2011 Fiscal Year Research-status Report
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23792537
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
松井 健志 独立行政法人国立循環器病研究センター, 予防医学・疫学情報部, 室長 (60431764)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 社会医学 / 看護学 / 研究倫理 / 医学教育 |
Research Abstract |
平成23年度は研究初年度であり、本年度の研究成果は限定的である。本年度は先ず、看護学研究および研究倫理に関する国内並びに国外の文献資料を収集し、文献学的検討を行い、看護学研究に求められる倫理性についての認識の現状について俯瞰した。この検討から明らかとなった主な内容は、以下の6点である。(1)看護学と医学は異なるディシプリンであるため、看護学研究は医学研究とは異なっており、従って、看護学研究における倫理問題の性質及び強調点は医学研究とは異なる、という一般認識があること。(2)看護学研究は、体系化された「科学的、系統的な探究」の学として位置づけられること。(3)看護学研究の概念範囲は極めて広く、看護教育や看護管理についての研究を含む場合があるが、狭義には看護ケアに関する現象を扱うものを看護学研究としていること。(4)日本においては、欧米、特にアメリカを中心とする論者の文献・論文等の紹介を通じて、1985年以降になってようやく看護学研究の倫理的問題についての認識が現れたこと。(5)(4)の導入期において、日本の看護領域一般について極めて影響力のあった論者による一部誤った内容の紹介によって、日本における看護学研究の倫理の方向性が、欧米のそれとは異なる方向へ進む結果となったこと。(6)(5)の結果、日本で一般的に認識されている看護学研究に関する倫理原則の中には、国際的に合意された原則にはない、診療上の倫理原則が潜入していること。 この文献学的考察から、看護学研究に求められる倫理性を今後考察し、教育プログラムを構築していく場合には、日本と欧米との大きな差異を念頭に置きつつ実施しなければならないことが今回明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度途中で研究代表者の所属の異動があった影響から、当初計画で検討していた看護学研究計画書の網羅的レビューの対象施設を変更する必要が生じた。そのため、本年度に予定していた外部施設への出張採録を見送り、協力施設の選定と調整を改めて行わなければならなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は先ず、本年度での実施を見送った外部施設への出張採録を中心に研究を実施する予定である。調査対象施設は現在の所属施設とともに、外部1施設を考えている。 また、当初計画通り、平成24年度においても文献学的研究は全研究期間を通じて継続して行う予定である。加えて、本年度に得られた知見を基にして、看護学研究のための研究倫理教育プログラムの初級編の開発を進めていく。この開発する初級教育プログラムについては、研究期間中の早い段階で、看護学研究者を対象とする試行的セミナーやワークショップを開催して還元を図るとともに、看護学研究者からのフィードバックを得ることによって中級編等の開発に役立てていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に使用しなかった研究費は、次年度に実施する看護学研究計画書の網羅的レビューのための出張採録にかかる旅費に充当する予定にしている。なお、次年度の研究費の支払請求に際しては、この分を差し引いた額を計上している。次年度は、この出張採録を除き、当初計画通り、看護学研究のための実践的な研究倫理教育プログラムの開発に取り組む予定であり、そのための資料・情報収集のために主に研究費を使用することを考えている。
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