2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23792260
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
諸熊 正和 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (10514474)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歯科補綴 / 脳機能 / 脳波 / 有床義歯 |
Research Abstract |
口腔と脳との関係を解明することは、国民に対して口腔が全身の健康に直結していることを提示できるため、極めて重要である。本研究は、脳波データから脳内のシナプス・ニューロン機能低下を量的に推定するDIMENSION解析および、脳神経ニューロンの回復部位を同定するNAT解析を用いて、歯科補綴治療が脳機能に及ぼす影響を解明することを目的とした。平成23年度は、鶴見大学歯学部附属病院補綴科を受診した全部床義歯装着患者を被験者とし、全部床義歯治療による疼痛の除去が脳機能に及ぼす影響の解明する計画を立案した。すでに、鶴見大学歯学部附属病院補綴科を受診した上下顎全部床義歯装着者24名を被験者として測定を行った。全ての被験者は、2名の補綴専門医により義歯治療が必要であると診断を受け、同じ条件下(治療内容:リリーフおよび咬合調整のみ、調整時間:30~60分)にて義歯調整を受けている。24名の被験者を調整前に義歯による疼痛を訴えた「疼痛あり群」12名、疼痛の訴えが無い「疼痛なし群」12名に分けてDIMENSION分析し評価した。疼痛あり群のDα(脳機能の活性度)は、義歯調整前と比較して義歯調整後12名全員に増加が認められ、Dαは有意に増加した(p<0.05)。しかし、疼痛なし群のDαは義歯調整前と比較して義歯調整後8名に増加する傾向が認められたが、Dαの増加はわずかであった(p>0.05)。平成23年度の研究にて、疼痛あり群と疼痛なし群を設定し、義歯調整前後の脳機能を比較することで、義歯治療による疼痛の除去が脳機能を活性化させることを明らかにした。このことは、義歯治療による疼痛の除去は,咀嚼機能の回復やストレスの除去にとどまらず全身の健康やQOL向上などに強く関与していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、DIMENSION解析(脳機能の活性度の分析)およびNAT解析(脳の活性化部位の分析)を用いて、義歯治療による疼痛の除去が脳機能に及ぼす影響の解明を目的としている。平成23年度は、義歯による疼痛の訴えの有無以外同じ治療環境である「疼痛を主訴に来院した全部床義歯装着者」と「メインテナンス中の全部床義歯装着者」の2群を設定し、脳機能の活性度と脳神経ニューロンの回復部位について群間比較することで、義歯治療による疼痛の除去が脳機能へ及ぼす影響を検討する計画を立案した。すでに、鶴見大学歯学部附属病院補綴科を受診した上下顎全部床義歯装着者を被験者とし、「疼痛を主訴に来院した全部床義歯装着者」と「メインテナンス中の全部床義歯装着者」の2群をDIMENSION解析し脳機能の活性度を比較することで、義歯治療による疼痛の除去が脳機能を活性化させることを明らかにした。また、歯科分野にはじめてNAT解析を応用し、全部床義歯装着者の義歯機能の向上は、大脳の感覚運動野の活性化を促すことを明らかにした。その結果は、14th ICP (International College of Prosthodontists)にて学会発表し、予備実験として行った研究結果は、日本補綴歯科学会第120回記念学術大会および若手補綴研究会などにて報告するなど、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度では、はじめてNAT解析を歯科分野に応用し、全部床義歯の義歯機能の向上による脳機能の活性化部位を評価可能であることを明らかにした。しかし、歯科分野でNAT解析を行うために最適な脳波の周波数、解析時間、解析部位など分析方法を精査する必要がある。24年度以降の研究では、まず、メインテナンス中の「全部床義歯装着者」と「部分床義歯装着者」の義歯装着時と非装着時のガム咀嚼前後の脳機能の活性度と脳神経ニューロンの回復部位を比較することで、欠損様式の異なる義歯によるガム咀嚼が脳機能に影響を及ぼすか検討する。次にメインテナンス中の「全部床義歯装着者」、「部分床義歯装着者」、「インプラント上部構造装着者」の補綴物装着時と補綴物非装着時のガム咀嚼前後の脳機能の活性度および、シナプスニューロン機能の活性化部位を比較することで、補綴装置の違いが脳機能に影響を及ぼすか検討する。さらに、測定したすべての被験者を「脳機能が活性化した被験者」と「脳機能の活性化が認められなかった被験者」に分けて、疼痛の消失、最大咬合力の変化、欠損様式の違い、補綴装置の違いなどの因子ごとに分析することにより、どのような因子が脳機能に影響を及ぼすか明らかにする。また、因子ごとに脳神経ニューロン機能の回復部位を分析することで、脳機能の活性化のメカニズムを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、2,340,000円の交付決定を受け、2,324,595円の実支支出額であり、15,405円の未使用額であった。平成23年度科学研究費補助金交付申請時の研究経費との主な相違は、[物品費]「その他」の経費が増加し、「旅費」「謝金」が減少した点である。それは、成果発表および調査のため翻訳料、PC購入費、国内での成果発表の経費が膨らんだことによる。そのため、アメリカにて行われた14th ICP (International College of Prosthodontists)にて学会発表を行ったが、外国旅費の経費を計上しなかった。また、脳波測定のほとんどを諸熊(代表研究者)が行うことで経費を削減した。したがって、その差額として15,405円の未使用額が生じた。24年度は、ブラジルにて開催されるIADR (International Association for Dental Research)学術大会および、フィンランドで開催されるPER/IADRにて成果発表を行う予定である。従い、翻訳・更正料および国外旅費を計上する予定である。次年度は、全部床義歯装着者と部分床義歯装着者を被験者として、義歯装着時と義歯非装着時のガム咀嚼前後の脳機能の活性度および、シナプスニューロン機能の活性化部位を比較し、欠損様式の異なる義歯による咀嚼が脳機能に及ぼす影響を解明する予定である。そのために必要な消耗品および謝金等も計上する予定である。すべての研究経費を計上すると科学研究補助金だけでは研究費が不足することが懸念される。その場合は、23年度と同様に諸熊(代表研究者)の自己負担にて研究費を賄い研究を遂行することで対応する。
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