2011 Fiscal Year Research-status Report
看護師の感情労働に伴う自己感情の揺さぶられ理解の為のセルフチェックツールの開発
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23792570
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Research Institution | Takarazuka University |
Principal Investigator |
片山 知美 宝塚大学, 看護学部, 講師 (30510812)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 感情労働 / 自己感情 |
Research Abstract |
筆者は、看護師の感情労働に伴う自己感情の揺さぶられ理解の為のセルフチェックツールの開発に向け、平成23年度は、ポジティブな帰結に至る感情労働のパターンを形成する因子抽出を目的として、以下の検討を行った。 まずはじめに、研究者が先の研究で明らかにした感情労働のプロセスを構成する【情の交流の表層レベル】、【自己の看護に対する違和感】、【現実とのズレに伴う葛藤と混乱】、【既成の社会的役割からの脱却】、【情の交流の深層レベル】、【特化された社会的役割の獲得】、【体験の意味の創造】、【職業観の変容】、【経験的知識の再編成】の9つのカテゴリーに基づき、看護師の感情労働において自己感情がポジティブな帰結に至るパターン形成に関与する因子を質的に抽出することを試みた。その結果、先の研究では感情労働のプロセスでは常に循環プロセスを踏んでおり、ネガティブな帰結やポジティブな帰結に至っていることを明らかにしていたが、ポジティブな帰結に至る感情労働のパターン形成に「患者の回復過程に関わる」、「患者の感情表出に触れる」、「患者・家族からの感謝」、「死の見取り」、「看護師としての自覚」、「看護師としてのこれからに自分への期待感」、「早くできるようになりたい焦り」、「できない自分に対する怒り」、「自分の看護を表現しきれなかった反省」といったカテゴリーが関与していることが明らかになった。そこで次の段階とし、先行研究をレビューした結果をもとに感情労働における自己感情のポジティブな帰結に関連するカテゴリーを表現する質問内容の検討を行い、看護師の感情労働に伴う自己感情の揺さぶられを理解する為のセルフチェックツールの質問項目作成準備を行うに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、ポジティブな帰結に至る感情労働のパターンを形成する因子の抽出と理論的枠組みの構築が目的であった。そのため、感情労働における自己感情のポジティブな帰結に関連する因子の抽出などにおいて質的な分析を行う際には、十分な検討を繰り返す必要があった。しかし、長年にわたり質的研究のコンサルテーションを依頼している知識提供者が東日本大震災で被災し、こうした検討の時間を確保することができなかった。よって、感情労働のプロセスを構成するカテゴリーから看護師の自己感情のポジティブな帰結に至るパターン形成に関与する因子の抽出、さらに、先行研究のレビュー内容に基づく質問項目の検討が十分に進まなかった。そのため、研究実施計画で示したポジティブな帰結に至る感情労働のパターンを形成する因子の抽出と理論的枠組みの構築の過程において、質問項目作成準備にとどまり、理論的枠組みを構築するにまでに至ることができなかった。よって、研究実施計画からやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降の研究方策であるが、看護師の感情労働に伴う自己感情の揺さぶられ理解の為のセルフチェックツールの開発に向け、まずは、平成23年度の成果を踏まえて、感情労働に伴う自己感情の揺さぶられを把握するための質問項目の選定を実施する。また、それぞれの質問項目は、表面妥当性の検討を行うために、病院で勤務する中堅レベル以上の看護師に依頼し、文章表現や形式の修正を行っていく。その後、予備調査を実施し、その結果をもとに、本調査に向けた感情労働に伴う自己感情の揺さぶられを把握するための質問項目を取捨選択する。さらに、本調査に向けてセルフチェックツールの微調整を行っていくこととする。そして本調査では、中・大規模病院に勤務する看護師を対象に看護師の感情労働に伴う自己感情の揺さぶられを質問紙調査の形式でセルフチェックを実施してもらうことで、質問項目の検討を行うこととする。また、本研究の最終段階としては、看護師の感情労働に伴う自己感情の揺さぶられ理解の為のセルフチェックツールの信頼性・妥当性の検証を行うこととする。また、明らかになった研究結果は適宜、学会報告を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、平成23-24年度の結果を受け、看護師の感情労働に伴う自己感情の揺さぶられ理解の為のセルフチェックツールの信頼性・妥当性の検証を行うことを目的としている。よって、開発ツールの信頼性・妥当性の検証が必須となる。よって、コンサルテーション費:5,000円×12回=60,000円、消耗品購入費:50,000円、会議に伴う会場費等:30,000円、専門的指導を受ける場所までの交通費:130,000円が必要である。また、研究成果を発表するに当たり、研究成果発表費用:50,000円、翻訳・校閲費:100,000円、投稿料:50,000円、論文別刷費:30,000円が必要となると考えている。
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