2011 Fiscal Year Research-status Report
歯科衛生士における医療安全教育システムの開発と評価
Project/Area Number |
23792501
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小原 由紀 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (00599037)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 医療安全 / インシデント / 歯科衛生士 / 質的研究 |
Research Abstract |
平成23年度については、歯科衛生士養成カリキュラムにおける医療安全教育の実態とその課題を明らかにすることを目的として、下記2つの調査を実施した。1.歯科衛生士養成機関における医療安全教育に関する調査 平成23年10月、歯科衛生士養成校152校に、医療安全教育に関する質問調査票を郵送にて配布し、73校より回答があった。調査項目は、医療安全教育の実施内容、カリキュラムの位置付け等についてである。回答者のうち、歯科衛生士養成課程における医療安全教育は不十分であると回答した割合が7割近くにのぼった。また、医療安全教育の具体的内容に関しては、用語の整理、安全の意味や捉え方など、知識の獲得にとどまるものが多くを占めていた。現在、データのより詳細な分析が進行中であり、平成24年度に関連学会にて発表予定である。2.口腔保健学生に対するインタビュー調査 質的研究手法を用いて、口腔保健学科学生の臨床実習におけるインシデント経験を通した学びについての検討を行うことを目的としたインタビュー調査を実施した。具体的には、4年制の歯科衛生士教育機関に在籍する4年生のうち、研究への参加に同意が得られた7名を対象に、個別による半構造化面接を一人当たりおよそ30分間実施した。インタビューの内容は、インシデント発生の状況とその時の感情について、インシデント経験から学んだこと、医療安全教育について感じていること等からなる。事前に被験者より同意を得た上で、ICレコーダーを用いてインタビュー内容の録音を行い、逐語録を作成した。逐語録から抽出したテキストデータは、質的データの分析手法を用いて分析を行い、口腔保健学生の臨床実習における医療安全に対する学びのプロセスを明らかにする。現在、データの分析はほぼ完了し、現在、関連学会への発表および論文投稿のための準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、これまで明らかにされてこなかった歯科衛生士教育における医療安全教育の実態把握を行った。必要な調査はすでに完了し、データの分析および関連学会への発表のための準備を進めている。 歯科衛生士養成機関を対象とした量的研究では、歯科衛生士教育における医療安全教育の位置づけとして、基本的な知識の修得に重点が置かれ、より実践に即した学習の機会は少なく、体系だった教育システムの構築が必要であることが示唆された。また、口腔保健学生を対象とした質的研究においては、臨床実習におけるインシデント発生時の学びのプロセスを明らかにした。学生はインシデント経験を通して、体験を通した学習の重要性を認識していた。この知見は、これまで明らかとされてこなかった歯科衛生士教育における医療安全教育の実態を明らかにする意味でも非常に重要であると考えられる。 今後、実態調査を通して得られた課題をもとに、より歯科衛生士教育に特化した医療安全教育システムの開発に向け、現在検討を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度については、平成23年度に実施した研究に対する成果を関連学会にて発表するための準備を進める。具体的には学会発表終了後に、学会誌への論文投稿を進め、本研究課題により得られた知見を、より広く社会に発信する予定である。 また、平成23年度に実施した調査研究では、現状把握と課題の抽出にとどまっているため、平成24年度においては、より実践的な医療安全教育システムの構築に向け、研究協力者との連携を図り、ディスカッションを進める中で、試験的ではあるが、歯科臨床に即した医療安全教育プログラムを実施し、その有効性を評価する予定である。 医療安全教育においては、医療機関および教育機関等においても積極的に実施されているため、実際に医療安全教育を実施している医療専門職に対するヒアリングの実施も検討している。 本研究課題は、平成24年度で終了予定のため、教育効果を縦断的に評価することは難しい。そのため、実施後に学生および教員からの得られた評価をもとに、その有効性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
関連学会における研究成果の発表および、医療安全教育の実施に向けた準備に、研究費を使用する予定である。具体的には、関連書籍の購入、論文投稿にかかる経費、学会参加のための旅費などである。 また、実践的な教育システムの検討のため、臨床現場において医療安全教育を実施している関係者に対してヒヤリングを行うなど、情報収集を実施するための費用に充当する予定である。
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