2011 Fiscal Year Research-status Report
Th17が抜歯窩の治癒およびオッセオインテグレーションに与える影響
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23792291
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
丸尾 勝一郎 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (60593639)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Th17 / インプラント / オッセオインテグレーション |
Research Abstract |
近年、活性化T細胞が特異的に産生する炎症性サイトカインインターロイキン-17(以下IL-17)が関節リウマチや多発性硬化症などの骨を標的とする自己免疫疾患に深く関与する事が明らかにされた。そしてこのIL-17を多く産生するCD4+T細胞は1型ヘルパーT細胞(以下Th1)、 2型ヘルパーT細胞(以下Th2)および制御性T細胞のいずれのサブセットにも属さないTh17細胞(以下Th17)として注目され、その分化・増殖を制御するサイトカイン(IL-6, TGF-β, IL-23p19, IL12p35)や細胞表面マーカーなどの存在(CCR4, CCR6)も明らかにされてきた。今後さらなる発展が期待されるTh17関連因子を中心とする骨免疫学的見地から、Th17の促進および抑制が抜歯窩の治癒およびオッセオインテグレーションにどのような影響を及ぼすかを調べることを目的とし、当該年度においては実験モデルの確立に主眼をおき研究デザインについて免疫学等の専門家とディスカッションをおこなった。本研究の目的は、適切な関節リウマチモデルの確立をおこない、確立された関節リウマチモデルおよびIL-17レセプターを欠如させたラットに抜歯とインプント埋入をおこない、Th17細胞の存在が経時的に抜歯窩の治癒およびオッセオインテグレーションにどのような影響を及ぼすかを明らかにすることである。そこで我々は各関節リウマチモデルに対して実際抜歯し、その結果Th17およびIL17がどのような動態を示すかを定量的に測定する方法について検討を行い、計画した。また、関節リウマチモデルにはいくつか種類が存在するが、アジュバント関節炎モデルおよびコラーゲン誘発関節炎モデルに絞り上記の測定をおこなうこととした。また、動物実験および解析に必要な器具や試薬、設備等の整備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度においては以下の3点が達成目標としあげられていた。1.実験動物として用いるラットのTh17抑制モデルおよびTh17亢進モデルを確立する。JeffreyらはTh17と歯周病の関連について調べた研究において、Th17抑制モデルとしてIL-17レセプターノックアウトマウスを用いている。一方で、Th17の亢進が原因で起こると考えられている疾患はいくつかある。本研究では関節リウマチモデルのラットを使用する予定であるが、アジュバント誘発関節炎モデルやコラーゲン誘発関節炎モデルなどがあり、どのモデルが我々の研究に最も適しているか同定する必要がある。2.Th17を抑制または亢進させたラットの末梢血を採取し、単核球を分離し免疫染色を行いTh17の細胞率を確認する。3.予備実験の実施以上3点のうち、当該年度では(1)について達成された。免疫学等の専門家と各関節リウマチモデルに対して実際抜歯し、その結果Th17およびIL17がどのような動態を示すかを定量的に測定する方法について検討を行い、計画した。また、関節リウマチモデルにはいくつか種類が存在するが、アジュバント関節炎モデルおよびコラーゲン誘発関節炎モデルに絞り上記の測定をおこなうこととした。(2),(3)が達成されなかった理由としては、以下のことがあげられる。動物を用いた実験には実験動物飼育のための設備や、屠殺後に必要な試薬の管理などが必須である。2年前に新たに設置された当分野において、これまで動物実験を行った実績はなく、動物飼育環境の確保並びに整備、必要な器具および試薬などの整備に時間を要したこと、また、本学において動物飼育施設の移転などに伴い、上記の動物を用いた実験遂行に様々な制限があったことなどがあげられる。しかしながら、現在では動物実験のための手はずも整い、今後は綿密な計画に則った動物実験を遂行していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に達成できなかった、動物実験およびその解析さらには学会発表を積極的に行う予定である。具体的には以下の通りである。1.Th17亢進モデルおよびTh17抑制モデルおよび正常なラットの下顎切歯に対し、抜歯9日前より3日おきに歯肉縁上にて切歯を削合し、歯根膜の弛緩を促し抜歯を行う。一方で頸骨へのマイクロスクリュー埋入する。いずれの実験モデルも術後4、8、16週後に屠殺し解析を行う。2.屠殺後、マイクロCT撮影を行い抜歯窩周囲およびインプラント埋入部位の解析をおこなう。また手術時および屠殺時に採血し、血球検査と生化学的検査を行う。3.抜歯窩周囲およびインプラント埋入部位の組織切片を作製し、組織学的観察および組織形態計測学的分析をおこなう。組織切片よりレーザーキャプチャーマイクロダイセクションでサンプルを採取しRT-PCRによるRNAの定量を行う。4.解析結果をまとめ、学会への発表を積極的におこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主な使用計画はとしては、動物実験のために実験動物の購入、解析のための試薬、外注依頼の費用、追加の試薬、論文の校正などが主な用途としてあげられる。
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