2011 Fiscal Year Research-status Report
口腔がんの発症・進展における糖転移酵素GnT-Vの影響とPETによる評価
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23792307
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野寺 麻記子 北海道大学, 大学病院, 医員 (20443963)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | GnT-V / PET / HIF-1α |
Research Abstract |
口腔悪性腫瘍における糖鎖の意義についてはこれまで研究が進んでいなかった。本研究では、アスパラギン結合型糖鎖にβ1-6結合の分岐鎖を合成する酵素であるGnT-V(N-アセチルグルコサミン転移酵素)の発現が、口腔がんにおける生物学的悪性度や分子イメージングであるPETデータとどのように関わっているかを明らかにすることを目的とした。 北海道大学歯科診療センターを受診した舌扁平上皮がん約65%にGnT-Vタンパク発現を認めた。定量RT-PCRによるGnT-V mRNAの発現は、正常組織と同様に前癌病変ではほとんど発現していないのに対し、扁平上皮がんでは有意に発現亢進を認めた。GnT-Vの発現は頸部リンパ節転移、浸潤様式、組織学的悪性度との間で相関が認められたことから、舌扁平上皮がんにおいて、GnT-Vは腫瘍進展とともに亢進し、浸潤・転移といった腫瘍の悪性形質に深く関与することが示唆された。 さらに、扁平上皮癌がん、悪性リンパ腫患者を対象に、術前後(あるいは化学療法前後)のFDG-PETおよび、hypoxia imagingであるFMISO-PETを撮影し、腫瘍取り込み量を定量(SUV値)し、治療前の組織材料を用いてGnT-V発現や細胞増殖能、血管新生、組織虚血の評価(MIB-1、VEGF、CD34、HIF-1α)を行い、SUV値との関連について検討した。未治療の口腔扁平上皮がんにおけるFDG-PET画像でSUV値が高値を示す場合、HIF-1αの発現が強い傾向を認めた。しかし観察期間が短いため予後との相関関係は検討出来ていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において、GnT-Vの発現と予後との関連を検索するにあたり、試料・標本の入手困難の症例があったため、作業がやや遅れていた。さらに前向き研究としては、患者データの蓄積に期間を要しデータ解析がやや遅れている。研究期間が短く予後との関連を検討するのは困難であるため、同一患者での経時的変化ではなく、以降は患者群間での比較検討を主とする。対象には外科療法単独だけではなく化学療法や放射線療法併用例も含まれるため、対象症例を細分類すると、治療効果との相関関係を正確に把握するためは各群に含まれる症例数をさらに増加させる必要があり、さらなるデータの蓄積が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではGnT-Vの発現と口腔がんにおける生物学的悪性度、PETイメージングとの関連について引き続き症例を蓄積し検討する。口腔がんにおけるGnT-Vの腫瘍浸潤・転移に関する分子レベルでの解析はこれまで行われていないため、口腔がん細胞へのGnT-V遺伝子導入を行い、細胞運動・接着、浸潤に及ぼす影響を検索することで、口腔がんの進展機構におけるGnT-V合成糖鎖による糖鎖修飾の重要性を示すことを目指す。また、YamamotoらによりEVTにおけるGnT-Vの発現が低酸素条件下において発現増強されることが示された(Endocrinology;150(2):990-9)。本研究では、当初の研究計画に加え、hypoxia状態での口腔がん細胞におけるGnT-V発現の変化、細胞運動・接着、浸潤に及ぼす影響を検索する予定である。さらに低酸素誘導因子であるHIF-1α発現とGnT-V発現を相互評価することで悪性度を反映した予後規定因子となりうるかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)臨床研究:口腔悪性腫瘍におけるクリニカルPETデータの蓄積を行う。さらに、組織標本を用いてGnT-V、増殖能、血管新生、低酸素状態の評価を行い、これらのデータを比較検討することで腫瘍の浸潤や転移との関連性を検討する。2)基礎研究:口腔がん細胞において、(1)低酸素条件下におけるGnT-Vの発現強度を検索する。(2)GnT-Vの合成する糖鎖が腫瘍浸潤・進展に及ぼす影響を検索する。a)ヒト口腔がん細胞株にGnT-V遺伝子導入を行い高発現系を作成。それらの系におけるinvasion assay、cell motility assay、cell adhesion assayを行い細胞運動能、細胞間接着能、浸潤能に及ぼす影響を検索するb)GnT-Vの合成する糖鎖の合成阻害剤であるswainsonin処理により、これら細胞運動・接着、浸潤能がどのような影響をうけるか検索する。これらの結果により口腔がんの進展機構におけるGnT-V合成糖鎖による糖鎖修飾の重要性を示すことを目指す。免疫染色用抗体などの納品が遅れ、23年度の研究費に未使用額が生じたが、次年度に納入されるため、今年度行う予定の研究計画と合わせて実施する。また、次年度に当初の研究計画に加え、hypoxia状態での口腔がん細胞におけるGnT-V発現について検索することとしたため、未使用額の一部は次年度の追加研究費用としても用いる予定である。
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Research Products
(2 results)