2011 Fiscal Year Research-status Report
口内炎モデルを用いた創傷治癒過程促進のメカニズムの解析
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23792496
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
細川 亮一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40547254)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / 亜鉛製剤 / 上皮細胞 |
Research Abstract |
本研究の目的は、亜鉛製剤であるポラプレジンク(商品名 プロマック)ならびに半夏瀉心湯による口内炎創傷治癒の促進過程の機序を明らかにすることである。本年の研究では特に上皮系の細胞に対して亜鉛製剤がどのように作用するかについて検索を行った。 現在は腎上皮細胞であるHEK293細胞を用いて培養実験を開始した。現在行っている実験は、亜鉛製剤を加えた場合の細胞動態について、細胞遊走能をスクラッチテストにて、細胞増殖能をBrdUテストにて、また細胞骨格についてアクチンフィラメントの免疫染色を行っている。 先ず、スクラッチテストでは亜鉛製剤添加群において細胞間のギャップを埋める速度が速い傾向が認められた。速度にばらつきがあり、まだ、有意差を認めるまでには至っておらず今後サンプル数を増やし検討する必要がある。また、その際、細胞増殖能が亜鉛添加群で活性になっていることも考えられる為、BrdUテストを行って細胞増殖能の比較を行ったが、亜鉛製添加群における細胞増殖能の増加は、有意差、傾向ともに認められなかったが、N数が少ないため今後、更なる実験が必要である。スクラッチテストにて添加群と非点か軍においてスクラッチの先端の細胞の形態が異なるように見えたため、アクチンフィラメントの走行を免疫染色的手法にて確認を行った。現時点ではまだN数が少ないが、アクチンフィラメントの発現パターンに変化が認められた。添加群では、アクチンフィラメントの発現が細胞質内に均質に発現しており、発現の局在等の変化は認められなかった。今後、発現量についての解析が必要である。 臨床的に創傷治癒においていは、上皮化の促進は疼痛の軽減という側面から重要な項目である。現在まで、亜鉛製剤による上皮化促進のメカニズムは解明されておらず、本研究は臨床的に重要な意味を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成23年に発生した東日本大震災の影響で、実験施設が被災し実験環境を再構築する為に時間を要してしまった。また、現在も震災の影響で、我々の使用しているビルの耐震工事の関係で、実験室の引っ越し等を余儀なくされており、集中して実験出来る環境を整えるまで、しばらく時間を要してしまう。主に環境要因によって実験の進捗状況が遅れているが、本年度は環境整備も整うため本来の実験計画に移行出来ると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実験環境の整備をしつつ当初の目標に到達出来るよう実験計画を再検討する。特に本年行うことが出来なかった動物実験の開始を念頭に環境を整備していく。また、細胞培養の環境はほぼ整ったため、培養系の実験を優先的に行いIn vitroの実験結果の解析を押し進め、亜鉛製剤の上皮細胞への作用について明らかにしてくい。培養系では特に現在進めている細胞遊走能試験キットを用いて厳密に定量化を行う。また、漢方薬である半夏瀉心湯についても同様に実験を行いその効果と薬理作用について細胞動態を中心に検索を行う。動物実験においては、エタノールによる人工的口内炎発症モデルを用いて、亜鉛製剤並びに半夏瀉心湯の作用効果が最大である至適濃度について検討を行い、実際の創傷治癒過程について検索を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年は、実験関連物品の購入も少なかった為、本年は先ず、培養系の材料について購入を勧めていく。特に、細胞遊走能テスト、BrdUテスト関連の試薬、並びにタンパク質の発現量を検索するためにウェスタンブロット関連の試薬を購入する予定である。また、動物実験関連の物品ならびに抗がん剤などの製剤と動物の購入と飼育について研究費を使用する物と考えられる。また、引き続き亜鉛製剤の購入と同時に漢方薬である半夏瀉心湯を購入し細胞培養レベルでの添加実験を行う。また、学会発表については、5月の口腔衛生学会ならびに10月にメルボルンで行われる国際学会であるInternational Association for Disability and Oral Healthにて発表を行う予定で去る。
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