2011 Fiscal Year Research-status Report
乳歯歯髄細胞由来iPS細胞を用いた遺伝子工学的手法による歯髄幹細胞の単離
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23792439
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
齊藤 一誠 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90404540)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 乳歯 / 遺伝子工学 / 歯髄幹細胞 |
Research Abstract |
歯科臨床において、抜去乳歯は子どもの記念に保存する以外はほとんど廃棄されている。しかし、バイオリサイクルの観点から、乳歯は歯髄幹細胞の有効な細胞供給元となり得る。そこで、本研究は、乳歯由来の再生医療への応用を目指し、乳歯歯髄幹細胞から1)遺伝子工学的手法を用いて、多能性幹細胞であるiPS細胞を樹立すること、2)世界に先駆けてiPS細胞から乳歯歯髄幹細胞へのin vivo分化誘導法を確立することを目的としている。本研究は2年間の研究期間において、交換期に抜去された乳歯の歯髄細胞を用いて、iPS細胞を作製し、これを基に生体内にて分化誘導を行い、歯髄幹細胞の樹立法の確立を目指す。平成23年度の研究成果については、以下の通りである。・乳歯歯髄細胞からiPS細胞の樹立抜去した乳歯の歯髄細胞は、線維芽細胞と神経細胞などが混在しているため、コラゲナーゼとトリプシンを用いて細胞を解離し、初代培養した。口腔内の由来の細菌などのコンタミンの可能性があるため、20%FBS/α-MEM培地に複数の抗生剤を組み合わせて、ほぼ確実な初代培養が行えるようになった。20~30日間継代・培養後に、4因子(OCT3/4, SOX, KLF4, L-MYC)のプラスミドベクターを導入した。効率を考え、electroporation systemにて導入作業を行った。約1か月後にiPS細胞を樹立後、シングルセルクローニングを行い、形態的に良好なクローンをピックアップした。さらに、RT-PCRにてcDNAを作製し、ヒトES細胞に関連する遺伝子発現があることを確認した。また、免疫不全マウスに樹立iPS細胞を移植し、奇形腫の生成の確認まで終了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の実施計画では、歯髄細胞の確実な培養法の確立と、iPS細胞の樹立であった。Neon Transfection Systemの導入によるところもあり、遺伝子導入効率が格段に良いことから、当初危惧していたiPS細胞樹立が順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
分化誘導を行う前に、歯髄幹細胞特異的プロモーターを持つプラスミドの作製に取り組んでいる。プロモーターがうまく働かない可能性もあるため、別プロモーターの作製にも取り組んでおり、本研究の遂行に全力を挙げる所存である。樹立したiPS細胞にプラスミドを遺伝子導入し、薬剤耐性feeder細胞上にてHygromycin Bを含む培地で培養し、組み換えiPS細胞を選別する。iPS細胞にpWEINHプラスミドをAmaxa社のnucleofectionシステムを用いて遺伝子導入する。本システムでは導入後数時間で遺伝子が発現するため、蛍光による遺伝子導入の確認が可能となる。組み換えiPS細胞をヌードマウス皮下に移植し、奇形腫を作製する。次いで奇形腫を初代培養に移し、neomycin (G418)を含む培地にて培養後、歯髄幹細胞を選別する。歯の形成にはBMP-2(bone morphogentic protein-2)や GDF-7(growth differentiation factor-7)等の成長因子が必要とされる3)。そこで、iPS細胞の歯形成細胞への分化を加速させるため、組み換えiPS細胞とBMP-2+ GDF-7を含ませたバイオマテリアルとを混合し、これをヌードマウス皮下に移植する。移植細胞は皮下内で急速に増殖しながら、成長因子の影響により歯形成細胞が奇形腫の中で分化するものと考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は、物品費として、試薬等の消耗品と参考図書の購入を予定している。人件費・謝金として、遺伝子発現解析の研究補助費を予定している。旅費として、研究打ち合わせとIADRでの成果発表を予定している。その他、学会参加費を予定している。
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