2012 Fiscal Year Research-status Report
口腔レンサ球菌による唾液ムチン分解が口臭物質の発生機構におよぼす影響
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23792532
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
谷口 奈央 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (60372885)
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Keywords | 口臭 / 口腔内細菌 / β-galactosidase |
Research Abstract |
口臭患者より採取した唾液中のβ-galactosidase活性を定量解析し、歯周病由来口臭群と生理的口臭群に分類して検証した。β-galactosidase活性は生理的口臭群における口臭パラメータと強い相関を示し、反対に歯周病由来口臭群では相関を示さなかった。また、臨床パラメータにおいては、酵素活性は生理的口臭群の舌苔付着スコアおよびプラーク付着スコアと相関を示し、歯周病由来口臭群では相関を示す項目はなかった。歯周病由来口臭では、歯周病関連細菌によるアミノ酸分解が主要な口臭発生過程となり、口腔内常在菌が優勢である生理的口臭では、グラム陽性菌の産生するβ-galactosidaseによる糖タンパク分解が、口臭物質産生に大きく影響することが示唆された。口臭の主成分である揮発性硫黄化合物 (volatile sulfur compounds, VSCs) は、口腔内の嫌気性菌によるアミノ酸分解によって発生すると考えられているが、申請者らはグラム陽性菌の関与を予想している。そこで口臭に関連する細菌構成を明らかにするために、Terminal restriction fragment length polymorphisim (T-RFLP) を利用して口臭患者の唾液中の細菌叢をプロファインリングし、口臭に関連の強い口腔フローラを構成単位で見いだした。また、VSCsのなかでも重要な2成分である硫化水素 (H2S) とメチルメルカプタン (CH3SH) の、それぞれの産生に強く関わる口腔内フローラの特徴を、barcoded pyrosequencing法を用いて解析し、明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
口臭患者の唾液中のβ-galactosidase活性の定量解析によって、本酵素による糖タンパク分解がVSCs産生に大きく影響することが示唆された。また、唾液を超遠心分離し上清と沈殿にわけ、酵素の局在を調べたところ、沈殿成分に活性があり上清成分には活性がみられず、本酵素活性は菌体の表面に存在することがわかった。続いて、8種のグラム陽性菌標準菌株の培養液についてβ-galactosidase活性を比較したところ、いずれも0.5~0.9 units/mLの範囲で活性を示し、S. mitis ATCC 903株が最も強い活性を示した (0.9 units/mL)。 T-RFLPを利用して口臭患者の唾液中の細菌叢をプロファインリングし、口臭に関連の強い口腔フローラを構成単位で見いだした。口臭の強い細菌叢ではPrevotella, Veillonella, Fusobacterium, Porphyromonas, Parvimonas, Neisseria, Haemophilus, Aggregatibacterが特徴的にみられ、口臭の弱い細菌叢ではStreptococcus, Granulicatella, Rothia, Treponemaが高い割合を示した。またStreptococcusは全てのタイプの口腔内において優勢であった。次にH2S/CH3SH比が極端な値を示す重症口臭患者と口臭がほとんど認められない被験者について、唾液中の細菌構成の解析を行った。H2S高産生群では、他の2群に比べNeisseria, Fusobacterium, Porphyromonas, SR1の割合が特徴的に高い一方で、CH3SH高産生群ではPrevotella, Veillonella, Atopobium, Megasphaera, Selenomonasの割合が高かった。
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Strategy for Future Research Activity |
嫌気性菌は糖分解能が低いと言われているが、Porphyromonas gingivalisなどの全塩基配列のデータベースではlacZ遺伝子が存在する。このため、グラム陽性菌だけでなく、代表的な口腔内細菌のβ-galactosidase活性の定量解析をしておく必要がある。また酵素活性に影響を与える因子についての検討を加える。S. salivarius GTC 0215株より染色体DNAを調製し、S. salivarius 57.Iのデータベースをもとに、β-galactosidaseをコードする遺伝子配列からプライマーを設計し、pBluescript II SK+に組み込む。 これまで細菌叢解析は、試料採取が容易で、舌苔の細菌構成と類似するとされる唾液を対象として行ってきたが、口臭の直接の発生源は舌苔だと考えられている。そこで、舌苔の細菌叢と唾液の細菌叢の構成を十分に比較し、また舌苔の細菌構成と口臭との関連性を吟味する。口臭患者の口臭測定時に、唾液と舌苔を同時に採取し、これらの構成の違いと口臭との関連性を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費は、β-galactosidase遺伝子の単離、遺伝子構造解析、タンパク発現、精製、酵素活性解析、舌苔細菌叢の構造解析などに必要な試薬、器具などに使用する。旅費は、研究成果を国内外の学会で発表するための出席、発表に使用する。その他は、研究成果を国際学会、英語論文にて発表するために、英文校閲料、学会誌投稿料などに使用する。
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Research Products
(16 results)