2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23792260
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
諸熊 正和 鶴見大学, 歯学部, 助教 (10514474)
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Keywords | 歯科補綴 / 脳機能 / 脳波 / 有床義歯 |
Research Abstract |
歯科補綴臨床の特徴は、咬合や咀嚼などの疾病や障害に対する治療、予防、リハビリテーションの面をあわせ持っており、歯科補綴は健康、長寿、QOL(Quality of life)に直結している。本研究は、脳波データから脳内のシナプス・ニューロン機能低下を量的に推定するDIMENSION解析および、脳神経ニューロンの回復部位を同定するNAT解析を用いて、歯科補綴治療が脳機能に及ぼす影響を解明することを目的とした。 平成24年度は、メインテナンス中の「全部床義歯装着者」と「部分床義歯装着者」の義歯装着時と非装着時のガム咀嚼前後の脳機能の活性度と脳神経ニューロンの回復部位を比較することで、欠損様式の異なる義歯によるガム咀嚼が脳機能に及ぼす影響について検討を行った。そして、全部床義歯装着者および部分床義歯装着者は、義歯を装着することにより咬合力が向上し、義歯を装着しガム咀嚼することで脳機能活性度(Dα値)および脳の機能局在(脳の各部位のNPV値)が有意に変化することを明らかにした。また、その結果は、前年度に行った研究で得られた知見とともに多くの学術大会にて報告した。 本研究では、どのような因子が脳機能に影響を及ぼすか明らかにするとともに、脳機能の活性化のメカニズムを解明する。補綴治療がQOLや長寿に直結する科学的根拠を示すことは、口腔ケアの啓発活動を容易にするなど歯科医療がより社会に貢献できるため社会に与えるインパクトは大きい。また、補綴治療により変化する脳機能活性化因子を明らかにし、補綴治療が脳機能の活性化を促すメカニズムを解明することは、患者のQOLに直結する脳機能を重視した診療方針を示すことにもつながり、歯科医療水準の向上の波及効果も見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、メインテナンス中の「全部床義歯装着者」と「部分床義歯装着者」の義歯装着時と非装着時のガム咀嚼前後の脳機能の活性度と脳神経ニューロンの回復部位を比較することで、欠損様式の異なる義歯によるガム咀嚼が脳機能に及ぼす影響について検討を行うことを目的とし、研究を行った。 被験者は、鶴見大学歯学部附属病院補綴科を受診した全部床義歯装着患者17名および部分床義歯装着者(Eicher分類B)20名とし、咀嚼機能、脳機能活性度、脳機能機能局在を評価した。脳機能活性度および脳機能局在の評価を行うため、脳機能研究所(神奈川)にて開発されたESA-Proを用いて、国際10-20法に従い頭皮上21箇所に電極を設置し、義歯装着および非装着状態でのガム咀嚼前後の脳波を3分間測定した。測定した脳波データは、脳機能研究所の脳波解析センターへ転送しDIMENSION解析およびNAT解析を行い、脳機能活性度(Dα値)および脳機能局在(NPV値)の評価を行った。 その結果、全部床義歯装着者および部分床義歯装着者は義歯を装着することで咬合力が向上すること、全部床義歯装着者および部分床義歯装着者は義歯を装着しガム咀嚼することで脳機能活性度(Dα値)が向上すること、全部床義歯装着者および部分床義歯装着者ともに「義歯装着に伴う最大咬合力の向上」と「ガム咀嚼による脳機能活性度の向上」との間に正の相関関係があること、全部床義歯装着者は義歯を装着しガム咀嚼することで大脳皮質の運動野(C4)および感覚野(P4)のNPV値が有意に変化することを解明した。 欠損様式の異なる義歯によるガム咀嚼が脳機能に影響を解明できているため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、はじめてNAT解析を歯科分野に応用し、全部床義歯の義歯機能の向上による脳機能の活性化部位を評価可能であることを明らかにした。しかし、歯科分野でNAT解析の解析条件については課題が残された。そこで平成24年度は、予備実験を行い歯科分野でNAT解析を行う際に最適な解析条件を確立した。その解析条件をもとにNAT解析を用いて全部床義歯装着者は義歯を装着しガム咀嚼することで、大脳皮質の運動野(C4)および感覚野(P4)のNPV値が有意に変化することなどを解明した。 平成25年度はメインテナンス中の「全部床義歯装着者」、「部分床義歯装着者」、「インプラント上部構造装着者」の補綴物装着時と補綴物非装着時のガム咀嚼前後の脳機能の活性度および、シナプスニューロン機能の活性化部位を比較することで、補綴装置の違いが脳機能に影響を及ぼすか検討する。そして、平成23年度から平成25年度までに測定したすべての被験者を「脳機能が活性化した被験者」と「脳機能の活性化が認められなかった被験者」に分けて、疼痛の消失、最大咬合力の変化、欠損様式の違い、補綴装置の違いなどの因子ごとに分析することにより、脳機能の活性化のメカニズムを解明する。 また、平成25年度には、得られた知見を学会発表および論文報告することで研究結果を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、実支出額912,391円に対して、所要額925,405円であり、13,014円が未使用となり次年度使用となった。平成23年5月に提出した科学研究費補助金交付申請との研究経費の主な相違は、「その他」および「旅費」の経費が増加し、「物品費」および「人件費・謝金」の経費を使用しなかった点である。 海外での成果発表は年1回のペースで行うことを予定していたが、平成24年度は海外での学会発表を前倒しして行った。そのため、旅費および成果発表のため翻訳料などの経費が増加した。 平成25年度はメインテナンス中の「全部床義歯装着者」、「部分床義歯装着者」、「インプラント上部構造装着者」の補綴物装着時と補綴物非装着時のガム咀嚼前後の脳機能の活性度および、シナプスニューロン機能の活性化部位を比較することで、補綴装置の違いが脳機能に影響を及ぼすか検討する。そして、得られた知見について、学会発表および論文報告することで研究成果を公表する。そのために必要な経費を計上する予定である。
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Research Products
(11 results)