2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23792511
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉仲 正記 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40403034)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 味覚 / 口腔立体認知能 / 長寿 / QOL |
Research Abstract |
口腔感覚の低下は「味わい」,「歯ごたえ」,「温かい,冷たい」などの食の楽しみが低下するだけでなく,生活習慣病に繋がることが考えられる.食物を美味しく食べるということは,ヒトが生きていく上で非常に重要である.食事には食塊を認知し,咀嚼し,味わい,そして嚥下するといった一連の動作が必要である.味覚や触覚,温度感覚は食事の楽しみや誤嚥防止において非常に重要な役割を果たしているが,加齢によりこれらの感覚は低下し,様々な問題が現れる.一方,加齢により中枢の認知機能も低下するが,口腔感覚と中枢の認知機能の低下との関連についての報告はない.味覚試験(全口腔法):呈味物質を口腔内全体を使って味質を判断する.試験溶液は倍数希釈系列で5段階に調整されたもの(各1ml)を用いる.検査する味質は四基本味,すなわち甘味(ショ糖),塩味(食塩),酸味(酒石酸),苦味(塩酸キニーネ)の4種とし,苦味を最後とする以外はランダムとする.四基本味質のうち1味質について上昇法,すなわち濃度の低いものから順に口腔内に散布し,認知閾値(味質を正確に判別できる最小濃度)を判定する.被検者には味質回答表より回答を指示する.平成23年度はこれまでの70歳高齢者約1000名のデータを分析し,若年者と比較し,70歳高齢者において味覚閾値が低下し,かつ性差により味覚の低下に特異性が認めらることを,日本老年歯科医学会にて報告した.また,同学会にて高齢者の認知機能と口腔立体認知能との間に有意な相関関係を認められることを報告した. さらに,東京および大阪の80歳高齢者約1000名を対象に口腔感覚の試験を行い,70歳高齢者の味覚閾値との比較をするため,現在データ解析中である.さらに70歳高齢者における味覚閾値の上昇に関わる因子について,分析中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ研究目的に沿って順調に進んでいると思われる.今年度の目標は東京(板橋地区,多摩地区)および大阪(伊丹市,朝来市)の80歳高齢者約1000名を対象に口腔感覚の試験を行うことであったが,ほぼ目標どおりの対象者に対して味覚試験および口腔立体認知能試験を行うことが可能であった.MoCa(Montreal Cognitive Assessment)はNasreddineらによって作成された認知機能検査であり,総合得点30点満点にて行うが,この試験についてもほぼ全ての対象者に対してデータが取得できた.26/27点を認知障害のカットオフ値と報告されているが,カットオフ値については検討する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度と同様に研究を推進していき,かつ学会発表を行っていく.認知機能が低下していく90歳高齢者ではコミュニケーションがとりにくいことから,データの採取が困難となったり,調査時間が長くなることが問題となる可能性がある.また,90歳高齢者自体が少なくなることや,移動が困難となることから調査対象者が当初の目的数である1000名を達成することが困難になる可能性がある.対策として,可及的に多くの調査対象者を募ることや,可能な限り訪問してデータを取得することで対応する.そのため,移動費等の調査費の比重が多くなる可能性がある.中間報告として,味覚低下に関連する因子について,学会発表(6月つくばで開催される日本老年歯科医学会にて)を行う予定である.また,MRIや脳磁図などの追試験が必要と考えられる場合は同意の下対応する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度と同様に,調査費(調査移動費,調査器具輸送費,実験補助,資料整理)の比重が多くなることが予想される.また,学会発表の準備費と旅費,および資料収集や情報収集のための学会参加費として使用する予定である.当初の研究計画のとおり,文献管理ソフト(Endnote X3 Windows USACO)および,ポスター製作ソフト(Creative Suite 4 Master Collection Adobe)についても購入予定である.
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