助教 (40553798)
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Keywords | オートファジー / ヒト上皮細胞 / 感染防御機構 / Toll様受容体(TLR) |
Research Abstract |
Toll様受容体(TLR)は微生物の構成成分のパターンを認識することで、様々な免疫応答を誘導し、特に自然免疫機構において中心的役割を果たしている。近年、TLRシグナルは「オートファジー」を誘導し、細胞内侵入性細菌の排除を行うことが明らかになってきた。さらに最近、「オートファジー受容体」と呼ばれる分子の存在が明らかとなり、オートファジーによる標的の認識・分解には特異性があることが示唆されてきた。オートファジー誘導機構の解析が進む一方で、オートファジーあるいはオートファジー受容体がTLRシグナルにどのような作用を及ぼすかは理解されていなかった。 前年度までに、ヒト上皮細胞であるHeLa細胞において脱ユビキチン化酵素A20(TNFAIP3)の発現を干渉すると、TRIFやTRAF6がTLR3の刺激に伴って選択的にオートファジーによって分解されることを見出した。TRIFに結合するオートファジー受容体のスクリーニングにより、NDP52が特異的に会合する分子であることを明らかにした。本年度ではNDP52のTLRにおける役割を詳細に検討した。NDP52はA20の発現が干渉された状態において、TLRの刺激に伴ってTRAF6によってユビキチン化され、TRAF6を巻き込んだ凝集塊を形成することで標的分子の選択的な分解を可能にすることが分かった。その結果、NDP52はTLRの刺激に伴うNF-kappaBおよびIRF3の活性化を抑制した。ゆえに、NDP52はTLRシグナルを負に制御するオートファジー受容体であることが分かった。一方、NDP52の機能は通常はA20によって不活性化されていることも明らかとなった。 本研究成果は、今まで理解されてこなかったオートファジーによるTLRシグナルの調節機構について明らかにした。ヒト上皮細胞で見出されたこの機構は、口腔上皮細胞にも認められると考えられる。
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