2012 Fiscal Year Research-status Report
EphrinB2を標的とした脈管新生抑制による口腔癌の制御
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23792353
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
笹部 衣里 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (40363288)
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / Ephrin-B2 / リンパ節転移 |
Research Abstract |
【目的】口腔扁平上皮癌の予後を左右するリンパ節転移は、リンパ管新生とそれに続く癌細胞のリンパ管への接着、侵入によって生じる。リンパ管新生は主にVEGFとその受容体シグナルによって制御されるが、最近このVEGFシグナルはEphrin-B2からのリバースシグナルによって増強されることが明らかにされた。そこで、口腔扁平上皮癌におけるリンパ節転移に及ぼすEphrin-B2の影響について検証することとした。 【材料および方法】株化口腔扁平上皮癌細胞(SAS-L1細胞)のヒトリンパ管内皮細胞(hLEC細胞)への接着能および遊走能に及ぼすEphrin-B2の影響をin vitroにおいて検討するため、Ephrin-B2-siRNA導入および非導入SAS-L1細胞を単層培養したhLEC細胞上に播種し、1時間後に接着細胞数をカウントするとともに、CytoSelect Tumor Transendothelial Migration Assayを用い、単層培養したhLEC細胞層をtransmigrateした細胞数を計測した。さらに、5週齢雄SCIDマウス舌にSAS-L1細胞を移植して腫瘍を形成させた後、AteloGeneとEphrin-B2-siRNA混合液を局所注射し、顎下リンパ節への転移に及ぼす影響についてin vivoにおいて検討した。 【結果】Ephrin-B2-siRNAを導入することによりSAS-L1細胞のhLEC細胞に対する接着能は有意に減弱するとともに、hLEC細胞層をtransmigrateした細胞数は有意に減少した。さらに、Ephrin-B2-siRNA混合液の舌への投与により、SAS-L1細胞の顎下リンパ節への転移が抑制された。 【結論】Ephrin-B2は口腔扁平上皮癌細胞のリンパ管への接着および遊走能の促進作用を介してリンパ節転移を正に制御することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、リンパ節転移能を有する口腔扁平上皮癌細胞株をSCIDマウス舌に移植した後に、Ephrin-B2に対するsiRNA発現アデノウイルスを感染させ、腫瘍の成長、頸部リンパ節転移への影響について検討することを計画した。一部の計画変更はあったが、ほぼ予定通り進展した。Ephrin-B2に対するsiRNA導入法は、当初はアデノウイルスベクターを作製し、腫瘍に感染させる予定であったが、AteloGeneとEphrin-B2-siRNAの混合液を舌に局所投与することにより、有意にEphrin-B2の発現がノックダウンされたため、同方法を使用した。また、舌に移植する高転移能の口腔扁平上皮癌細胞株については、当講座が所有しているNOS-2細胞にGFP発現ベクターを導入した後、GFP安定発現株を樹立する予定であったが、GFP発現高転移能舌癌細胞株のSAS-L1細胞を譲渡して頂いたので円滑に実験を進めることが出来た。また、in vitroにおける検証においても、SAS-L1細胞を用いることで、予定通り進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
既に、GST融合タンパク質発現用ベクターおよびヒスチジンタグ融合タンパク質発現ベクターは当講座に保有しているので、順次クローニングを行っていく。また、必要な機器については、総合研究センター実験実習機器施設に設置されている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はGFP発現ベクター、およびEphrin-B2に対するsiRNA発現アデノウイルスベクターを購入する予定であったが、細胞譲渡と、ウイルスを用いない別の方法によるノックダウンが可能になったため、研究費の一部が次年度に繰り越されることとなった。 次年度はin vitroの系を用いてヒトリンパ管内皮細胞への接着、遊走に関わるEphrin-B2のシグナル活性化因子を追求する計画である。今年度までの研究により、内在性Ephrin-B2は口腔扁平上皮癌細胞の増殖、凝集、接着、遊走、浸潤を促進し、特にリンパ管内皮細胞への接着、遊走能の促進作用を介してリンパ節転移を正に制御することが明らかとなった。そこで、Ephrin-B2と相互作用する蛋白を同定し、どのようなシグナルを介するかを明らかにすることを計画している。 具体的には、 ①Ephrin-B2-siRNA導入および非導入SAS-L1細胞よりタンパク質を抽出し、二次元電気泳動によりタンパク質を分離後、タンパク質を消化し、生成ペプチドを回収した後に、ペプチド断片の質量をLC-MS/MSにて測定し、タンパク質を同定する。 ②GST或いはヒスチジンタグをEphrin-B2に融合したタンパク質を作製し、pull-downアッセイを行うことを計画した。
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