2011 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌の新規腫瘍拒絶抗原を標的としたペプチドワクチン療法の確立
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23792363
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉武 義泰 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (00423682)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 口腔癌 / 臨床試験 / ペプチドワクチン療法 |
Research Abstract |
口腔癌は全癌の1~2%を占めており、当科においては年間80人を超える新規患者の受診がある。標準療法に対して不応な症例、つまり、外科的切除、化学療法や放射線療法にて病態を制御できない場合、現在のところ治療法はなく、新たな治療法の開発が望まれている。そこで患者の負担も少なく他の治療法とも競合しない免疫療法が口腔癌治療に貢献することに期待しているところである。すでにわれわれは標準療法不応口腔癌患者に対してペプチドワクチン療法を開始しているが、今後さらに症例を増やし、本療法の有用性を検証する必要がある。現在、3種類の口腔癌特異的に発現している標的分子に対するペプチドを3種類作製し、35症例の標準療法不応の患者に投与を行ってきた。その中で、1症例において、腫瘍が完全に消失し寛解を得ることができた。その他の症例においても、すべての症例において、3種類のペプチドのうち少なくとも1種類のペプチドに対してはそれを認識するkiller T 細胞が誘導されていることが確認されている。また、標準療法不応の患者において、ペプチドワクチンを投与することによって、生存期間(overall survival : OS)に関しては、生活の質を低下させることなく若干の延長を認める結果を得ている。無増悪期間(progression free survival : PFS)においては免疫の活性化するまでにある程度の時間が必要であることから、PFSに差はしょうじないものの、腫瘍の増大する速度は遅くなっている傾向を認めている。今後の解析が必要であると考えている。平成24年度に、さらにペプチドワクチン投与する症例を増やしていき、より厳密で正確な解析を行っていく必要がある、と考えているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、標準療法不応の患者35症例に対してペプチドワクチンの投与を行ってきた。それらの症例において、定期的に画像検査を行い、腫瘍の大きさの変化を画像の面から評価している。その結果、1症例において腫瘍の完全消失した症例を確認することができた。このように、すべての症例において画像の側面から腫瘍の状態の変化を確認しながら、本臨床試験を行っている。さらに、定期的に採血し、全血液から末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cell : PBMC)の分離を行っている。分離したPBMCは液体窒素で保管・管理し、ペプチド投与前とペプチド投与後の免疫動態の解析を行い、その変化を確認している。現在、10症例ほどの免疫動態解析が終了したところである。免疫動態解析は、それぞれのペプチドを認識することのできるCD8陽性T細胞の割合をフローサイトメーターFACScanを使用して測定し、その継時的変化を解析していきます。さらに、投与したペプチドを認識し、IFN-γを産生するかどうかを確認するために、ELISPOT assayを行い、それについての解析を行っているところである。以上のことより、臨床試験、および画像解析、免疫動態解析はおおむね順調に進んでいると判断します。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、さらに標準療法不応の患者で、ペプチドワクチン療法を施行する必要のある、あるいはペプチドワクチン療法しか治療手段がない患者に対してペプチドワクチンの投与を継続して行っていき、新規症例を増やしていく。また、これまでの投与患者における免疫動態解析を引き続き行っていき、画像評価と併せてペプチドワクチン療法の解析を行っていく必要がある。一方重要なのは、生存期間の延長効果が認められるのか、という点であり、その点における解析も正確に行っていく必要がある。今後、さらなる徹底した解析を行う方針である。そのためには、さまざまな物資が必要であり、これらを購入するにはたくさんのお金が必要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まずは、ペプチドワクチン投与の際に必要なIncomplete Freund's Adjuvant : IFA から、ワクチン作成時に必要なさまざまな物品があります。しかし、何と言いましても、人に投与可能なgrade(GMP grade)のペプチド、および免疫学的解析には、莫大なお金が必要です。1検体の全血液からPBMCを分離するだけでも、試薬や物品に相当のお金が必要です。具体的な物品名を挙げるときりがありませんので挙げませんが、1検体でもその額や驚くほどの高額になります。分離したPBMCを液体窒素中に保存・保管するのにも、お金は必要です。口腔癌におけるペプチドワクチン療法は日本では当教室のみでしか行っておりませんので、問い合わせは日本中からありますし、実際に東京・神奈川から飛行機でいらっしゃる患者も珍しくありません。需要はどんどん高まっており、投与症例数は増加の一途をたどることが予想されます。そうなると必然的にお金が必要になってくる、ということになります。以上のように、次年度の研究費は臨床試験として大切に使用する予定です。
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Research Products
(4 results)