2011 Fiscal Year Research-status Report
アドレナリン受容体サブタイプによる側坐核ドパミン神経活動制御機構の研究
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23792387
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
内田 琢也 日本大学, 歯学部, 助教 (10409104)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ノルアドレナリン / ドパミン / 側坐核 / アドレナリン受容体 / 口腔ジスキネジア / ラット |
Research Abstract |
青斑核や延髄からのノルアドレナリン(NA)神経は,中脳辺縁系ドパミン(DA)神経の投射する側坐核へ入力する。側坐核ではNA神経とDA神経の間に密接な機能的相互関係があるが,同部位のNAおよびDA神経活動へのα受容体サブタイプの関与の詳細は不明である。そこでα1またはα2受容体の作動薬と拮抗薬が側坐核の細胞外液中のNAおよびDA量に及ぼす効果を指標として,これら受容体サブタイプのNAとDA神経活動における役割を検討した。 無麻酔非拘束ラットの側坐核から脳微小透析プローブを介して回収した細胞外液中のNAおよびDAは,HPLC-ECD法で分離・定量した。薬物は灌流液に溶解し,脳微小透析プローブを介した逆透析で側坐核に局所灌流投与した。 その結果,α1受容体作動薬のmethoxamine(24 pmol)はNAに影響を与えずにDAを減少させた。α1受容体拮抗薬のprazosin(600, 6000 pmol)は,NAとDAをそれぞれ増加または減少させた。NAとDA量に著変を起こさない用量のprazosin(6 pmol)は,methoxamine(24 pmol)誘発DA減少を抑制した。また,NAとDAに影響を与えない用量のmethoxamine(0.024 pmol)によりprazosin(6000 pmol)が誘発したNA増加は抑制されたが,DA減少は影響を受けなかった。α2受容体の作動薬のclonidineとUK14304,拮抗薬のRX821002の投与では,NAとDA量に変化は見られなかった。 以上の結果から,側坐核にはNA放出抑制を介してDA放出を促進するα1受容体がNA神経終末上に,またDA放出を抑制するα1受容体がDA神経終末上にそれぞれ分布することが示唆された。さらに側坐核のα2受容体は,同部位のNAおよびDA放出の制御には目立った役割を果たさないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はほぼ当初計画通りに進行しており,2年の期間のうち1年が経過した段階で予定の実験の約50%は終了した。 前年度はα受容体系薬物の単独または併用投与がそれぞれ側坐核の細胞外NAおよびDA量に及ぼす効果から,同部位に分布するα1受容体がNAおよびDA神経活動を抑制的に制御することが示された。また,α2受容体は側坐核のNAおよびDA神経活動制御において目立った役割は果たさないことが示唆された。これらの研究成果は,中枢NA神経活動を抑制的に制御する「自己受容体」として教科書でもしばしば取上げられるα2受容体ではなく,α1受容体が少なくとも側坐核ではNAのみならずDA神経活動までも抑制的に制御することが指摘できたという点でたいへんユニークであったと自負している。 24年度は,引き続き当初計画の通り,側坐核の細胞外液に含まれるNAおよびDAを同領域のNAおよびDA神経活動の指標とした研究を推進する。実験には前年度に続きラットを用い,in vivo脳微小透析法により側坐核の細胞外NAおよびDA量を定量する。次年度は,β受容体系薬物の側坐核の細胞外NAまたはDA量に対する効果を観察し,同部位に分布するβ1およびβ2受容体がそれぞれNAまたはDA神経の制御に果たす役割を明らかにすることを目指す。最終的に2年間の研究成果をまとめて,側坐核のNAおよびDA神経活動の制御機構を関与するアドレナリン受容体サブタイプの面から解明する。 これまでの研究成果の一部は,24年6月にストックホルムで行われるCINP World Congress of Neuropsychopharmacology(国際神経精神薬理学会)等で発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
【役割分担】実験の遂行:内田琢也(研究代表者),青野悠里(研究協力者),関野麗子(研究協力者),田口寛子(研究協力者),三枝 禎(研究協力者),研究の助言:三枝 禎(研究協力者),A. R. Cools(海外研究協力者),統括:内田琢也(研究代表者) 我々はこれまで,β受容体の作動薬(isoproterenol)または拮抗薬(propranolol)の側坐核への灌流投与は,同部位においてNA遊離に目立った影響を与えないが(Aono et al., J. Neural Transm., 2007),NA取込み阻害薬が誘発したNAの増加によるβ受容体刺激を介しDA遊離を促進すること(Mizoguchi et al., Eur. J. Pharmacol., 2008)を報告してきた。神経細胞に分布するβ受容体サブタイプにはβ1とβ2の少なくとも2種類があり,いずれも側坐核に認められる。これらサブタイプをisoproterenolとpropranololは非選択的に刺激または遮断するので,本研究では,まずβ1受容体の作動薬(dobutamine)および拮抗薬(atenolol)の側坐核への単独投与による同部位の細胞外NA量への影響を確認の上,同処置の細胞外DA量への効果について検討することを当該年度は計画している。つぎに,β2受容体の作動薬(salbutamol)および拮抗薬(butoxamine)の効果について同様に検討する。これらの薬物が,同部位のβ1またはβ2受容体サブタイプを介して側坐核のNAまたはDA量を増加(または減少)させた場合には,用量反応性に基づきこれら各受容体の作動薬の併用投与実験を行う。作動薬は用量を変えて併用投与し,誘発された効果の大きさを比較していずれのサブタイプの活性化が重要であるかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度は,直接経費130万円のうち75%の約98万円を使用し,残り25%に相当するおよそ32万円を24年度に繰り越した。この繰り越しが発生したのは「総額の7割支給の先行実施」に伴い,万が一残額の送金がなかった場合に備えて一部の消耗品の発注を次年度まで遅らせたためである。 前述の繰越金(約32万円)と24年度の直接経費130万円をあわせた額のうち約70%は,実験動物(ラット),試薬,脳微小透析法の実施に伴う消耗品(プローブ,チューブ,HPLC用品等)に使用する予定である。残りの約30%は,24年6月にストックホルムで行われるCINP World Congress of Neuropsychopharmacology(国際神経精神薬理学会)と25年3月に福岡で行われる日本薬理学会で,それぞれこれまでの研究成果の一部を発表するため,旅費として使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)