2011 Fiscal Year Research-status Report
超熱伝導グラファイトフィラーによる義歯床用レジンのコンポジット化
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23792287
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
村原 貞昭 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80404490)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 義歯床用レジン / 超熱伝導グラファイト / 歯科補綴学 |
Research Abstract |
平成23年度にはまず、義歯床用レジンのコンポジット化に最適なグラファイト材料を選別するべく研究を開始した。数種類のグラファイト材料について比較検討した結果、現時点で他と比較して格段に熱伝導に優れた「PYROID-HT」を用いることが本研究の目的に最も適していることが確認された。本材料は米国ミンテック社製で、ブロック状で供されるが、レジンとのコンポジット化のためには細かい形状である必要がある。当研究機関ではこの作業が不可能なため、日本国内で「PYROID-HT」の取扱いを行っている株式会社サーモグラフィティクスに協力を依頼し、平均粒径75μmの粉末状への加工を行った。合わせてグラファイト材と義歯床用レジンとの有効な接着用表面処理法を検討するための板状試験片の作製も行った。接着試験の結果、両者の接着にシランカップリング剤が有効であることが確認された。これらの結果を踏まえて、コンポジット化した義歯床用レジンの試作を行った。ところが、グラファイト材の添加により、床用レジンの機械的強度は予想以上に大きく変化し、義歯用として必要な曲げ強度が十分得られないことが判明した。グラファイトの添加量を減らすことで義歯用として許容しうる曲げ強度は維持できるものの、熱伝導率の向上効果が十分に得られないことが確かめられた。平成23年5月20日から22日にかけて広島で開催された日本補綴歯科学会第120回学術大会、平成23年11月5日と6日に長崎で開催された日本補綴歯科学会九州支部学術大会、さらに平成24年1月20日から23日にかけて函館で開催された第30回日本接着歯学会学術大会へ参加し、関連研究の発表を行うとともに、関連研究発表を聴講し、情報収集を行った。また、函館の学術大会では歯科材料メーカー(サンメディカル株式会社)の方と義歯床用レジンのコンポジット化についての研究打ち合わせも行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度に予定していた研究内容は、当初以下の4つであった。(1)義歯床用レジンとのコンポジット化に最適な球状グラファイトと接着性の優れた床用レジンを選別する。(2)適切な接着用表面処理法を開発する。(3)コンポジット化した際の色調を義歯床用として適切なものに改善する。(4)選択された材料と表面処理法によって作製したコンポジット試験片によって熱伝導性および,破折強度の向上に関する基礎的な性能評価を行う。本年度計画通りに実施できたのは(1)(2)(3)であった。(4)については実施できたものの、熱伝導性と破折強度の両者を満足するコンポジットレジンへの改良を実現するまでにはいたらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度に完了できなかったコンポジットレジンの熱伝導率向上と破折強度の向上の両立を実現すべくさらなる改良を予定している。しかし、これまでの結果から実現の困難も予想される。そこで、コンポジットレジンの改良に限界が認められた場合は、早期に計画を変更する予定である。すなわち、超熱伝導グラファイトを使用して義歯床の熱伝導率を向上させるという目的はそのままに、ターゲットを床用レジンではなく床用金属に変えて検討を行うものである。株式会社サーモグラティフィクスとの研究打ち合わせで、超熱伝導グラファイト「PYROID-HT」は金属と一体化させて層構造とすることが可能であることが確認できている。「PYROID-HT」を床用金属でサンドイッチ構造にした複合金属床を作製することで、チタンやコバルトクロムなど、金合金と比較して必ずしも熱伝導率が高いとは言えない金属床義歯の熱伝導率を改善できる可能性がある。金合金は熱伝導率はチタンやコバルトクロムより高いものの、重量がかさみ装着感が悪い、材料コストがかさむなどのデメリットもかかえているため、開発予定の複合金属床は十分なメリットがあると考えられる。コンポジットレジン、もしくは複合金属床が実用に見合った物性に改良されたら、上顎全部床義歯の形状で人工歯も有している試験片を製作して,より臨床的な検討を行い,臨床試験を前提としたデーター収集や安全性の確認を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、グラファイト材の選別と表面処理の開発に予想していた以上の時間を要し、研究の進行が遅れた。このため、基礎的データ採取に要したコンポジット試料の作製量が予定より少なかったため、物品費に要した使用額が請求額より少なくなった。平成24年度には平成23年度に行う予定であったコンポジットレジンの改良を繰り下げて実行するのに加えて、当初より平成24年度に予定している研究も合わせて実行するため、平成23年度未使用額分を合わせて使用する計画である。平成24年度に予定している研究費の内訳の概算は、物品費800,000円、その他200,000円,旅費400,000円である。 物品費の内訳は超熱伝導グラファイト「PYROID-HT」に300,000円、義歯床用チタンに100,000円、義歯床用コバルトクロム合金に100,000円、義歯床用白金加金合金に100,000円、義歯床用レジンに50,000円、義歯用人工歯に150,000円を予定している。いずれの材料も当面は平成23年度に予定していたものの完了できなかった基礎的データの採取・改良に供する試験片作製に必要となるが、コンポジットレジンまたは複合金属床の改良が実現出来次第、実際の義歯形態の試料を作製し、臨床試験に供する予定である。人件費・謝金は、試験片作製に不可欠な技術的協力をサーモグラティフィクス株式会社より得るために計上した。 その他の200,000円は論文投稿に掛かる費用として計上した。 旅費は、日本補綴歯科学会第121回学術大会(平成24年5月横浜)、日本補綴歯科学会九州支部・中国四国支部合同学術大会(平成24年10月広島)、第22回日本歯科医学会総会(平成24年11月大阪)、第31回日本接着歯学会学術大会(平成24年12月東京)への参加・発表およびサーモグラティフィクス株式会社への出張に掛かる費用として計上した。
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Research Products
(3 results)