2011 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原細菌によるDC-SIGNを介したクロスプライミング誘導機構の解明
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23792464
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
多田 浩之 東北大学, 歯学研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (70431632)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 免疫学 / 歯周炎 / IL-33 / CTL / 細胞・組織 / サイトカイン |
Research Abstract |
成人性歯周炎は、歯周病関連細菌Porphyromonas gingivalisによる慢性感染症である。本菌は、歯肉上皮細胞に侵入することにより歯周病の病態形成に関わることが示唆されている。細胞内に侵入した細菌を排除するには、細胞傷害性CD8+T細胞(CTL)の誘導が必要である。近年、感染した上皮細胞からIL-33, IL-25 (別名IL-17E)およびthymic stromal lymphopoietin (TSLP)などのサイトカインが放出されることにより、CTLの分化誘導が促進されることが明らかにされている。 そこで、P. gingivalisにより上皮細胞からIL-33, IL-25およびTSLPが誘導される可能性について検討した。全菌体をヒト歯肉上皮細胞に刺激した結果、IL-33, IL-25およびTSLP mRNA発現が著明に誘導されたことから、IL-33誘導機構について詳細に検討した。IL-33誘導作用に関わる成分について、全菌体、培養上清ならびに同菌を構成する成分である線毛、リポタンパク質ないしリポポリサッカライド (LPS)に分類し、それぞれを細胞に刺激した結果、全菌体と培養上清の刺激によりIL-33発現が著明に亢進されたのに対して、線毛、リポ多糖およびLPSの刺激による同誘導作用はみられなかった。次に、同誘導作用は本菌から生産されるシステインプロテアーゼであるジンジパインが関わる可能性について検討した。その結果、全菌体による歯肉上皮細胞からのIL-33誘導作用は、ジンジパイン阻害剤を処理した細胞では完全に消失したことから、ジンジパインが上皮細胞からのIL-33誘導に関わることが明らかとなった。 これらの研究成果からP. gingivalisにより上皮細胞から生産されたIL-33が、樹状細胞を介したクロスプライミング誘導を増強させる可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画に基づき実施した結果、以下の研究成果を得た。マウス樹状細胞(DC)をP. gingivalis全菌体で刺激すると、モデル抗原である卵白アルブミンによりDCに誘導されるMHCクラスI-OVAペプチド複合体の発現(クロスプレゼンテーション反応)が増強することを見出した。加えて、同DCのCD40およびCD86発現が著明に上昇していた。効率的なクロスプライミングの誘導には、これら2つのシグナルが必要であり、P. gingivalisによりクロスプライミングが誘導されることが示唆された。 さらに当初の計画では予測されなかった以下の研究成果を得ることが出来た。歯周組織にP. gingivalisが侵入する際、歯肉上皮細胞は物理的バリアとして機能するだけではなく、同菌の刺激に応答することにより感染防御に関わる可能性について検討した。ヒト歯肉上皮細胞を全菌体で刺激した際に誘導されるサイトカインについて検討した結果、Th2応答を誘導するIL-33, IL-25およびTSLPが強力に誘導されることを見出した。これらのサイトカインはクロスプライミングの誘導を増強させることが注目されていることから、上皮細胞と樹状細胞間のクロストークが歯周炎における免疫賦活に重要であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
P. gingivalisによるIL-33誘導作用が同菌より生産されるプロテアーゼであるジンジパインにより担われることについて、ジンジパインを欠損するP. gingivalis株(既に長崎大学大学院歯学研究科、中山博士より分与を受けている)を用いて詳細な検討を行う。また、同作用が上皮細胞におけるジンジパインのレセプターと目されるprotease-activated receptor 2 (PAR2)を介する可能性について、シグナル伝達阻害剤を用いた解析を行う。加えてPAR2を介したシグナル伝達機構について、RNAi法を用いた実験を行う。ヒト歯肉上皮細胞にPAR2 siRNAを処理すると、PAR2が特異的にノックダウンされることを既に確認している。以上の研究手法を駆使し、今後の研究を一層推進させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究が効率的に推進したことにより発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)