2011 Fiscal Year Research-status Report
ヘミクリプトファンによるフッ素徐放性の高効率化とコンポジットレジンへの応用
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23792302
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
牧田 佳真 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (30454573)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヘミクリプトファン |
Research Abstract |
従来のフッ化物イオンの徐放及び補充を可逆的に示す修復材料の性能はう蝕の予防に有効な濃度で持続的にフッ化物イオンを徐放することは困難であり、フッ化物イオンの補充には高濃度のフッ化ナトリウム水溶液が必要なことからは未だ十分ではない。そこで本研究では、フッ化物イオンの徐放及び補充を中空構造の有機分子であるヘミクリプトファンで行い、それを修復材料に導入することにより高効率なフッ化物イオン徐放性を示すコンポジットレジンを開発することを目的とした。まず、フッ化物イオンを包接可能なヘミクリプトファンの合成を行った。ヘミクリプトファンは、バニリルアルコールから多段階反応を経てシクロトリベラトリレンと呼ばれる9員環のお椀状ホスト分子を出発原料とし、これに様々な長さのスペーサーを導入した後、三脚型のポリアミン配位子とカプセル化させることで合成した。ヘミクリプトファンはその構造決定に超電導NMR装置およびX線結晶構造解析装置を用いた。その結果、得られたヘミクリプトファンは亜鉛、ルテニウム、銅、コバルト、鉄、マグネシウム等、様々な金属イオンを空孔内に取り込むことが明らかとなった。また、金属イオンの対アニオンの一部がヘミクリプトファンの空孔内に包接されていることがX線結晶構造解析により明らかとなった。このことからより小さなアニオンのフッ化物イオンは今回新たに開発したヘミクリプトファンの空孔内に十分包接可能なことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の実施計画では、フッ化ナトリウムを包接可能なヘミクリプトファンの合成および構造解析を行った後、ヘミクリプトファンのフッ化物イオンの補充能について評価を行うところまで行う予定であった。今回、フッ化物イオンを補充可能なヘミクリプトファンの合成と構造決定まで達成できた。フッ化物イオンの補充能の評価にまで研究を進めることができなかったのは、当初、予定していた合成経路で目的とするヘミクリプトファンを合成することができず、合成経路を変更したことが原因として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今回合成したヘミクリプトファンの補充能および徐放能に超電導NMR装置および紫外可視光領域測定装置を用いて検討を行っていく予定である。フッ化物イオンの補充がうまくいかない場合、ヘミクリプトファンのスペーサーの長さを変更し、より小さな開口部を有するヘミクリプトファンの合成を新たにおこなう。フッ化物イオンの徐放がうまくいかない場合は、ヘミクリプトファンの二級アミン上に立体障害の大きな置換基を導入し、開口部が常に開いたヘミクリプトファンに改良し適切な濃度で徐放できるように調整する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主にヘミクリプトファンの開発のための試薬代および器具代に充てる予定である。
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