2011 Fiscal Year Research-status Report
副甲状腺ホルモン受容体PTHR1の発現抑制による口腔癌転移の制御
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23792313
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
宮下 仁 山形大学, 医学部, その他 (70372323)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 遺伝子 / 転移 / ホルモン受容体 |
Research Abstract |
本研究の目的は以下の通りである。(1)正常組織と口腔癌細胞とにおける副甲状腺ホルモン受容体1型PTHR1の発現を比較し、PTHR1高発現の癌細胞株を樹立後、その発現量と細胞増殖との関連性について検討を行う。(2)高転移株群及び低・非転移株群におけるPTHR1と副甲状腺ホルモン関連蛋白PTHrPとの発現とその関係について比較検討する。(3)PTHR1高発現癌細胞株をマウスに移植し早期に転移するか検討する。これらより「PTHR1の発現と活性の阻害により、口腔癌細胞の転移制御を目指す」ことが最終目的である。【方法】・本年度は最初に(1)に関して、PTHR1 mRNA及び蛋白レベルの発現量の解析を行った。ヒト口腔扁平上皮細胞と歯肉線維芽細胞をcontrolとし、ヒト口腔癌細胞株はよく用いられ報告も多いHSC-2,HSC-3,Ca9-22,SAS,SAT,OSC-19,OSC-20の7種を用いて行った。・用いた口腔癌細胞株は転移能により下記の如く分類した。高転移株群(3種): HSC-3, OSC-19, OSC-20, 低・非転移株群(4種): HSC-2, Ca9-22, SAT, SASの2群である。・Real time RT-PCRでmRNA量を、ウエスタンブロッテイングと免疫染色にて蛋白量を定量し、上記2群間の発現量を比較した。【結果】I.口腔癌細胞株においてPTHR1の発現をmRNA、蛋白レベルで検出する事が出来た。これら発現量は口腔扁平上皮細胞と歯肉線維芽細胞と比較し有意に高レベルだった。II.一方で口腔癌高転移株群と低・非転移株群との間では、PTHR1発現レベルの有意差は認められなかった。以上より口腔癌においてもPTHR1が過剰発現している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、(1)ヒト口腔正常組織と口腔癌におけるPTHR1の発現の定量的解析を行い比較する、(2)PTHR1高発現口腔癌細胞株を樹立後、PTHrPの発現量を定量し細胞増殖能について評価を行う、という予定であった。研究進行遅延の主な理由は下記に示す通りである。I.最大の理由は、口腔癌細胞株におけるPTHR1の定量解析と口腔正常細胞における発現量との比較検討を最初に行ったためである。II.また、口腔癌臨床検体を用いたPTHR1の発現量の検討は、条件設定の段階である事、並行して組織標本の収集と標本作製を行っているため。III. 高発現細胞株の樹立に用いるPTHR1発現ベクターを作成中であること。IV.異動に伴う研究環境の変化と立ち上げ・引き継ぎ・継続のため。V.震災後の研究室整備から機器メンテナンス、ラボの再構築に時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
I.まずH23年度研究予定事項について行う。具体的には口腔癌臨床検体における免疫染色を用いたPTHR1の発現の検討を行い正常組織との発現量の差異について比較検討する。II. PTHR1高発現口腔癌細胞株を樹立後、PTHrPの発現量を定量し細胞増殖能について評価を行う。PTHR1高発現株におけるPTHrPの発現量を同様に定量する。続いてこれらの高発現細胞株を用いて、元の細胞株との細胞増殖速度を比較しその差について検討する。以上より、PTHR1とPTHrPの共発現により増殖活性が増大するかについて明らかとなる。III.ヌードマウスに移植可能なヒト口腔癌細胞株でもPTHR1高発現株を樹立し、これをヌードマウスに移植し、コントロール群と比較してPTHrPの発現量を定量後、細胞増殖速度及び転移を生じるまでの期間と、転移範囲及び骨やリンパ節を含む転移臓器の特異性についての検討を行う。特にPTHR1とPTHrPが共に高発現している細胞株が最も転移能が高いかどうかを確認する。IV. 樹立したPTHR1高発現癌細胞株に対して、RNAiにてPTHR1の発現と活性を抑制する。その後、コントロール群と比較しその細胞増殖速度及び転移能が抑制されるかどうかを比較する。更にPTHR1の抑制が、既に転移を起こした癌細胞に対しても奏功しその進行を制御するかどうかについても検討する。これにより、口腔癌転移におけるPTHR1の意義とPTHR1-PTHrPの分子機構をin vitro、vivoの両面から解明することが出来ると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・設備備品類超高速冷却遠心器:DNAやPCR産物抽出時、tRNA回収とmRNA抽出→cDNA合成等に使用するが、超高速型で研究時間の短縮にもつながり、コストパフォーマンス面でも必要である。高機能型PCR装置:我々は既にReal-time PCR装置を有しているがこれはmRNA定量専用に使用する。その為高発現株の樹立に必要なcDNA合成、発現ベクターにインサート後の確認等には本装置を用いる。またアニーリング温度をgraduentに設定できるためPCR条件設定が簡便で、高速PCRにも対応しており稼働時間が短縮化され本研究課題に必要である。・消耗品類口腔癌細胞株、実験用動物(ヌードマウス)、研究用ガラス・プラスチック器具、細胞培養用CO2ガス、本研究遂行に必要な研究用書籍、医学英語、がんの基礎と臨床に関する成書類、文献検索・翻訳その他に関するソフトウェア類の購入に充てる。・旅費類その他調査研究・資料収集用、成果発表のための国内外旅費、学会発表における参加費、スライド作成・印刷費、論文投稿費用等に充てる。
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Research Products
(3 results)