2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23792521
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
渡部 芳彦 東北福祉大学, 健康科学部, 准教授 (20360068)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フィンランド / 口腔ケア / 歯科衛生士 |
Research Abstract |
今年度は、高齢者介護・訪問歯科診療に関わる歯科衛生士への、介護現場における口腔ケアの課題に関する聞き取り調査。A県歯科医師会が新たに設置を進めた「訪問歯科・救急ステーション」と「訪問歯科相談室」について、その設立の趣旨並びに経緯についての調査を行った。また、フィンランド共和国における公的保健医療サービスの中で展開される高齢者口腔ケアの在り方と、そのための口腔衛生士教育について、現地の担当者に予備的に聞き取り調査を実施した。 要介護高齢者の口腔の課題は多く、適切に歯科医療関係者に情報が伝達される必要がある。しかし、本人に歯科受療の意志・意欲がない事例や、家族、介護関係職種が適切に歯科関係者に連絡を取って改善を促すことが様々な事情からできない事例が依然として少なくない。しかし、そのような課題は、歯科医師の職能団体である歯科医師会においても検討されており、歯科訪問診療に関係する情報共有と各種問い合わせに対処するワンストップサービスの窓口として、上述の体制が今年度末に整備された。前者は、地方都市の中核病院に設置が準備され、後者は、県庁所在地の県歯科医師会館内に設置され、専門職員として歯科衛生士1名が新たに配置されている。 これまでの調査から、高齢者の介護や看護の現場において、口腔衛生や咀嚼・嚥下をはじめとする口腔機能の低下の問題に対処するため、歯科医療関係者が適切に関与する必要があるが、依然として課題が多いことが明らかとなった。そして、その問題意識は歯科医師の職能団体の中で共有され、組織的な解決の取り組みが推進されている。今後は、この体制が、歯科衛生士を巻き込んだ形で有機的に営まれるようにすることや、関係職種を含む口腔の「ケア」をキーワードとするネットワーク形成が、課題改善のために必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、当初の研究計画を予定通りに遂行することが困難な状況となった。すなわち、発災直後からの近隣地域住民の避難所運営や支援活動を優先的に行う必要が生じたこと、直接の影響として研究室の全ての書架が倒壊したために、その復旧に多くの時間を要したこと、発災直後に申請した単年度研究事業による被災者雇用も意図した「津波被災地の高齢者福祉」に関する研究事業(平成23老人保健健康増進等事業)に優先的に取り組む必要性があったことで、本研究は後回しにせざるを得ない状況となった。 その結果として、達成度の自己評価としては上記の区分としたが、平成24年度および25年度のエフォートを調整することで、当初の到達目標を達成可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
下記の4つの課題について、適宜順序を入れ替えて効率的に調査を行う。1)介護予防教室の口腔ケアプログラムに関する調査:市区町村において、介護予防制度における「口腔機能の向上」プログラムの実施にかかわる関係団体の(1)運営状況と歯科衛生士の関与の内容、(2)その実施にかかわる課題、(3)各団体の連携状況を訪問調査によって明らかにする。2)歯科医療団体・歯科医療機関における口腔ケア支援機能の調査:本年に継続し、歯科医師会、歯科衛生士会などが職能団体としてどのような形で地域の口腔ケアに貢献しているかを調査・分類し、口腔ケアにおいて先駆的な取り組みを実施している団体について、歯科衛生士の役割に注目して(1)地域連携の形式(組織評価)、(2)連携先と連携方式、(3)サービス対象者(地域住民)の範囲、(4)歯科衛生士の養成・現任教育におけるソーシャルワークの学習状況を分析する。3)地域包括支援センターの口腔ケア支援機能の調査:地域包括支援センター職員に対して、下記の内容についての聞き取り調査を実施する。(1)歯科医療機関との連携状況、(2)介護予防特定高齢者の抽出状況、(3)歯科衛生士の関与、(4)介護予防プログラムの実施につなげる支援における課題。4)シームレスケアの調査:日本国内で「医療と介護」のシームレスケアを先駆的に行っている地域において、その中で口腔ケアの課題がどのようにシステムに組み込まれて解決されているかを、聞き取り調査等によって明らかにする。また、シームレスケアにおいて先進的な取り組みがみられるフィンランドの自治体において、その主任歯科衛生士や歯科部長が果たす機能を比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度研究を行う中で、新たにスタンドアローンのパーソナルコンピュータの必要性が生じたが、「達成度」に述べた理由で購入することが困難であったため、次年度に繰り越すこととなった。今後、必要なパーソナルコンピューターを新たに検討しなおした上で購入する。そこで、次年度の予算(直接経費)は合計1,075,830円(90万円+前年度繰り越し175,830円)となるが、その内訳を物品費335,830円、旅費600,000円、人件費・謝金100,000円、その他40,000円とする。
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Research Products
(2 results)