2012 Fiscal Year Annual Research Report
褥瘡・難治性皮膚潰瘍の創部炎症反応機構の解明とケア技術の確立
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23792534
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅野 恵美 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10431595)
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Keywords | 創傷治癒学 / 看護技術 / 感染 / 慢性皮膚潰瘍 / 炎症 / 緑膿菌 |
Research Abstract |
皮膚創傷治癒過程において、創部の炎症反応は創の清浄化、正常な治癒経過に重要なプロセスである。しかし、炎症反応の解析は遅れており、慢性皮膚潰瘍における炎症遷延の原因をはじめ、慢性皮膚潰瘍と急性創傷の炎症反応の相違点は明らかではない。 平成24年度の成果:平成23年度に得られた結果をもとに、炎症反応を誘導する物質の詳細な解析を行った。相違点の解析には、ヒト創部皮膚組織の広範な摘出が困難であることから、動物モデルを用いた。結果および意義:急性創傷モデルでは、受傷24時間をピークとして創部に好中球が集積し、炎症性サイトカインTNF-αの産生が高まることを平成23年度に確認しているが、創部に緑膿菌が存在する場合、約10倍の白血球数上昇を確認した。TNF-α産生も3倍程度上昇を認めた。次に、緑膿菌接種下におけるこの白血球集積、TNF-α産生の上昇が、緑膿菌菌体成分中のどのような物質によるものか、検討をおこなったところ、緑膿菌の細菌間情報伝達物質であるホモセリンラクトンである可能性を突き止めた。このことより、慢性皮膚潰瘍にみられる炎症遷延には細菌中のホモセリンラクトンが関与している可能性が考えられた。 研究機関全体の成果:平成23年度および24年度に実施した本研究により、慢性皮膚潰瘍における炎症遷延には緑膿菌が合成するホモセリンラクトンが関与する可能性が示された。これまでに細菌の存在が創部の炎症を遷延させ、治癒遅延に関与することが示唆されてきたが、直接的に炎症反応を制御する物質は同定されていなかった。今回同定された、ホモセリンラクトンの働きを阻害する抗体や薬剤の開発されれば、創部の炎症反応を制御できる可能性が高いため、大変意義ある成果だと考える。
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