2011 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレスが歯周病に及ぼすメカニズムの解明-転写因子FoxO1の重要性
Project/Area Number |
23792531
|
Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
吉川 美弘 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (70434793)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
申請者らはこれまでに、酸化ストレスを制御する転写因子の1つであるFoxo1に着目し、酸化ストレスと骨形成の分子メカニズムの解明を行ってきた。今回、酸化ストレスによる歯周病の病態の変化を明らかにするために、まず骨芽細胞が破骨細胞への分化に影響を及ぼすメカニズムに注目した。骨芽細胞は1,25(OH)2D3の刺激によりRANKLを発現し、破骨細胞の分化を促進する。そして、この作用はBMP-2との共刺激でさらに促進されることが報告されている。そこで、共刺激による骨芽細胞の破骨細胞分化因子発現のメカニズムをBMP-2のシグナル経路の一つであるSmad1に着目し検討した。1,25(OH)2D3 (10-8 M)やBMP-2 (100 ng/mL)刺激により、RANKL mRNA発現は1,25(OH)2D3単独刺激に比べて有意に高値を示した。さらにVDRタンパク質発現は上昇していた。一方、Smad1をノックダウンした細胞では、コントロール群に比べて、VDR、RANKL発現は減少した。以上より、BMP-2がSmad1を活性化させることで、1,25(OH)2D3存在下でのRANKLやVDRを上昇させ、その結果、骨芽細胞による破骨細胞分化が促進することが示唆された。破骨細胞への分化のメカニズムの一端が示唆されたことにより、歯周病における骨吸収がおこる仕組みの解明につながったと考えられる。これらの結果を踏まえ、酸化ストレスによる骨吸収の関与に焦点をおいて、実験を続ける次第である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化ストレスと歯周病の関係をあきらかにするために骨芽細胞と破骨細胞のメカニズムを調べた。これまでの研究成果をもとに、酸化ストレスが上昇し、歯周病が悪化するメカニズムをin vivoとin vitroで明らかにする予定であったが、概要で述べたような結果を得るのに予定以上の時間がかかったため、予定していたすべての実験を終えることができなったが、ある部分では予想以上の結果が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
歯周組織の破壊度を調べるために、歯肉、歯根膜、歯槽骨の組織形態計測を行う。まず、歯周炎発現モデル肥満マウスの歯周組織における酸化ストレスを調べる。さらに酸化ストレスに関与する因子について、免疫組織染色を行い、発現の変化を調べる。その結果をもとに歯周炎発現モデル肥満マウスの歯周組織に活性酸素阻害剤を投与して歯周病が改善されるか調べる。歯周炎発現モデル肥満マウスの歯周組織がFoxo1の活性化に変化を生じているか検索する。このラットの歯肉、歯根膜、歯槽骨からタンパク質を抽出しウエスタンブロッティング法により、Foxo1のリン酸化を調べる歯根膜細胞からFoxo1がなくなった際の細胞の機能発現の変化を調べる。in vitroでマウス歯根膜細胞株PDL-A9BからFoxo1をノックダウンし、増殖、線維形成能の変化を調べる。さらに酸化ストレスに関与する因子の変化を調べる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に関する使用計画については推進方策で述べた実験を行う際の材料費や培養試薬などの消耗品費である。また、研究成果報告のためには論文の英文校正を受ける必要性がある。さらに国内外での成果報告にてデータの討論を行い、論文にする予定であり、諸費が必要となる。
|