2012 Fiscal Year Research-status Report
新規シーラント材による初期齲蝕の再石灰化療法と持続的な齲蝕予防プロトコルの確立
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23792525
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
島津 貴咲 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (80582254)
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Keywords | 齲蝕予防 / シーラント / S-PRGフィラー / 脱灰・再石灰化 |
Research Abstract |
幼若永久歯の初期齲蝕に対する新しい対処法として、小窩裂溝填塞材(シーラント材)を非侵襲的に応用した治療法を開発することを目的としている。本研究では、新規レジン系シーラント材であるS-PRG (surface reaction-type pre-reacted glass-ionomer)フィラー含有シーラントに着目して、その齲蝕予防効果について検討した。 当該年度では、(1)初期齲蝕を想定した表層下脱灰ナメル質に対する各種レジン系シーラントの接合界面の観察、(2)各種レジン系シーラントの 未処理(健全)エナメル質および表層下脱灰エナメル質に対する接着強さ、(3)各種レジン系シーラント脱落後の歯質側破断面の観察を行い、齲蝕予防効果を評価した。その結果、本材料が表層下脱灰エナメル質に対しても非侵襲的に接着し、従来から用いられているレジン系シーラントと同等の接着力を示すことを明らかにした。これまでの研究により、本材料はフッ素塗布を行うことにより優れたフッ素リリース・リチャージ能を示し、フッ素以外にもストロンチウム、ホウ素などのイオンを徐放することを明らかにした。そのため、本材料を応用した長期間の管理で、シーラント直下や周辺歯質の脱灰を抑制し、再石灰化を促進する可能性が示唆された。 本研究の結果は論文、学会等で発表し、新しい齲蝕治療法として小児歯科医師、研究者から高い評価を受け、第50回日本小児歯科学会において奨励賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、新規レジン系シーラント材を非侵襲的に応用した治療法を開発することを目的としている。まずはその新規シーラント材の齲蝕予防効果について以下の点を明らかにしたため、順調に研究が進展しているといえる。①本材料は、フッ素塗布を行うことにより優れたフッ素リリース・リチャージ能を示し、フッ素以外にもストロンチウム、ホウ素などのイオンを徐放する。②初期齲蝕の歯面にも非侵襲的に接着するにもかかわらず、従来から用いられているレジン系シーラントと同等の接着力を示す。③シーラントが脱落した後も歯面は健全に保たれており、十分な脱灰抑制効果がある。 ただし、実際に歯面の再石灰化効果を確認するまでには至らなかった。実験期間や、使用するフッ素の濃度・頻度を再検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかにした新規レジン系シーラント材の持つフッ素やストロンチウムなどの元素の徐放能が口腔内環境に与える影響を明らかにするため、今後は実際にヒトの唾液を使用し、唾液酸緩衝能の変化やフッ素イオンの徐放量を客観的に評価する。このことにより、非侵襲的かつ持続的な齲蝕予防効果を指標化することができ、口腔清掃の困難な患児への応用も示唆されると思われる。 また、本材料の口腔内細菌に対する抗菌性、抗付着性、抗菌凝集性などについても検討し、より臨床に近い研究を進めていく予定である。それにより、科学的根拠に基づいた、効果的な齲蝕予防プロトコルの選択が可能になると考えられる。 さらに、研究結果を国内学会で積極的に発表し、国際誌への投稿を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
唾液中のフッ素イオンを測定する研究において、フローインジェクション分析装置を使用することにより、超微量のフッ素イオン測定を可能とするため、イオンメータとフッ素イオン電極は必要不可欠な機器である。それらの機器は当該年度に購入予定だったが、研究の進展状況により、次年度に繰り越すことになった。 消耗品に関しては、各シーラント材などの歯科材料や、酸緩衝能の研究で塩酸を作製するための試薬や試験管などが必要である。また、試料作製数が多く、より効率よく作業を行うため、新しく鋭利な技工用カーバイトバーが必要不可欠である。各実験で収集したデータや画像は、記録メディアに保存する。 研究成果は国内学会で積極的に発表する。また、英文学術雑誌への投稿費用が必要となる。
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Research Products
(10 results)