2011 Fiscal Year Research-status Report
顎口腔領域の放射線障害に対する幹細胞治療確立に向けた戦略的基礎研究
Project/Area Number |
23792319
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
阿部 成宏 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (00510364)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 分化 / 再生医学 / 放射線生物学 / Tissue Engineering |
Research Abstract |
近年、生体内の多くの正常組織や器官には、自己複製能と多分化能を保持した幹細胞とよばれる未熟な細胞集団が存在し、組織の発生や損傷修復において極めて重要な役割を果たしている。これらの幹細胞研究の多くは再生医学における細胞供給源としての可能性を見出すために、いかに安定し、大量に幹細胞を増幅させ、分化誘導させるかが大きなウエイトを占めている。 本研究ではさまざまな正常幹細胞(歯髄幹細胞、口腔粘膜幹細胞)を今までの申請者が行ってきた幹細胞学的手法によって、In vivoでの局在を同定し、その細胞を単離し、性状解析を行う事を目的として実験を遂行した。 ヒト歯髄幹細胞に関しては、放射線生物学的検討を行い、放射線照射に対する生物学的応答を明らかにした。その中で、無血清培地下でSphere形成をする歯髄由来の神経堤幹細胞様細胞を単利することに成功した。本研究では、その細胞集団を幹細胞生物学医的に詳細に検討し、それらが、神経堤幹細胞マーカーを発現していることをWestern blotting法を用いて明らかにした。また、単層培養とSphere形成細胞では、表面マーカーが異なることを見出し、現在、海外学術論文へ投稿中となっている。 ヒト口腔粘膜由来の幹細胞実験では、本学歯学部付属病院の倫理審査委員会へ申請書を提出し、承認された。あらゆる年代のインフォームドコンセントが得られた患者から口腔粘膜組織を採取し、安定した細胞培養法を確立した。さらに、1つの口腔粘膜組織から、上皮と間葉を完全に分ける培養法を確立した。これらの細胞のうち、粘膜間葉細胞から、無血清培地下でSphere形成させ、幹細胞様細胞を単利した。これらは、適切な条件下で骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、神経細胞系統へと分化誘導させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト歯髄幹細胞に関しては、放射線生物学的検討、幹細胞生物学的検討、再生医学的検討が終了した。 ヒト口腔粘膜由来の幹細胞実験では、本学歯学部付属病院の倫理審査委員会の承認を得た。そこで、患者由来の組織を用いて、安定した細胞培養法を確立した。さらに、1つの口腔粘膜組織から、上皮と間葉を完全に分ける培養法を確立した。このことは、一つの組織片から2つの細胞系統へと簡単に安全にかつ大量に培養できることから、細胞供給源としての有用性は非常に高いことが示唆された。これらの細胞のうち、粘膜間葉細胞から、無血清培地下でSphere形成させ、幹細胞様細胞を単利した。これらは、適切な条件下で骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、神経細胞系統へと分化誘導させることに成功し、これらの細胞集団が神経堤幹細胞と非常に良く類似しているものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト口腔粘膜由来幹細胞実験に関しては、1.幹細胞生物学的検討:分子生物学的手法を用いて性状を解析する。2.放射線生物学的検討:口腔粘膜組織の放射線応答のメカニズムの解明。3.免疫不全動物を用いた再生医学的検討:骨組織再生・神経再生・骨膜付き培養口腔粘膜(上皮・間葉ハイブリッド組織)再生の検討を行い、明らかにする。 また、本研究で得られた成果を国内外の学術学会や論文に投稿し、発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.幹細胞生物学的検討:分子生物学的実験試薬を購入し、性状解析を行う。具体的には、RT-PCR、Western blotting、蛍光免疫染色、フローサイトメトリーを行い、表現型を明らかにする。2.免疫不全動物を用いた再生医学的検討:免疫不全動物の購入や解析のための抗体などを購入する。具体的には、骨、神経、骨膜付き粘膜組織再生を目指し、適切なスキャホールドの検討、モデルマウスの作製を行い、In vivoにて評価する。再生組織の免疫組織学的検討を行い、これらの細胞の有用性とその限界を明らかにする。3.本研究で得られた成果を国内外の学術学会や論文に投稿し、発表するための、学会旅費や英文校正や掲載料。
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