2011 Fiscal Year Research-status Report
ラット頭蓋骨骨欠損部における生体活性ガラスとエムドゲインの効果の解明
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23792198
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
松本 典祥 福岡歯科大学, 歯学部, 医員 (80597948)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | エムドゲイン / 生体活性化ガラス / TGF-β1 / BMP-2 |
Research Abstract |
エムドゲイン(EMD)の硬組織形成能に及ぼす影響を評価するため、ラット根尖病変モデルを用いて、特に破壊された根尖孔部における新生セメント質形成量と増殖因子発現細胞の動態に焦点をあてて免疫組織化学的に解析を行った。新生セメント質形成量についてはHE染色およびトルイジンブルー染色を用いて組織学的に観察するとともに、根尖直下の歯根膜幅を測定し、EMD群とEMDの溶解液であるプロピレングリコールアルジネートを貼薬したコントロール群とを比較することで数量的に評価した。 その結果、EMD群はコントロール群と比較して早期に、破壊された根尖部における新生セメント質の添加が認められ、処置後28日目においてEMD群ではコントロール群と比較して有意に厚い新生セメント質の形成が観察された。また、根尖直下の歯根膜幅も有意差を示した。増殖因子発現細胞の動態においては、EMDの貼薬後7日目に、TGF-β1およびBMP-2発現細胞の有意な増加が観察された。その後、TGF-β1発現細胞は経時的な減少傾向を示す一方、BMP-2発現細胞は持続的な増加が認められた。 以上の結果から、ラット根尖病変モデルにおけるEMDの応用は、TGF-β1を発現細胞の一時的な増加と持続的なBMP-2を発現細胞の持続的な増加を誘導し、破壊された根尖孔の治癒および硬組織の再生に関与している可能性が示唆された。 組織再生療法においては細胞と誘導因子、そして足場が重要な3つの鍵とされているが、今回の実験にてEMDは誘導因子の1つとなる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度における研究計画では(1)エムドゲイン(EMD)の硬組織形成能に及ぼす影響を評価するため、ラット根尖病変モデルを用いて、破壊された根尖孔部での硬組織形成能を免疫組織学的に解析すること。(2)生体活性化ガラス(BAG)の硬組織形成能に及ぼす影響を評価するため、ラット頭蓋骨骨欠損モデル根尖病変モデルを用いて骨欠損部での硬組織形成能を免疫組織学的に解析すること。以上の2つを目標としていた。 (1)に関しては実験は予定通りに終了し、その結果よりラット根尖病変モデルにおけるEMDの応用は、TGF-β1を発現細胞の一時的な増加と持続的なBMP-2を発現細胞の持続的な増加を誘導し、破壊された根尖孔の治癒および硬組織の再生に関与している可能性が示唆されたとの結論を得た。この成果については日本歯科保存学会の平成23年度秋季大会で報告するとともに、現在、論文作成のため資料の整理を行っている。 (2)に関しては実験手技の確立までは終了しており、現在、動物実験と試料作製を並行して進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成23年度と同様の方法で骨欠損動物モデルを作製する。(2)平成23年度の生体活性化ガラス(BAG)との実験結果を検討し、最も骨組織誘導能の高かったBAGをエムドゲイン(EMD)と併用して平成23年度と同様の解析を行う。以上の実験にて得られた結果を総合的に解析することにより、エナメルマトリックスタンパク(再生促進因子)と生体活性化ガラス(再生の足場、微小環境)の併用療法による根尖部歯周組織再生機構について検証するとともに、破壊された根尖部歯周組織を再生するためのより予知性の高い歯周組織再生療法の基盤構築を計る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度もラットを用いた動物実験を予定しており、ラットの購入費用および飼育費用としての使用を計画している。また、資料作製および標本作製の際に用いる実験器材や各種薬剤、抗体などの消耗品の購入費用としての使用を予定している。 また、本年度でも国内学会での学会発表を予定しており、旅費としての使用を予定している。
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