2011 Fiscal Year Research-status Report
口腔遺伝性疾患ならびに非症候性多数歯欠損症例の網羅的解析
Project/Area Number |
23792406
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
貴田 みゆき 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (80507442)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 口腔遺伝性疾患 / 遺伝子解析 / 網羅的解析 / 発症前診断 |
Research Abstract |
本研究では現在まで常染色体優性遺伝性エナメル質形成不全症(ADAI)・X連鎖遺伝性エナメル質形成不全症(X-AI)・遺伝性エナメル質形成不全症口腔遺伝性疾患(DGI)・多数歯欠損症の解析実績があり、左記全ての症例でで本邦初となる遺伝子変異の報告を行っているが、診断に至らない症例も多く有している。 歯科領域では、口腔内の遺伝性疾患についての情報不足から、歯の形成不全を原因不明の全身的・局所的要因によるものとして対処されることが非常に多い。また、遺伝的要因を疑う症例であっても、設備不足や遺伝子解析可能な施設との連携がとれず、確定診断に至らないケースが多かった。一般歯科臨床においても遺伝性を疑う症例に遭遇することは稀ではなく、審美的・機能的障害を伴う歯の形成異常や先天欠如は早期の診断・治療が重要となってくる。当該年度は関連施設で父と子に発症した口腔遺伝性疾患を疑う新たな家系を検出した。発端者の患児は永久歯32本中22本欠損、発端者の父は永久歯19本欠損が確認された。本症例に対し遺伝子解析を行った。口腔遺伝性疾患の発症パターンと原因遺伝子の相関が明らかになれば、発症機序の解明や新しい診断システムの開発が可能になる。また、歯胚発生から歯の石灰化に至る過程での原因遺伝子の発現パターンから、治療法の選択について有用な情報を得られることが期待される。申請者は従来の臨床像による分類から、原因遺伝子に基づく分類への再編成を視野に入れて検討している。さらに、分子レベルでの歯の発生メカニズムの解明、発症前診断をふまえた予防的治療を当面の課題とし、将来的には遺伝子治療を含めた病態治療への応用を目標としている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本邦における永久歯多数歯欠損に関する大規模な疫学調査が日本小児歯科学会学術委員会を中心として行われ、小児歯科学雑誌(第48巻・第1号 平成22年3月25日発行)で報告された。それによると、調査人数15,544人の10,09%に永久歯の先天欠如が確認されている。その中で5歯以上の先天欠如が0.87%に確認され、本邦においても遺伝性多数歯欠損症例を疑う例は少なからず存在することが視された。しかしながら、口腔遺伝性疾患はその症例数が少ないことから、国内での症例収集/研究にとどまらず、海外との情報交換が非常に重要となっている。現在韓国ソウル大学小児歯科准教授Jung-Wook Kimとの共同研究を行っており、口腔遺伝性疾患に関する新たな知見が2011年Oral Diseasesに掲載された。"S-K Lee, K-E Lee, Y-H Hwang, M Kida, T Tsutsumi, T Ariga, J-C Park, J-W Kim" Identification of the DSPP mutation in a new kindred and phenotype-genotype correlation. Oral Diseases 2011April Vol17(3) 314-319.さらに、当該年度は関連施設で父と子に発症した口腔遺伝性疾患を疑う新たな家系を検出した。発端者の患児は永久歯32本中22本欠損、発端者の父は永久歯19本欠損が確認された。本症例に対し遺伝子解析を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究では本邦のみならずアジア地域における口腔遺伝性疾患の原因究明も包括的に進めていく予定である。さらに発症パターンと原因遺伝子の相関が明らかになれば、発症機序の解明や新しい診断システムの開発が可能になる。また、歯胚発生過程における原因遺伝子の発現パターンから、治療法の選択について有用な情報を得られることが期待される。本研究ではさらに多くの罹患家系から血液サンプルの提供を受け、家系毎に個別化された情報を基に原因遺伝子とその病因変異をつきとめ、遺伝性の多数歯欠損の全容解明へ向けて包括的な取り組みを行う。近年のヒトゲノム研究の急激な発展により今後新たに検出される多数歯欠損家系や遺伝子診断に至っていない症例に対し、その臨床像・家族歴などから候補遺伝子の絞り込みを計り、遺伝子解析の迅速化を目指す。診断された家系で両親の希望があれば、歯の萌出前に診断し、齲歯の予防的なケアや口腔機能の早期回復を実施し、その予防効果の評価も試みたい。口腔遺伝性疾患の発症パターンと原因遺伝子の相関が明らかになれば、発症機序の解明や新しい診断システムの開発が可能になる。また、歯胚発生から歯の石灰化に至る過程での原因遺伝子の発現パターンから、治療法の選択について有用な情報を得られることが期待される。従来の臨床像による分類から、原因遺伝子に基づく分類への再編成を視野に入れて検討している。さらに、分子レベルでの歯の発生メカニズムの解明、発症前診断をふまえた予防的治療を当面の課題とし、将来的には遺伝子治療を含めた病態治療への応用を目標としている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
-
|