2011 Fiscal Year Research-status Report
褥瘡・難治性皮膚潰瘍の創部炎症反応機構の解明とケア技術の確立
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23792534
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅野 恵美 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10431595)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 創傷治癒学 / 看護技術 / 感染 / 難治性皮膚潰瘍 / 炎症 |
Research Abstract |
皮膚創傷治癒過程において、創部の炎症反応は創の清浄化、正常な治癒経過に重要なプロセスである。しかし、炎症反応の解析は遅れており、慢性皮膚潰瘍における炎症遷延の原因をはじめ、慢性皮膚潰瘍と急性創傷の炎症反応の相違点は明らかではない。 平成23年度は、炎症反応に基づく管理方法の開発に先立ち、急性創傷と慢性皮膚潰瘍における炎症期の相違を明らかにすることを目的とした。相違点の詳細な解明には、ヒト創部皮膚組織の広範な摘出が困難であることから、実験動物モデルを用いて解析を行った。 結果および意義: 急性創傷モデルでは、受傷24時間をピークとして創部に好中球が集積し、炎症性サイトカインTNF-αの産生が高まっていた。炎症反応は遷延することなく、3日目には明らかな上皮の伸展が認められた。一方、白血球を減少させた慢性化モデルでは、白血球集積数の減少、TNF-α産生量の減少を認め、治癒も遷延していた。特に、創部に集積する好中球数の有意な減少を認めた。このことより、受傷直後の炎症反応には好中球が深く関与する可能性が示唆された。 次年度は、今年度抽出された好中球の働きに注目し、炎症反応に有効なケア技術を明らかにすることを目的に研究を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに実験を実施し、学会発表を行うと共に、得られた結果の一部を論文化して公表することが出来たため、順調な進展と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
慢性皮膚潰瘍では炎症反応が遷延するために治癒が遅れることが問題視されているが、遷延する炎症期に対する創傷管理方法は世界的にも解明されていない。この点について、本研究で得られた結果を臨床に還元することができればと考える。 そこで、世界創傷治癒学会や米国免疫学会に参加し、創傷および炎症反応(免疫応答)の第一人者である先生方とディスカッションする機会を設けたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度同様、課題把握のため、文献検索と当該分野の学会に参加し、情報収集を行う。実験計画・実験に関しては、平成23年度の実験手技を見直し、問題点を修正、改善したのち研究計画を立案する。平成23年度の結果をもとに、動物モデルに創傷治癒機転がうまく働かない感染、低栄養状態や免疫不全状態など治癒が遅延する条件を加え、創部炎症反応について解析する。また、ケア技術 (洗浄、ドレッシング材など) による炎症反応の変化について検証する。 さらに、得られた結果について、当該分野の国内・国外学会にて研究成果の発表を行ない、論文として公表する。以上に研究費を用いる予定としている。 また、次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用学であり、平成23年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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