2011 Fiscal Year Research-status Report
慢性根尖性歯周炎に起因した口腔顔面領域における疼痛異常の神経機構解明
Project/Area Number |
23792192
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
清水 康平 日本大学, 歯学部, 助教 (10508609)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 歯内療法学 / 歯痛 / 関連痛 |
Research Abstract |
1、ラット臼歯根尖性歯周炎モデルの作製:CTにて断層撮影を行い、根尖性歯周炎の拡大を経時的および三次元的に観察したところ、刺激後6週で根尖性歯周炎がピークに達していることが確認できた。また、その骨欠損量を画像解析により測定したところ、刺激後6週でCFA群はVeh群と比較して有意な骨欠損量が認められ、またその大きさはピークに達していることが確認された。2、化学刺激により誘発される筋放電(EMG)の記録:同側咬筋へのカプサイシン投与により誘発される顎二腹筋活動は、CFA投与後3日および6週においてVehicle群と比較して有意な増加が認められた。その筋放電量の経時的変化は、歯髄炎から根尖性歯周炎が誘導される過程であるCFAポイント刺入後3日では約1分間程度であるが、CFAポイント刺入後6週では約5分間の持続が認められた。3、熱あるいは機械刺激による逃避行動閾値の測定:機械刺激に対する逃避閾値はCFA投与後1日から3日で、CFA群の方がVehicle群よりも有意な低下を示していたが、CFA投与後7日目においては両群ともほぼ同程度の値まで回復した。温熱刺激に対する逃避閾値は、CFA投与後3日からCFA群の方がVehicle群よりも有意な低下を示した。4、三叉神経脊髄路核での細胞内物質合成変化の検索:CFA群において、同側咬筋へのカプサイシン投与により、延髄後角に多数のpERKおよびFos陽性細胞が誘導された。また同部位には多くのGlia細胞、とくにAstrocyteの活性が認められた。5、 MEK阻害薬投与の効果:上記2)で確認される口腔顔面領域の痛覚感作は、その筋放電量において、髄腔内投与されたMEK阻害薬によって、有意な減少が認められた。以上より、ラット歯髄CFA投与後における異所性疼痛発症は、歯髄炎期と根尖性歯周炎期において異なる神経機構が関与している可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していた研究計画はすべて終了できた上に、さらに24年度に計画していた阻害薬投与の実験まで進行できたことは当初の計画以上に進んでいると言っても過言ではないと考えられる。理由として綿密な研究計画立案および過去の文献等で十分に構築された仮説に基づいて研究が遂行できたためと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1、MEK阻害薬, グリア細胞阻害薬あるいは抗炎症性サイトカイン投与の効果前述で確認された口腔顔面領域の痛覚感作は、その筋放電量あるいは逃避行動閾値において、P10ポリエチレンチューブによって髄腔内投与された各種阻害薬によって、いかなる変化を受けるか検索する。尚、この実験の一部はすでに23年度に遂行されている。2、各種阻害薬投与後の三叉神経脊髄路核での侵害受容に対する活動性変化平成23年度の研究計画4、にて確認された神経細胞体におけるpERK陽性細胞およびc-fosの発現は、各種阻害薬によってどのようなタンパク合成変化が起こるかを検索する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、上記実験計画で非常に多数の実験動物を使用する。SD系ラットは単体で約2,500~3,000円であり、本研究において年間約250匹前後使用する予定である。2、免疫組織化学的手法には高額な薬品(抗体等)を使用する。1種類が約10万円前後であり、二重染色等で共発現等の検索をするので、数種類分の金額が必要である。また、各種阻害薬、試薬等を購入する予定である。3、動物モデル作製やその他の実験操作に専門的な高価な実験器具(マイクロスコープ用器材、電気生理学的測定用機材、ダイヤモンドバー、ラウンドバー等)を使用する。4、上記1および2で得られたデータは非常に容量が大きく、とくに電気生理学的手法においては実験に用いる専用のデスクトップ型パソコンが必要である。また、そのデータのバックアップのために外付けのハードディスク等が必要である。5、本研究の多角的、客観的評価および研究討論のため、国内外にて成果発表を行う。年間に1回ずつ行う予定である。上記1~5を実現するために計画的に研究費を使用する予定である。尚、昨年度から77,706円を次年度使用額として繰り越す事となったが、この額が生じた理由として、昨年の実験計画が当初の計画以上に進展し、予定より少ない実験動物で成果が出たためと考えられる。現在までの達成度から考えると平成24年度もさらなる予定以上の研究の進展が予測されるので、この額は、とくに実験動物を含めた消耗品等に加えて使用予定である。
|
Research Products
(12 results)