2012 Fiscal Year Research-status Report
ダウン症候群の早期発症型歯周炎におけるToll様受容体シグナルの解析
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23792426
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 旬平 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (70362689)
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Keywords | ダウン症候群 / 障害者歯科 / TLR / 歯肉線維芽細胞 / 歯肉上皮細胞 |
Research Abstract |
ダウン症候群(DS)は,早期に急速進行性の歯周疾患を発症しやすく,その原因解明が急がれる.これまでの研究により,DS由来細胞において,歯周病原細菌の一つであるPorphyromonas gingivalis のリポ多糖(LPS)で刺激をしたとき,自然免疫に関係するToll様受容体(TLR)2と炎症性サイトカインのmRNA発現が増加すること,DS由来歯肉上皮細胞では,多くのTLR分子およびTLRシグナル分子がmRNAレベルで恒常的に発現すること,DS由来細胞と非DS由来細胞では病原体に対するTLR分子自身の反応とそのシグナル反応の異なることを示し,TLRを介したシグナル伝達がダウン症候群の歯周炎重篤化に関与する可能性を示してきた.平成24年度は歯肉上皮細胞についてダウン症候群と健常者の間で差の見られた分子について,ノックアウト細胞の作製を試みたが,ダウン症候群由来の細胞について成長困難を認め,現在も作製を継続している.一方,歯肉線維芽細胞にも着目し,歯周疾患に及ぼす因子として歯肉肥大を高頻度に誘発する降圧薬であるニフェジピンの影響も含めて歯肉線維芽細胞への P. gingivalis の付着および侵入およびTLRの反応について検討した. 歯肉線維細胞において,ニフェジピン添加でHGF細胞ATP量の上昇を認め,付着・侵入菌数が上昇した.侵入菌数については,ニフェジピン添加により侵入菌数は増加したものの,有意な変化はみとめなかった.DS由来細胞と非DS由来細胞においても有意な差は認めず,TLRの発現については有意な変化をみとめなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である,ダウン症候群と健常者の間で差の見られた分子について,ノックアウト細胞を作製することについては,研究に資する細胞の作成には至っていない. しかしながら,線維芽細胞を用いてダウン症候群の歯周疾患に対する寄与度を計ることは可能であることから,同細胞を用いた実験により,多面的な研究ができ新たな知見が得られたことから順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
より研究に耐えうる歯肉上皮細胞のノックアウト細胞を作成を継続するとともに,形態額的観察や歯肉線維芽細胞を用いた実験により,ダウン症候群の歯周疾患への寄与度を計る.同時に寄与度の高い分子については,21番染色体遺伝子との関連を調べ,ダウン症候群歯周炎の原因解明とその治療法研究のための基礎的データを収集し,研究結果をまとめ発表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上皮細胞における反応を検索する必要があるため,細胞培養培地および添加剤に使用する.また計測用の蛍光物質,抗体およびPCR試薬,およびノックアウト細胞の作成に必要なsiRNA等に使用する. また成果発表に関する,旅費および必要経費に使用する.
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