2011 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌細胞におけるEMTマーカーとしてのZyxinの発現および機能について
Project/Area Number |
23792399
|
Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
瀬川 英美 兵庫医科大学, 医学部, 研究生(研究員) (00553778)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | zyxin |
Research Abstract |
EMT(上皮-間葉転換:epithelial-mesenchymal transion)は,極性をもつ細胞同士が密に結合している上皮細胞が,その極性を失って運動性の高い間葉系細胞の形質を獲得する現象であり,癌細胞の浸潤,転移との関連性が注目されている.上皮細胞は,tight junction,adherence junction および desmosomeなどの細胞間接着構造を介して互いに細胞結合しており,このうちadherence junctionではcadherinが互いに結合してアクチンと共に接着構造を構成している.EMTではこの接着構造が消失することによりアクチンストレスファイバーが再構築され,細胞は上皮としての性質を失う.一方で,adherens junctionsに存在するアクチン調節関連タンパク質であるZyxinは,アクチン重合および再構成を促進することにより細胞の形態を変化させることからEMTとの関与が示唆されている.われわれは口腔ヒト扁平上皮培養癌細胞8種類を形態別に分類し,EMT関連遺伝子およびZyxinの発現について検討したところ,細胞の形態が敷石状から紡錘形に変化するにつれて,上皮系マーカーであるE-cadherinの発現が抑制され,間葉系マーカーであるN-cadherinの発現が上昇することが確認された.また,形態が紡錘形に移行するにつれてZyxinの発現が上昇することを確認した.以上のことから本研究では細胞の形態変化に着目し,アクチン細胞骨格の再構成に関与しているタンパクの一つであるZyxinについて,口腔ヒト扁平上皮癌細胞における発現および機能を解析することにより,EMTにおけるZyxinの役割を解析することを目的とする.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
形態別に分類した口腔ヒト扁平上皮癌細胞を用いて,増殖能,運動能および浸潤能を比較し,Zyxin発現との相関関係について検討するとともに,Rho family (Rho, Rac, CDC42)の発現をwestern blot法にて検討したところ,gradeが上昇するにつれて浸潤能および運動能が増加することが確認された,また,Rho family の発現量は.gradeが上昇するにつれて増加した.Zyxinの高発現が認められた細胞株に対してはsiRNAによるZyxinのノックアウトを行い,細胞増殖能, 運動能, 浸潤能をそれぞれcell count, scrach assay, invasion assayにて検討した結果,si-Zyxinはコントロールと比較すると,形態が紡錘形から多角形様に変化し,増殖能,運動能および浸潤能が抑制されることが確認された.さらには,si-Zyxinはコントロールと比較すると,ウェスタンブロットにてRac1およびCdc42の発現が抑制されることが確認された.一方で,apoptosisおよびcell cycleに変化は認められなかった.Zyxin低発現である細胞株にZyxinの遺伝子を連続的に導入したベクターをコンストラクションし,プラスミドによって遺伝子導入を行い,得られた細胞を使用して,Zyxinの発現量,細胞機能および形態的解析についてコントロールと比較検討した結果,細胞の形態に変化は認められず,増殖能,運動能および浸潤能は,Zyxin導入細胞は非導入細胞と比較すると抑制されることが確認された.以上のことから,研究の目的である口腔ヒト扁平上皮癌細胞におけるZyxinの発現および機能との関連性についての検討はおおむね順調に進展していると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の実験結果から,口腔ヒト扁平上皮癌細胞において,Zyxinの発現量と細胞の増殖能,運動能および浸潤能との間には相関関係が確認された.一方で,Zyxinの高発現が認められた細胞株に対して,siRNAによるZyxinのノックアウトを行い,si-Zyxinをコントロールと比較した結果と,Zyxin低発現である細胞株にZyxinの遺伝子を連続的に導入したベクターをコンストラクションしプラスミドによって遺伝子導入を行うことにより得られた細胞を使用して,コントロールと比較検討した結果では,Zyxinの発現量と細胞の機能の相関関係が正反対の結果となり,細胞によってZyxinの機能が異なることが示唆された.これらのメカニズムについては明らかな結果を得ていないことから,Rho familyの関与も含めてメカニズムの検討を行うことが今後の課題である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当講座においては,細胞培養,分子生物学的および免疫組織学的研究に必要な基本機器は当研究室に整っており,また,遺伝子解析などに必要な指導技術や機器類については,本学遺伝学講座および先端医学研究所と適宜,共同研究が可能である.そのため,前年度と同様に,実験に用いる試薬類の購入などを中心に研究費を使用する予定である.また,研究の多様化による人手不足を補うために,定期的にに研究補助を雇い,謝礼を支払う予定である.さらには,研究における知識の習得および研究成果の発表を目的として,国内外の学会出席,発表を行い,論文として投稿する予定である.
|