2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞間接着複合体に着眼した癌新生リンパ管の特質性の解明
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23792340
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
明石 昌也 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (40597168)
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Keywords | 口腔癌 / リンパ管内皮細胞 / 細胞間接着複合体 / 炎症性サイトカイン |
Research Abstract |
口腔癌の所属リンパ節転移は患者の予後に関わる最重要因子である。近年悪性腫瘍がリンパ管新生能を有し、その結果癌のリンパ節転移を促進しているとの報告がマウスなどを用いた実験により証明されて来た。しかし、悪性腫瘍による新生血管が正常血管とはその強度や走行の直線性など幾つかの点で大きく異なる性質を有しているのが判明しているのに比べ、癌新生リンパ管と正常リンパ管の相違性についてはいまだ完全に理解されていない。本研究の最終目的は、癌新生リンパ管の特質性に関する研究を行い、口腔癌のリンパ節転移のメカニズムを解明することにあり、方法として研究者がこれまでに従事してきた血管内皮細胞の細胞間接着を検討する方法を用いた。 血管内皮細胞に対する炎症性サイトカインTNF-αの影響に関してはこれまでに多数報告されているが、当該年度はリンパ管内皮細胞に対するTNF-αの影響を特に細胞間接着複合体に注目し観察を行った。その結果、①正常リンパ管内皮細胞において幾つかの細胞間接着関連分子(VE-cadherin、PECAM-1、ZO-1)の局在が異なること、②TNF-α刺激下で正常細胞における特有のVE-cadherinの局在がほぼ消失し、③それに起因すると思われる細胞間透過性の亢進を認めたこと、④正常細胞とTNF-α刺激細胞とでVE-cadherinの総タンパク質量は不変であったことから、TNF-αによりVE-cadherinの細胞膜への局在が変化していたと考えられたこと、などを確認し平成25年度に査読付き海外雑誌に報告した(Lymphatic Research and Biology, in press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は癌新生リンパ管の特質性に関する理解を深め、口腔癌のリンパ節転移のメカニズムを解明することを最終目的としている。その方法として、細胞の成熟度の指標にもなり得ると考えられる細胞間接着複合体に注目した実験を予定した。平成23年度は準備実験として、まず正常リンパ管内皮細胞のAJ、TJ構成因子に関して検討し、確認を行った。最終的には正常リンパ管と癌新生リンパ管の比較を最終的に行う必要があり、そのために癌新生リンパ管をミミックする実験を平成24年度に施行した。具体的には、正常リンパ管と癌新生リンパ管を比較するための有用な実験の一つであると考えているTER(経皮内皮電気抵抗値)の測定を行った。さらにリンパ管新生を促すと考えられている各種サイトカインのTERや細胞間接着複合体に対する影響を検討した。この結果、免疫染色による正常細胞と炎症性サイトカイン刺激下における細胞とで細胞接着管複合体構成分子の局在が異なること、TERが炎症性サイトカイン刺激下において低下していることを確認し、当該年度に査読付き海外雑誌に報告した。よって本研究の目的である「正常リンパ管と非正常リンパ管」とを比較し、最終的に癌新生リンパ管の特質性を理解するという課題の達成に着実に近づいており、現在までの研究進捗度はおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究応募申請書の平成24年度以降の目標の一つとして、口腔癌新生リンパ管培養細胞株の樹立を考えた。そのための準備実験として、現在用いているヒトリンパ管内皮細胞を癌新生リンパ管に形質転換させるような実験を考え、具体的にはヒトリンパ管内皮細胞に対し、癌が産生すると考えられるサイトカインを添加した環境のもと細胞培養し、その際の細胞のTERや細胞間接着複合体の変化、または3次元培養法を用いたlumen形成能等を比較し、その相違性の検討を行った。こうした培養細胞を用いた実験を行うことで、正常リンパ管と癌新生リンパ管の相違性に対する理解をこれまでに深めることが出来た。 今後はこれまでの実験結果をもとに、リンパ管増殖因子刺激下におけるリンパ管内皮細胞の細胞間接着複合体の変化、またこれまでに明らかにされていない分子標的薬のリンパ管内皮細胞に対する影響を観察する予定である。
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