2011 Fiscal Year Research-status Report
歯質接着耐久性を有する機能性モノマーおよび重合開始剤の分析と開発
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23792195
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
英 將生 鶴見大学, 歯学部, 助教 (80329226)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 生体材料 / ナノ材料 / 表面・界面物性 / 歯学 / 有機化学 |
Research Abstract |
歯科接着材料の歯質に対する接着のメカニズムは,未だ不明な点が多い.なかでも,機能性モノマーの分子構造と歯質接着性能との関連性についてはほとんど明らかにされていない.また,光重合開始剤の違いが重合度ならびに歯質接着に及ぼす影響などについても明らかにされていない. 本研究では,(1) 機能性モノマーのアパタイトに対する化学的相互作用の分析.(2) 光重合開始剤の違いが歯質接着システムの重合度に及ぼす影響を比較検討.(3) 歯質接着界面をナノスケールで解析し,接着強さや長期安定性との関連性を検討.の項目に焦点を当て,機能性モノマーならびに光重合開始剤の違いが歯質接着に及ぼす影響を検討することとした. 平成23年度は,研究計画としていた「(1) 機能性モノマーのアパタイトに対する化学的相互作用の分析」を行うために(1)X線回折.(2)フーリエ変換型赤外分光 FT-IR.(3)微小硬度測定.の各実験を行った.(1)X線回折では,HApに各種機能性モノマーを反応させ,得られた混和物をX線回折により結晶学的に比較した.機能性モノマーの種類により,HApとの化学的相互作用に相違があるという結果が得られた.(2)FT-IRでは,各種機能性モノマーとHApの化学的相互作用による重合率の変化を,FT-IRで残存二重結合量の経時的変化にて評価した.機能性モノマーの相違によって重合率に差があることが分かり,各種機能性モノマーにHApを加えて測定したところ,各種機能性モノマーの重合率は上昇した.(3)微小硬度測定では,機能性モノマーおよびアパタイトの有無が異なる歯質接着システムの物性を微小硬さ試験機にて測定した.重合率の結果同様,機能性モノマーの相違によって硬さに差があり,各種機能性モノマーにHApを加えたところ,硬さが上昇する傾向がみられた. 以上の結果から,機能性モノマーのアパタイトに対する化学的相互作用を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
機能性モノマーならびに光重合開始剤の違いが歯質接着に及ぼす影響をナノスケールで解析するために次の研究計画を立案した. (1) 機能性モノマーのアパタイトに対する化学的相互作用の分析.(2) 光重合開始剤の違いが歯質接着システムの重合度に及ぼす影響を比較検討.(3) 歯質接着界面をナノスケールで解析し,接着強さや長期安定性との関連性を検討. 平成23年度に「(1) 機能性モノマーのアパタイトに対する化学的相互作用の分析」を検討,平成24年度に「(2) 光重合開始剤の違いが歯質接着システムの重合度に及ぼす影響を比較検討」および「(3) 歯質接着界面をナノスケールで解析し,接着強さや長期安定性との関連性を検討」を行う計画とした. 平成23年度は,「(1) 機能性モノマーのアパタイトに対する化学的相互作用の分析」を行うために,(1)X線光電子分光法XPS.(2)X線回折.(3)フーリエ変換型赤外分光 FT-IR.(4)微小硬度測定.の実験を計画した.(2)X線回折.(3)フーリエ変換型赤外分光 FT-IR.(4)微小硬度測定.に関しては,研究計画通り平成23年度内に実験を実施し,結果を得ることができた.また,平成24年度に研究予定であった「(2) 光重合開始剤の違いが歯質接着システムの重合度に及ぼす影響を比較検討」の実験の一部,すなわち,(1)フーリエ変換型赤外分光 FT-IR.(2)微小硬度測定.に関する実験を平成23年度に実施した.以上の実験状況からおおむね順調に進展しているものと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究計画は,平成23年度終了時点で,おおむね順調に遂行されていた.平成24年度は試料作製等に時間を要する試験が多いので,詳細な実験スケジュールを立て,実験を実施していく必要がある.平成24年度の研究終了後,平成23,24年度の結果から,機能性モノマーならびに光重合開始剤が歯質接着に及ぼす影響を検討する.今後,機能性モノマーの重合性基,疎水性基,親水性基の相違による影響などの検討も考えていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,機能性モノマーならびに光重合開始剤の違いが歯質接着に及ぼす影響をナノスケールで解析するために立案した次の研究計画の(1) 機能性モノマーのアパタイトに対する化学的相互作用の分析.(2) 光重合開始剤の違いが歯質接着システムの重合度に及ぼす影響を比較検討.(3) 歯質接着界面をナノスケールで解析し,接着強さや長期安定性との関連性を検討.の研究項目のうち,「(2) 光重合開始剤の違いが歯質接着システムの重合度に及ぼす影響を比較検討」および「(3) 歯質接着界面をナノスケールで解析し,接着強さや長期安定性との関連性を検討」についての研究を行う. 「(2) 光重合開始剤の違いが歯質接着システムの重合度に及ぼす影響を比較検討」に関しては,平成23年度にすでに実験の一部を開始した(1)フーリエ変換型赤外分光 FT-IR.(2)微小硬度測定.に関する実験を引き続き行っていく. 「(3) 歯質接着界面をナノスケールで解析し,接着強さや長期安定性との関連性を検討」に関しては,長期水中浸漬後に(1)引張試験.(2)SEM観察.(3)TEM観察.などの実験を実施し,これらの試験,観察結果から,各種機能性モノマーおよび光重合開始剤の違いが接着強さや長期耐久性に及ぼす影響を検討して行く予定である.これら平成23,24年度の結果から,機能性モノマーならびに光重合開始剤が歯質接着に及ぼす影響を検討する.
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