2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23792521
|
Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
渡部 芳彦 東北福祉大学, 健康科学部, 准教授 (20360068)
|
Keywords | 国際情報交換 / フィンランド / 口腔ケア / 歯科衛生士 / 地域連携 |
Research Abstract |
口腔ケアの意義とその重要性は広く認知されつつあるが、その実践には様々な課題がある。本研究では、歯科衛生士が地域における歯科医療と福祉をつなぐ役割を担うことが、既存のリソース(歯科医療機関)を活用したよりよい歯科医療と高齢者福祉の実現に寄与するとの考えに基づき、先駆的な事例の研究を含めた歯科衛生士による歯科医療ソーシャルワークの機能の究明を目指している。平成24年度は宮城県在宅歯科医療連携室整備事業によって宮城県歯科医師会が推進した事業の状況と、4年生大学における歯科衛生士の養成教育におけるソーシャルワークに関する予備的な調査を行った。 「みやぎ訪問歯科相談室」は、宮城県歯科医師会が県内における口腔ケアの情報拠点と位置づけて、平成24年立ち上げた窓口である。日常的な口腔ケアや歯科治療に関する問い合わせに対応するワンストップサービス窓口として設置が進められた。設置にあたっては、歯科医師会が県内の歯科医師会会員を中心に周知にあたり、また、高齢者施設や事業所への周知を進めた。平成24年度在宅歯科医療連携室整備事業実施報告書によると、電話相談件数は52件でその内訳は、訪問歯科診療の依頼が30件、訪問歯科診療相談が17件であった。また、相談後の対応としては訪問診療実施機関紹介が28件、診療までの流れを説明し訪問歯科診療依頼するかをご家族等と検討していただくが16件であった。このように本窓口が受けた問い合わせ内容の多くは「診療」に関するものであり、日常的な口腔のケア方法や、歯科衛生士による専門的な口腔ケアの実施要請等は非常に少ない。口腔ケアの推進は、訪問歯科診療を行う歯科医療機関を核として、そこに在籍する歯科衛生士が治療の前後に継続的な介入を行うことによる実現を目指すべきと考えられた。 また、4年生大学の歯科衛生士の要請教育については、2校を訪問して予備的な調査を行い情報を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災による、追加的・優先的業務の影響(平成23年度老人保健健康増進等事業の実施、平成24年度社会福祉推進事業の実施)が尾を引く形で、本研究の推進は若干遅れている。今年度は、計画上の最終年度であり、十分な時間と労力を確保して研究を進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
下記の4つの課題について調査を行う。 1.介護予防教室の口腔ケアプログラムに関する調査:市区町村において、介護予防制度における「口腔機能の向上」プログラムの実施にかかわる関係団体の1)運営状況と歯科衛生士の関与の内容、2)その実施にかかわる課題、3)各団体の連携状況を訪問調査等によって明らかにする。 2.歯科衛生士の養成・現任教育におけるソーシャルワークの学習状況を分析する。 3.地域包括支援センターの口腔ケア支援機能の調査:地域包括支援センター職員に対して、以下の内容についての聞き取り調査を実施する。1)歯科医療機関との連携状況、2)介護予防特定高齢者の抽出状況、3)歯科衛生士の関与、4)介護予防プログラムの実施につなげる支援における課題。 4.シームレスケアの調査:日本国内で「医療と介護」のシームレスケアを先駆的に行っている地域において、その中で口腔ケアの課題がどのようにシステムに組み込まれて解決されているかを明らかにする。また、シームレスケアにおいて先進的な取り組みがみられるフィンランドの自治体において、その主任歯科衛生士や歯科部長が果たす機能を比較する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額の合計が297080円となったのは「現在までの達成度」欄に記した理由で、本研究に十分な時間を確保できなかったためである。上記の2事業は既に完了したので、次年度は本研究の遂行に必要な時間を確保することができると考える。そこで基本的には当初の計画に沿って研究費の執行を行うが、次年度使用額の297,080円は、調査旅費等に組み入れ、調査研究進捗の遅れを回復させたいと考える。すなわち、次年度直接経費の概算120万円の内訳は、物品費が15万円、国内・海外旅費が80万円、人件費・謝金が15万円、その他10万円とする。
|