2012 Fiscal Year Annual Research Report
痛みによる循環反応を指標としたタッチの効果の神経性機序の解明
Project/Area Number |
23792575
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Research Institution | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
Principal Investigator |
渡邉 信博 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (00540311)
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Keywords | タッチ / 痛み / 循環 / オピオイド / 脊髄 |
Research Abstract |
本研究では、軽微な機械的皮膚刺激(タッチ)の効果とその神経性機序を、痛み(侵害)刺激で誘発される循環反応を指標に解明することを目的とする。前年度までに、(1)侵害性熱刺激により誘発される心拍反応をタッチが抑制すること、(2)タッチの効果には、脊髄内のオピオイド系が関与することを見出した。 本年度は、タッチの効果に関連するオピオイド受容体の種類を検討した。脊髄内オピオイド受容体を遮断する目的で、腰髄クモ膜下腔に留置したカテーテルを介してオピオイド受容体遮断薬を投与した。実験は、前年度に確立した実験モデルを用いて行なった。 選択的δオピオイド受容体遮断薬(naltrindole hydrochloride)投与後、侵害性熱刺激により誘発される心拍反応は、タッチにより抑制された。このタッチによる抑制の程度は、溶媒(生理食塩水)投与時と同程度であった。一方、選択的μ-オピオイド受容体遮断薬(CTOP)を投与したところ、熱刺激による心拍反応に対してタッチは影響を与えなかった。すなわち、熱刺激による心拍反応に対するタッチの抑制効果は、脊髄内μ-オピオイド受容体を介して生じていることを示唆する。 タッチ前の安静時心拍数や心拍応答の程度に、薬剤投与の有意な影響は見出されなかった。 以上の結果より、タッチは脊髄内のμ-オピオイド系を賦活させることにより、侵害性熱刺激による侵害受容伝達を抑制し、心拍反応を減弱させると考えられる。本研究の成果は、看護や介護の現場で頻繁に用いられているタッチの治療的価値に関して、基礎的知見を提供すると考えられる。
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