2011 Fiscal Year Research-status Report
変形性関節症軟骨におけるエストロゲン受容体を介した病的血管新生の制御機構の解明
Project/Area Number |
23792420
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
細道 純 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00420258)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 国際研究者交流 / ミシガン大学 / 顎関節症 / 性差医学 / 女性ホルモン / 顎関節円板 / エストロゲン / リラキシン |
Research Abstract |
日本人男性の9.9%、女性の17.3%が顎関節症状の経験をもつ。顎関節症の罹患率、症状の性差から、疾患の発症、増悪に対する女性ホルモンの関与が考えられる。エストロゲン、リラキシンが関節の可動性を高め、関節の機能障害に関わるとされる。顎関節疾患の解明において機能的構成要素である顎関節円板への視点は重要であるが、顎関節円板を構成する細胞のサブタイプ、性質が同定されていず、サイトカインやホルモンに対する細胞応答は明らかにされていない。本研究では、顎関節円板の構成細胞のサブタイプ、性格を明らかにすることを第一の目的とした。各サブタイプのエストロゲン、リラキシンへの細胞応答を比較することを第二の目的とした。本課題において、雌性マウスから顎関節円板細胞を採取、ヒト・テロメラーゼ遺伝子を強制発現させ、36クローンの不老化顎関節円板細胞の単離を行い、2種類のサブタイプに円板細胞が分類された。細胞形態、細胞増殖カーブ、また軟骨マーカーであるX型コラーゲン、線維芽細胞で多く産生される線維芽細胞特異マーカーのmRNAレベル、タンパク質レベルでの発現量から、顎関節円板細胞を軟骨細胞様の性質を備えた細胞と線維芽細胞様の性質を備えた細胞に分類した。マイクロマス培養にて、I型およびII型コラーゲンの発現量とそれらの比率について、軟骨細胞様細胞は優位にII型コラーゲンを産生した。エストロゲン処理下で、軟骨細胞様細胞は線維芽細胞様細胞に対しエストロゲン受容体ESR1、2と基質分解酵素MMP9、13の発現増加を有意に示した。一方、リラキシン処理下では、線維芽細胞様細胞が軟骨様細胞に対しリラキシン受容体Rxfp1、2とMMP9、13の発現増加を示した。顎関節円板の構成細胞は、軟骨細胞様細胞と線維芽細胞様細胞の2タイプに分類され、エストロゲン、リラキシンに対して各サブタイプが異なった細胞反応を示すことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究ではヒト・テロメラーゼ遺伝子を強制発現させた36の安定発現クローンの不老化顎関節円板細胞の単離を行い、2種類のサブタイプに顎関節円板細胞が分類されることを国内外ではじめて明らかにした。細胞形態、細胞増殖カーブ、軟骨マーカーであるX型コラーゲンとCartilage Oligomeric Matrix Protein、線維芽細胞で多く産生される線維芽細胞特異マーカーとバイメンチンの発現解析から、軟骨細胞様の性質をもつ細胞と線維芽細胞様の性質をもつ細胞に分類した。マイクロマス培養下で、I型およびII型コラーゲンの発現量とその比率から、軟骨細胞様細胞は優位にII型コラーゲンを産生することが明らかとなった。顎関節円板は女性ホルモンであるエストロゲン、リラキシンの標的組織であるが、エストロゲン処理下では、軟骨細胞様細胞は線維芽細胞様細胞に対しエストロゲン受容体ESR1、ESR2と基質分解酵素MMP9、MMP13の発現増加を有意に示した。一方、リラキシン処理下では、線維芽細胞様細胞が軟骨様細胞に対しリラキシン受容体Rxfp1、Rxfp2とMMP9、MMP13の発現増加を示した。したがって、顎関節円板の構成細胞は、エストロゲン、リラキシンに対して各サブタイプが異なった反応を示し、顎関節炎症の機序を担うことが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
変形性関節症、関節リウマチなどの関節炎症では、関節腔内の酸素濃度が大幅に低下し関節内に炎症因子の発現が誘導される。初年度の結果を踏まえ、以下のことを行う。1.顎関節円板における低酸素による炎症の惹起を担う細胞の特定。2.低酸素下における各サブタイプのエストロゲン、リラキシンへの反応性の検討3.低酸素下での軟骨基質の産生能の検討4.間歇的低酸素および継続的低酸素条件の違いによる炎症反応の変化
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物、試薬の購入、論文投稿費用に使用する。
|
Research Products
(6 results)