2012 Fiscal Year Research-status Report
頭位,開口および鎮静深度が呼吸・嚥下機能に及ぼす影響について
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23792334
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
花本 博 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50397733)
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Keywords | 嚥下 / 頭位 / 開口 |
Research Abstract |
目的:歯科治療のための開口器の使用や,頭部の前後屈が,嚥下のしやすさに影響を及ぼし,咳反射の発生に関わっている可能性がある.仰臥位での開口と頭部の前後屈により,嚥下のしやすさが変わるかどうかを調べ,筋電図記録を行うことにより関連する因子の分析を行った. 方法:開口量および頭位を変化させ,飲水テストを行った.飲水テストは,口腔内に滅菌水10mlを注入し,5秒間保持させたのち,嚥下を1回行うように指示することにより行った.嚥下終了後,口腔内に残った滅菌水の量を6Fr吸引カテーテルおよび20ccシリンジを用いて吸引し,残量(重量)を測定した.開口量(0mm,20mm,30mm,40mm)および頭位(-20°:頭部後屈,0°:水平,+20°:頭部前屈)の各段階において調べた.また,舌骨上筋群の筋電図を記録し、最大振幅値および筋活動持続時間を計測した. 結果:開口量の増加に伴い、口腔内残量が増加した.各頭位において,開口量20mm以上では,有意に口腔内残量が増加した.後屈位では嚥下時間が延長する傾向が認められた.また、後屈時の開口により筋電図における最大振幅が減少した. 考察:通常の歯科治療における開口時には後屈位は嚥下能が低下すると考えられる.開口器の使用により,嚥下能が低下する.また,後屈位では,開口することで嚥下能はほぼ同程度に低下するが,水平位および前屈位では,開口量の増加に伴い嚥下能が低下するため,開口量を少なく維持するほうが,嚥下能を維持することができると考えられた.また,嚥下機能の低下には,頭位の後屈により嚥下時間が延長すること,および開口状態により嚥下時の舌骨上筋群の筋活動が制限されることが関与していると示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
覚醒時における頭位と開口が嚥下機能に及ぼす影響について、筋電図解析を用いた評価を行うことができた。筋電図記録による解析法にはさまざまなパラメータが報告されている。本研究では、測定部位として舌骨上筋群の評価を行うこととした。またパラメータを検討した結果、筋電図の最大振幅および筋電図活動の持続時間の評価を行い、有用な結果が得られた。 今後の方針として、鎮静時の評価を検討しているが、実際に嚥下可能かどうか問題点が残る。そのため、dry swallowを行った際の評価から始め、水飲みテストが可能かどうかを検証する必要があると考えられた.水飲みテストが困難な場合はdry swallowのみでデータを評価することも検討する。 筋電図の評価パラメータの選択および解析のために文献検索、試行錯誤を行い、さらに鎮静時の評価法を再考したために時間を要した。ボランティアに鎮静を行うため確実なデータ収集が可能な評価法を確立するため、文献検索および学会での情報収集を行った。そのため、実際の進行状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
覚醒時と鎮静時で嚥下の評価法を変える必要が発生したため、覚醒時の結果をまとめた。この結果をもとに論文発表を行っていく予定である。鎮静時の嚥下評価は別途記録を行い、データの収集を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた鎮静時の嚥下評価法の再考が必要になったため、データ収集の開始が遅れた。そのため、鎮静時のデータ収集に必要な消耗品等の購入を行い、研究を実施する。また、すでに覚醒時の結果は論文として公表していく。
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