2011 Fiscal Year Research-status Report
末梢性顔面神経麻痺患者における口腔機能障害の評価法
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23792253
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加茂 博士 日本大学, 歯学部, 専修医 (00525876)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 顔面神経麻痺 |
Research Abstract |
顔面神経麻痺の患者では、頬と歯肉の間の口腔前庭に食べ物がつまる、かみづらいなどはよくある訴えである。食べ物を咀嚼し、飲み込むためには、下顎運動や舌運動とともに、頬部の運動が重要となる。食物が口の中に入ると、舌運動とともに頬粘膜は歯列に押しつけられて壁をつくり、咬合面へ食物を移動させて、食塊形成を促進させる働きをする。これらの咀嚼運動(食塊形成や咬合面への食物の移動、保持など)は単に顎運動を担う咀嚼筋だけではなく、口唇や頬、舌など可動組織が働くことによる。ことに顔面神経支配領域である表情筋の働きが重要な役割を担う。このため末梢性顔面神経麻痺により、口腔機能の阻害が予想される。しかし、我々の知る限り、これまでに障害の程度を明らかにした報告はみられない。そこで、我々は、麻痺による口腔機能障害の存在を明らかにするため、 以下の測定を行い検討した。平成23年度は健康成人ボランティアにおいて、口唇圧測定装置を用いて、頬および口唇の筋力を全8方向で測定し、口唇圧測定器が再現性の高い装置である確認することとともに、グミゼリーを用いた咀嚼率の測定および混合ワックスを用いた食塊形成能、ごはん粒を用いた口腔自浄能の測定を行った。またこのうち数例は口腔内に局所麻酔を行い、疑似顔面神経麻痺症状を作り出した。この疑似顔面神経麻痺ボランティアについてはいまだサンプル数が少ないものの健常側と患側ともに麻酔前と比べ、やや機能が低下する傾向がある。このため、これら末梢性顔面神経麻痺の患者についても同様にデータを記録することが、顔面神経麻痺患者の重症度評価や回復度の評価に貢献することができると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常成人ボランティアにおいては表情筋の評価以外のデータはほぼ収集できた。次年度に予定していた末梢性顔面神経麻痺患者の咀嚼率、食塊形成能および口腔自浄能については、顔面神経麻痺患者がいつ来院するか予測できないため、実験を前倒ししていた。このため、麻痺患者においてもデータを収集しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、本実験計画では、顔面表情筋の機能時および安静時の評価を超音波装置(現有)と探触子(購入予定)により行おうと考えていたが、末梢性顔面神経麻痺患者は運動障害だけでなく、三叉神経および舌咽神経領域の感覚低下をもたらす可能性があると言われており、今回の実験計画にはなかった感覚の評価も必要であると考えた。そこで運動量の測定は変位量測定センサー(Intercross社)で代用可能であると考え、当該年度は口腔内温度刺激装置(MEDOC, AS00066)を購入した。これによりさらに末梢性顔面神経麻痺の病態をより深く検討することが可能となると思われる。今後はさらに末梢性顔面神経麻痺患者においてデータ収集を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
顔面神経麻痺患者および健康成人ボランティアの表情筋の安静時および機能時の評価を行うには、当初購入予定であった超音波診断器探触子のみでは実験の遂行に不十分であり、口腔内温度刺激装置(MEDOC, AS00066)と変位量測定センサー(Intercross社)の両者を使用する方がより有意だと考えた。当該年度は口腔内温度刺激装置のみを購入したため、差額の研究費を繰り越した。次年度は、この繰り越した研究費と次年度研究費で変位量測定センサー(Intercross社)を購入する。また、末梢性顔面神経麻痺患者において、口唇圧の測定、グミゼリーを用いた咀嚼率の測定、混合ワックスを用いた食塊形成能およびごはん粒を用いた口腔自浄能の測定を行う。さらに、上述の温度刺激装置と変位量測定センサーを用いて、定量的に患側と健常側の顔面運動量の測定と温度感覚を測定することを試みる。国内外での学会への参加し、情報収集を行いながら、記録したデータについて検討し、その後、国内外で発表を行う予定である。
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