2011 Fiscal Year Research-status Report
生体元素を配合した新規なインプラント表面処理による卵巣摘出ラットの骨質変化
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23792297
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
寺西 真理 日本大学, 歯学部, その他 (00508781)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 骨粗鬆症 / インプラント / 骨密度 / 骨塩量 / 表面処理 / アパタイト / ミネラル / ラット |
Research Abstract |
骨粗鬆症治療にはカルシウム製剤、ビスホスフォネート等が使用されている。しかし、 現在販売される治療薬は骨吸収速度の遅延効果はあるが、既に喪失した骨の再生には至っていない。今後の治療薬の開発は骨代謝機能を活性化し、骨密度、骨塩量、骨強度、および新生骨形成の増加を起こさせる事が重要である。 動物実験でラットの卵巣を摘出することにより骨粗鬆症モデルとした実験は多く報告されている。卵巣摘出したラット(ovariectomized rats: OVX)は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌低下により動物でも人間と同様な骨変異を示すと報告されている。しかし、これまでにOVXが摂取するカルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、およびフッ素などのミネラル成分を限りなく低く設定した食餌を摂取した場合に、全身における骨質への影響については報告されていない。 本研究はカルシウム(Ca)、リン(P)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、およびフッ素(F)をリン酸カルシウムに配合させてチタン合金にコーティングする新規なインプラントの表面処理法を開発する。そこで本研究はOVXの脛骨へインプラントを埋入して形成される新生骨の結晶学的な骨質変化と生体元素の効果を解明し、さらにCa, P, Mg, Zn, およびFの生体元素が骨内での除放効果より病理組織観察、骨密度、骨塩量、および骨破断強度から骨粗鬆症患者でもインプラント治療が可能となるよう、また歯科界の知的財産となる骨粗鬆症治療の研究基盤を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は動物実験を行う当たり、本学動物実験倫理委員会の申請を行う。本研究は実験動物に与える苦痛を最小限とし、代替手段がないため、ラットを用いる実験とする。エストロゲンの分泌低下により骨量の減少が報告されるOVXは、Ca, P, Mg, Zn, およびFを配合しない低ミネラル食の摂取による骨質への影響について明らかにする。 実験動物は19週齢のWistar系雌性ラット45匹(a: 疑似手術群(SHAM: control): 15匹、b: 卵巣摘出群(OVX): 15匹、c: OVXに低ミネラル成分の食餌を与える群(diet-OVX): 15匹)の3群に分ける。20週齢時に、OVX群とdiet-OVX群は麻酔下で卵巣摘出手術と、SHAM群は麻酔下で疑似手術を行い、術後からSHAMとOVXは普通食とdiet-OVXには低ミネラル食を与えるラットは、術後4、8、16、および24週後に1群5匹ずつ安楽死を3群処理し、脛骨、大腿骨、および下顎骨を摘出し、ホルマリンに浸す。摘出した骨の観察はMicro-CT撮影(R-mCT)により、TRI/3D Bon BMDアプリケーションソフトウェアを利用して、基準とするハイドロキシアパタイトの検量線から骨密度(Bone Mineral Density: BMD)を疑似カラーとする3次元の画像表示を行い、骨断層のBMD分布の観察とBMD測定を行う。さらにSHAM、OVX、およびdiet-OVXの骨質変化についてMicro-CT撮影、病理組織観察、および骨破断強度試験により骨質変化を明らかにした。 大腿骨の内部には骨髄腔が存在し、皮質骨全体へは骨髄腔よりハバース管やフォルクマン管による微小循環によりミネラルを骨全体へといきわたらしている。その部でのミネラルの再吸収を促進させることが骨質劣化を防ぐ要因であると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
インプラントは、材料と生体の骨における骨接合が起こり、骨のモデリングおよびリモデリングの過程から、インプラント周囲に形成された新生骨の成熟によりインプラントを長期安定に導くことが重要である。天然歯列を有する成人の最大咬合力は430 Nと報告され、通常の補綴物と同様にインプラントにも同等の負荷がかかると考えられる。従って、そのような過酷な条件下でインプラントを長期間、維持・安定させるには、インプラント周囲に形成された新生骨の存在は大変重要である。 インプラントを支持する海面骨については多くの研究が行われている。しかし、新生骨においてX線では不透過像として骨の存在は明らかであるが、その骨はどれだけ成熟しているかについては不明である。いわゆる皮質骨、海面骨、類骨、または軟骨なのは判別は困難である。そこで、インプラント周囲に形成される新生骨の骨質についてミネラル分布とアパタイトの結晶性から明らかにする必要性があると考える。 そこで、インプラントを埋入した骨の脱灰標本を製作し、XPS分析のWide Scan測定により定性分析を行いCa,O,P,C,Mg,N,およびNaのピークを検出し、narrow scan測定により定量分析を行い新生骨と皮質骨のC1s,O1s,Ca2p,およびP2pにおけるピークを測定し、骨質の成熟度の違いについて明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用については、主に実験動物と動物の管理費に利用する。若いラットでは自身の成長とともに骨の成長が見込まれるため、中年のラットを利用することを考えている。動物実験を行うに当たって、研究協力者として中田浩史と櫻井甫に協力してもらうこととする。 骨の解析については画像解析ソフトウェアと骨の経時的変化を追求するための統計分析ソフトウェアを購入する予定である。また、研究協力者の櫻井甫にデータ管理と統計分析を行うための簡易なパーソナルコンピュータを購入する。 インプラントの表面処理を行うに当たりアパタイト粉末および酸処理を行う硫酸など薬品を購入する。 さらには昨年度に行ったデータ解析から論文を作成し、英文校正と投稿費用とする。
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[Journal Article] Quantitative and qualitative analyses of low-mineral-diet ovariectomised rat femora using microscopic computed tomography2011
Author(s)
H. Nakada, S. Suzuki, T. Sakae, Y. Tanimoto, N.Kuboyama, M.Teranishi, T.Kato, T.Watanabe, H.Kimura-Suda, R.Z. LeGeros, and Y. Kawai
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Journal Title
Journal of Hard Tissue Biology
Volume: 20
Pages: 107-114
Peer Reviewed
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