2011 Fiscal Year Research-status Report
歯周炎症抑制の標的蛋白としてのカベオリンー1と可溶性gp130の有用性
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23792477
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山口 知子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90580267)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 歯周病 / 慢性炎症 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
IL-6は歯周病の炎症病態を増悪させるサイトカインであり,これまで,歯周病病巣における歯肉線維芽細胞の動態について,IL-6の作用を中心に解明してきた。これまで,IL-6は歯肉線維芽細胞の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)やカテプシン産生を亢進することが明らかにされている。本研究では,これまで得られた知見をもとに,細胞内標的分子として細胞膜蛋白カベオリン-1,細胞外標的分子としてIL-6刺激伝達分子である可溶性gp130(sgp130)に着目し,その炎症抑制効果を検討する。最終的にはIL-6をとりまく歯周炎症のメカニズムを解明し,その制御を目指すことを目標として研究をすすめてきた。平成23年度における研究の実施状況を報告する。1.歯肉線維芽細胞におけるIL-6誘導性カテプシン分泌にカベオリン-1が及ぼす影響の解析IL-6は,歯肉線維芽細胞の前駆体カテプシンBとLの分泌を促進した。カベオリン-1発現を抑制すると前駆体カテプシンBとLは減少した(p<0.05)。2.歯肉線維芽細胞におけるIL-6誘導性カテプシン分泌の刺激伝達系におけるカベオリン-1の影響p42/44MAPKを阻害すると前駆体カテプシンBの分泌のみ減少した(p<0.05)。JNKを阻害すると前駆体カテプシンBとLの両方の分泌が抑制された(p<0.05)。 以上のことから,ヒト歯肉線維芽細胞におけるIL-6誘導性のカテプシンBとLの産生にはカベオリン-1が関与しており,総カテプシンBとLの細胞内蓄積における刺激伝達系にはこれまでの報告と同様にJNKが,分泌にはJNKのみならずp44/42MAPKも関与していることが明らかとなった。このことは,IL-6がもたらす結合組織での炎症メカニズムの解明につながるとともに,将来のカベオリン-1を標的としたIL-6による歯周病悪化を抑制制御し得る可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IL-6によって前駆体カテプシンの分泌が亢進されることだけでなく,カベオリン-1が関与していること,またその刺激伝達系まで明らかにすることができたことから,当初の予定通り進展していると言える。 本研究では,これまでのin vitroの研究成果をもとに発展させた研究内容であり,歯周炎症抑制という目的を達成するためには,今後,in vivoでの研究条件を整え,研究をスタートさせる必要がある。より臨床サンプルに近い状況にするべく慢性微弱炎症モデルを構築して,より確実に目的達成を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験を行うにあたって,炎症を発症させる歯周病原細菌について為害性を検討する必要があり,適切な条件設定を決定しなければならない。C57BL6を用いた歯周病モデルの構築が難しい場合には,マウスの口蓋歯肉および皮下に注入する歯周病原細菌の量を調整する。また、細菌の投与間隔,投与期間を調整しながらその構築の成否を検討する。 為害性を防ぐことができない場合にはそれに代わる方法を検討することも必要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の実験結果をもとに,平成24年度から臨床サンプルの解析を開始し,in vitro実験系およびin vivo実験系での解析を並行して行っていく。 今後の研究方策として,マウスの歯周病モデルを構築するための予備実験を行い,その後は動物実験へと移行していく予定である。試薬や器具などの他,動物飼育などに関する物品が必要となる。また,本年度の研究結果を報告するため学会への参加も予定している。
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