2011 Fiscal Year Research-status Report
治療不応期の造血器悪性腫瘍患者・家族の意思決定を支えるケアの検討
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23792581
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 由紀 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30587382)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | がん / 看護学 / 造血器悪性腫瘍 / 意思決定 / 緩和ケア / 多職種 / 連携 |
Research Abstract |
1. 血液内科医、緩和ケア医への面接調査【方法】2011年8月から12月に調査を実施した。対象は、日本血液学会認定専門医資格を保持する血液内科医と、日本緩和医療学会認定専門医または暫定指導医資格を保持する緩和ケア医とし、半構造化面接を行った。調査内容は、治療不応期の造血器悪性腫瘍患者の特徴、治療不応期の意思決定場面における医療者が担うべき役割、治療不応期の造血器悪性腫瘍患者の意思決定を支える多職種連携の在り方、多職種連携(特に、血液内科医と緩和ケアチーム(Palliative Care Team; 以下、PCT)との連携)における障害とその解決策などを尋ねた。分析には質的内容分析の手法を用いた。【結果】血液内科医11名、緩和ケア医10名に調査を実施した。本調査対象の血液内科医/緩和ケア医は、治療不応期の白血病/悪性リンパ腫患者について、原病や治療に伴う身体症状や精神的つらさを抱え、固形腫瘍とは異なる症状緩和の手法を必要とすると認識していた。多職種連携、特に血液内科医とPCTの連携の障害として、血液内科医は依頼のタイミングの見極めが難しいことやPCTとのディスカッションの不足を挙げていた。一方、緩和ケア医は身体症状マネジメントに対する血液内科医の自負のためにPCTに依頼する認識が低いことや緩和ケア医自身の血液腫瘍に対する知識不足、血液内科医の緩和医療に対する認識不足を挙げていた。これらの障害に対して、血液内科医/緩和ケア医から、早期の依頼、PCTにできる対応や患者の病状の特徴に関する情報共有、多職種での話し合いの必要性などが語られ、これらが血液内科医とPCTとの連携の解決策となることが示唆された。意思決定支援における医療者が担うべき役割や多職種連携の在り方については、今後さらに質的内容分析を進めていく。2.看護師への面接調査:2012年3月から調査を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
治療不応期の造血器悪性腫瘍患者・家族の意思決定を支えるケアについて、看護の視点および多職種連携の視点からの詳細な支援方法を提示することを目的とし、本調査を計画した。多職種連携を検討するうえで、治療不応期において重要性が増す緩和ケアの視点、緩和ケアチームの役割を検討することは、看護の役割を検討することと同様に重要と考えた。しかしながら、面接調査開始前の文献検討や緩和ケア医/血液内科医へのプレインタビューから、意思決定を支える多職種連携の必要性は認識されている一方で、造血器悪性腫瘍患者のケアに関する連携が上手く行われていない実際が伺えた。連携の障害とその解決策を明らかにすることは、治療不応期の造血器悪性腫瘍患者に対する緩和ケアの向上を目的とした多職種チームアプローチを推進していくために意義あることと考えた。しかし、治療不応期の造血器悪性腫瘍患者の支援における血液内科医とPCTとの連携の障害と解決策について、具体的かつ詳細に調査した研究は国内外ともにみられなかった。そのため、量的研究を前提としたアイテムプール目的の質的研究ではなく、意思決定を含む造血器悪性腫瘍患者の支援に関する多職種連携の課題を明確にし、解決策・支援策を明確化することを目的としたより細やかな質的研究の必要性を感じたため、対象者数を当初の予定より増やし(医療者30名以上を予定)、調査内容をより具体的に設定し、質的内容分析の手法に則り詳細な検討を実施することとしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
血液内科医、緩和ケア医、看護師を対象とした面接調査と質的内容分析を完遂し、その結果を踏まえたうえで患者・家族への面接調査を計画していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
看護師対象の面接調査のテープ起こし、質的内容分析の専門家によるスーパーバイズに対する謝金、および研究成果の発表(学会発表、論文発表)、患者・家族への面接調査のテープ起こしに使用することを予定している。
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