2011 Fiscal Year Research-status Report
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23792452
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
岩崎 てるみ 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (60515609)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 唾液 / フッ化物 / 幼児 / フローインジェクション分析法 |
Research Abstract |
平成23年度は唾液中フッ化物(F)の動態を明らかにする目的で、低濃度Fと人工唾液中におけるタンパク質およびカルシウムとの関連性を検討した。なお、溶液中遊離型Fイオン濃度の比較検討には、幼児唾液中遊離型Fイオン濃度と低濃度F添加後の幼児唾液中遊離型Fイオン濃度(岩崎てるみ,内川喜盛 他:フローインジェクション法による幼児唾液中フッ素イオン濃度の測定,小児歯誌,47:760‐766,2009.)の結果を使用した。Fの期待される齲蝕予防機序は、唾液中に0.014~0.02ppmの低濃度のFイオンが遊離型として持続的に存在することで発現される。しかし、低濃度Fの唾液中動態にはいまだ不明な点が多く、幼児の齲蝕予防に最も安全で効果的な使用F濃度は明確にはされていない。そこで、本年度は研究計画より以下のことを検討し、AADRにてその研究成果発表を行った。1.幼児唾液中遊離型Fイオン濃度をフローインジェクション分析装置を用いて測定し、口腔内でのFイオンの動態を明らかにする。2.添加Fの減少に関係する唾液中成分の存在を明らかにし、唾液中遊離型Fイオン濃度の変動理由を明確にする。 研究の結果、タンパク質溶液中に添加された低濃度Fは減少したが、実際の幼児唾液中と比較して、その減少率は小さい値を示した。そこで、より添加Fの減少に関連する物質を明らかにする目的で、カルシウムをタンパク質溶液に添加したところタンパク質のみのときと比較して添加Fは大きな減少率を示した。このことから添加Fの減少には溶液中におけるタンパク質とカルシウムの相乗作用が示唆された。今後、添加Fの唾液中動態の減少理由を明確にすることで、齲蝕予防に効果的なFイオン濃度を口腔内で維持し続けるために必要な何らかの物質やイオンを発見することが可能であれば、幼児に対して現在よりもさらに安全で効果的なFの応用法が可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼児唾液中のFイオン濃度については、定期的に保育園にて園児の唾液採取を継続しているため、幼児唾液中Fイオン濃度の変化について測定し検討する環境は常に整っている。また、平成23年度に検討した添加Fと唾液中成分のタンパク質とカルシウムの関連以外についても平成23年度の結果をもとに、引き続き平成24年度にナトリウムとカリウムを加え検討を開始している。添加Fと口腔内における齲蝕原性細菌との関連性については平成24年度以降に行っていく予定である。よって、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
幼児唾液については施設の協力を得て引き続き唾液試料を採取し、唾液中遊離型Fイオン濃度の測定と変化を確認し、さらに齲蝕原性細菌との関連性も検討する。幼児唾液採取に関しての研究環境はすでに整っているため問題はない。また平成23年度の研究結果から、唾液中遊離型Fイオン濃度の動態を明らかにするためには、第一に、測定値に影響を与えると考えられる成分を除外した人工唾液を用いて、唾液中成分のひとつひとつと溶液中に添加した低濃度Fとの関連性を詳細に検討する必要があると考えている。唾液中の成分は非常に複雑であるため、実際の幼児唾液を使用して添加F減少の原因を検討することは、現在の段階では困難であると思われる。 いずれのF濃度測定に関しても、長期にわたりフローインジェクション分析装置を用いて行う上、超低濃度の測定であるため、常に装置の安定性、再現性を確認し維持することが正確な測定値を得るために非常に重要である。研究より得られた結果に関しては、日本国内外の学会において発表を行い、また明らかな知見が得られた時点で論文を作成する。また、近い将来的には、臨床応用できるFの使用方法や、より効果的にFを使用するための製剤などの開発につながる知見を得ることを目標とし平成24年度は研究を継続する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に引き続き、調査開始1年後の試料の採取と測定を行う。また必要に応じ被験児の追加を行う。被験児の追加を行った場合、ベースライン調査を行い、調査開始1か月、3か月、6か月後の試料採取と測定、調査開始1年後に試料の採取と測定を行う。人工唾液中における低濃度Fイオンの動態も引き続き観察し検討する。1.幼児唾液を用いた研究(洗口開始1年後の調査項目):1)口腔内診察(WHOの基準)、口腔衛生習慣、フッ化物使用状況などに関する再質問紙調査 2)刺激唾液中のFイオン濃度の測定 3)唾液中ミュータンスレンサ球菌量レベルの測定 4)唾液中の菌種とミュータンスレンサ球菌との割合の測定 5)唾液中乳酸桿菌レベルの測定2.人工唾液を用いた研究:人工唾液中における低濃度Fイオンの動態の検討3.結果の集計・解析4.学会で報告、学会誌への論文投稿を行うまた、平成23年度の研究はおおむね順調ではあるが、齲蝕関連細菌については研究はされていない。そのため当初予定していた平成23年度の研究費を、平成24年度に使用する予定である。
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