2011 Fiscal Year Research-status Report
メラトニンの口腔粘膜における生理的役割の解明と口内炎治療薬としての可能性
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23792393
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
熊坂 祝 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (00598055)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | メラトニン / 口腔粘膜 / 創傷治癒 |
Research Abstract |
現在、日本は高齢化社会を迎え、口腔粘膜疾患など口腔内科的疾患は増加の一途をたどっている。しかし口腔粘膜疾患の原因は解明されておらず、明確な治療法もいまだに確立していない。今後口腔粘膜疾患に対する原因と治療法の確立が早急に求められている。これまでに多彩な生理作用を有する松果体ホルモンであるメラトニンが、骨や歯の形成を促進する事実を報告した。また唾液中にメラトニンの存在が確認されており、その存在意義についてはいまだ明らかではない。そこで、現在までに骨および歯の形成を促進することが明らかとなったメラトニンが、顎骨や歯と同じ口腔内にあり、口腔内を保護する役割をもつ唾液中に存在することから、その機能に対しても何らかの生理的作用を有している可能性に着目し、口腔粘膜におけるメラトニンの生理的作用を明らかにするとともに、粘膜創傷治癒促進に関与している可能性について検討を行うことを目的とした。ラット頬粘膜におけるメラトニン1a受容体(Mel1aR)の発現について免疫組織化学的手法を用いて検討を行った結果Mel1aRの発現が確認された。Mel1aRは存在が確認されている数種類のメラトニン受容体のうちもっとも機能的なものであることから、唾液中のメラトニンが口腔粘膜に対して唾液のもつ多彩な生理作用にも関与していることが示唆された。ヒト口腔粘膜上皮細胞において、in vitroでもMel1aRの発現が確認された。ヒト口腔粘膜上皮細胞の増殖に対するメラトニンの影響は認めず、ヒト口腔粘膜上皮細胞の分化において上皮細胞分化マーカーであるInvolucrin・Transglutaminaseでは発現量に差は認めませんでした。今後、ヒト口腔粘膜上皮細胞の分化に対するメラトニンの影響についてさらに検討を加えるとともに、in vivoにおいて口腔粘膜の創傷治癒に対するメラトニンの影響を詳細に検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔粘膜疾患の治癒過程におけるメラトニンの生理的役割を明らかにすることを目的に、平成23年度においては、口腔粘膜上皮細胞におけるメラトニン1aレセプターの発現およびヒト口腔粘膜上皮細胞を分離培養し、その増殖・分化に対するメラトニンの影響について分子細胞生物学的に検討を行い、ヒト口腔粘膜上皮細胞においてMel1aRの発現が確認され、ヒト口腔粘膜上皮細胞の増殖に対するメラトニンの影響は認めず、ヒト口腔粘膜上皮細胞の分化において上皮細胞分化マーカーであるInvolucrin・Transglutaminaseでは発現量に差は認めないという結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、ラット口腔粘膜上皮細胞の増殖・分化に対するメラトニンの影響について分子細胞生物学的に検討を行うとともに、ヒト口腔粘膜上皮細胞の分化に対するメラトニンの影響についてさらに詳細に検討を行う。また口腔粘膜創傷治癒に対するメラトニンの影響について検討するため、ハムスターおよびウサギで口腔粘膜創傷モデルを作製し、メラトニンを全身的または局所的に投与することにより、その創傷治癒を促進することが可能かどうかにつき検討を行う。口腔粘膜創傷モデルは、物理的な侵襲による創傷として、ハムスターの右側頬嚢を翻転させワイヤーブラシを用いて右側頬嚢粘膜に10x10 mmの範囲に基底膜まで達する傷を作製する。一方、化学的な侵襲による創傷として、同様にハムスターの右側頬嚢を翻転させ、頬嚢粘膜に10x10 mmの円形の濾紙に次亜塩素酸水溶液を浸透させたものを貼付し、薬剤性創傷を作製する。受傷後1,3,5,7日目に骨形成促進効果のみられる濃度のメラトニンを腹腔内に投与する。また、コントロールとして生理食塩水のみを腹腔内に投与する。物理的侵襲および化学的侵襲モデルとも、受傷後1,3,5,7、14、21日後に右側頬嚢を翻転させ、受傷部の長径(a,実線)および短径(b,破線)の積算にて面積を測定し、メラトニン投与群およびコントロール群を比較し、その治癒効果を判定する。ウサギは創傷作製部を下顎唇側前歯部歯肉に設定し、ハムスターと同様に行う
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度繰越金の1,826,794円は、平成23年度予定の実験結果が予想より早たため、実験動物と薬品・試薬等の使用量が少なく済み、かつ本年度行う動物実験の動物種が増えたことと、免疫組織学的検討に使用する抗体の数の増加およびin situ hybridizationを行うことが変更になったため、この繰越金を使用する。 今年度は、ラット口腔粘膜上皮細胞の増殖・分化に対するメラトニンの影響およびヒト口腔粘膜上皮細胞の分化に対するメラトニンの影響について詳細に検討を行うために、試薬・薬品や実験用動物を購入する。さらに口腔粘膜創傷治癒に対するメラトニンの影響について検討するため、ハムスターで口腔粘膜創傷モデルを作製し、メラトニンを全身的または局所的に投与することにより、その創傷治癒を促進することが可能かどうかにつき検討を行うため、同様に試薬・薬品や実験用動物を購入する予定である。
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