2011 Fiscal Year Research-status Report
メカノレセプターとしてのプライマリー・シリアによる歯根膜維持機構
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23792213
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
加来 咲子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (60584589)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | プライマリーシリア / メカノレセプター / 歯根膜 |
Research Abstract |
機械的刺激は歯根膜の改造、恒常性維持に大きく寄与し、これまでその応答のメカニズムについて、いくつもの受容機構、経路が提唱されてきた。しかしながら、これらの基礎的知見は未だ我々が臨床の場において遭遇する数多の事象を明瞭に説明するには至っていない。近年、毛様で非運動性の細胞小器官であるプライマリー・シリアが視細胞、腎細胞等におけるメカノ・レセプターとして機能している事が明らかとなった。さらにプライマリー・シリア表面におけるシグナル分子受容体の集積や、プライマリー・シリア形成不全に起因する先天疾患も報告され、その重要性が注目されている。この研究の目的は機械的刺激に感受性の高い組織として代表的な歯根膜におけるプライマリー・シリアのメカノ・レセプターとしての機能、さらにプライマリー・シリアを介した歯根膜組織の維持機構について明らかにすることである。これまでの解析では、ラットの歯根膜組織上ではプライマリーシリアを検出しているが、ヒト歯根膜由来細胞においては検出に至っていない。一方、骨芽細胞株MC3T3-E1においては約50%の頻度でプライマリー・シリアを検出している。これは一般的な培養条件下ではヒト歯根膜細胞はプライマリー・シリアを形成していない可能性を示唆している。プライマリーシリアにおけるシグナル受容体の集積や、BMPシグナリングが発生段階においてプライマリー・シリアの形成に重要な役割を果たしていることから、増殖因子がプライマリー・シリアの形成に及ぼす影響について検討を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでは歯根膜におけるプライマリーシリアの検出等、概ね順調に進展している。また、機械的刺激による歯根膜の応答について、組織レベルではFocal Adhesion Kinase(FAK),Heat Shock Protein (HSP)、PCNA等のマーカーを用い、部位特異的に反応が見られることを確認している。更に細胞レベルではMitogen Activated Kinase(MAPK)の活性が変化することを確認している。しかしながら、歯根膜細胞におけるプライマリーシリアの発現頻度が限定的であったことから、その発現部位、好発現条件等について検討を行なっている。尚、H24年3月より9月まで産休のため、来年度の進捗についてはやや遅れる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
siRNAによるプライマリーシリアの欠失モデルについては来年度に行う予定としたため、当該分の研究費についても来年度に繰り越しすることとした。来年度については当初の予定通り、プライマリーシリア欠失条件下での骨形成、歯根膜維持に及ぼす影響について検討を行う予定である。1.プライマリー・シリア欠失ヒト歯根膜細胞の作製。RNAi法によってporalis遺伝子の発現を抑制し、プライマリー・シリアの生成を阻害する。2.プライマリー・シリアによる骨新生/骨吸収のバランスへの影響。歯根膜維持機構の代表的現象である骨新生/吸収バランスの側面からプライマリー・シリアによる歯根膜組織の維持機構への関与を検討する。機械的刺激による骨芽細胞マーカー、破骨細胞マーカーの発現について、プライマリー・シリア欠失歯根膜細胞を用いて解析を行い、コントロールとの比較を行う。3.プライマリー・シリアによる歯根膜特異的な遺伝子発現の影響。歯根膜特異的に発現が報告されている遺伝子(i.e. S100-A4, Periostin, Asporin, Col12a1)について、機械的刺激に対するプライマリー・シリアを介したこれらの遺伝子発現を解析する。これらの遺伝子は基本的に石灰化阻害因子であると考えられており、歯根膜自身の非石灰化機構について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は以下のとおりである。1.プライマリー・シリア欠失ヒト歯根膜細胞の作製のためにsiRNAの購入(20万円)及び解析(10万円)2.プライマリー・シリアによる骨新生/骨吸収のバランスへの影響および歯根膜特異的な遺伝子発現の影響の解析のため、細胞の維持(20万円)遺伝子解析(30万円)、抗体(30万円)、動物の購入(20万円)、動物の維持(10万円)、組織解析(20万円)その他の経費として人件費(40万円)、旅費(30万円)
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