2012 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部がん患者の治療経過に伴う”食”の認識・行動・健康状態と看護の展開
Project/Area Number |
23792584
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
長崎 ひとみ 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (00436966)
|
Keywords | 頭頸部がん / 食の認識 / 食行動 / 健康状態 / 食事・栄養摂取状態 |
Research Abstract |
【目的】本研究の目的は,頭頸部がんにより化学療法,放射線療法,手術療法を受ける患者の各治療に伴う食事・栄養摂取状態の変化と,身体状態,食の認識との関連を明らかにし,看護師の視点で患者の治療過程に適った食生活指導を提言することである。 【研究計画の概要】第一段階として,治療に伴う患者の特徴を示す調査内容を検討するとともに,患者の治療中の食事・栄養摂取量の特徴を明らかにすることを目的とし,頭頸部がん患者7名を対象に,治療前(以下,I期),治療中(各治療群治療による影響が最も出現すると思われる時期,以下,II期)に食事・栄養摂取状態(1日の食事の食品群別摂取量,栄養摂取状態),身体状態(自覚症状,Alb,Hb,RBC,総リンパ球数等),食の認識を調査した。食事摂取量は秤量し,栄養価計算には栄養価計算ソフトを用いた。それぞれ平均値および標準偏差を算出し,各治療群の特徴をみた。 【研究成果の概要】頭頸部がん患者の治療別にみた食事・栄養摂取量の変化の特徴は,化学療法中患者では,悪心・嘔吐・食欲不振により,栄養摂取量,食事摂取量は顕著に減少し,特にたんぱく質(80%減少),脂質(92%減少)摂取が低下した。特に穀類,いも類,油脂類の摂取量が低下し,果実類摂取量は治療中に増加した。放射線療法中患者では,疼痛,口腔内乾燥が出現し,各栄養素摂取量が治療前より約30%減少した。手術療法患者では,疼痛等の自覚症状の軽減に伴い食事摂取量は増加したが,栄養摂取量は術前より低下し,特に炭水化物(55%減少)の摂取が低下した。食の認識では,「楽しみ」,「食欲を満たす」,「満腹感を得る」の項目が化学療法群で顕著に低下した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は第一段階調査の実施と,その結果をもとに第二段階の調査内容の検討を行った。自覚症状については,治療前から治療中にかけて変化がみられた項目を調査項目とし項目を絞り込んだ。調査結果から,治療中の患者は「口内が乾燥する」「パサパサしたものが飲み込みづらい」「固いものが食べづらい」等が高値となり,食事摂取量でもいも類,穀類,肉類の摂取量が減少していた。摂取食物の食物特性も食事摂取量に影響を及ぼすと考えられたため,今後の調査内容に追加する。また,治療中に「味を感じない」が高値となり,味覚低下が出現していたため,味覚低下,食欲低下,倦怠感に影響を及ぼすとされる血清亜鉛も調査項目に加えることとした。手術療法患者では,部位や侵襲の度合いにより自覚症状や食事・栄養摂取量に個人差が大きいため,第二段階では化学療法,放射線療法患者を対象とする。以上のことより,治療に伴う患者の特徴を示す調査内容の整理をするという第一段階の目標はまずまず達成された。しかし,症例数が少なく,治療前・中のみの調査であったため,頭頸部がん患者の治療過程における食事・栄養摂取状態の特徴を示すには至らないため,第二段階調査を開始する。
|
Strategy for Future Research Activity |
対象:頭頸部がん患者で化学療法,放射線療法を受ける患者各10名程度。調査内容:身体症状(自覚症状(26項目),血液生化学的検査(Alb, Hb, Ht, WBC,RBC ,総コレステロール,HDL, TG,ビタミンB2,ビタミンB6,鉄,亜鉛,葉酸),食事・栄養摂取状態,摂取した食事に対する食物特性(食感,におい,温度,味等6項目),食の認識(合計18項目)。調査時期:化学療法患者では,治療前,治療開始1週目(5~7日),治療開始2週目(12~14日目),治療終了後(21日目~28日目)とする。放射線療法では,治療前,40Gy, 治療終了時,治療終了後2週目に調査を実施する。分析方法:各項目の平均値,標準偏差を求め,治療前・中・後の変化の比較には一元配置分散分析を行う。食事・栄養摂取量と自覚症状,血液生化学的検査値,食の認識との関係性はSpearman順位相関係数を用いてみる。頭頸部がん患者の食生活指導の提言手順:食生活の実態の分析結果から,治療別患者の食生活指導に必要な項目を抽出する。摂取しやすい食品,調理法,食物特性,食事・栄養摂取量,必要量等の分析結果をもとに,既存のガイドラインであるChemotherapy and Biotherapy Guidelines and Recommendations for Practice(Oncology Nursing Society,2005)の食事・栄養に関する教育内容を加え,頭頸部がん患者の治療別食生活指導への提言(案)を作成する。作成した頭頸部がん患者の食生活指導への提言(案)について医師・看護師・管理栄養士に示し,臨床で活用できるとしてまとめ,臨床看護師に向けて配布する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は対象者数が年度当初の計画よりも少なかったため,未使用金が生じた。次年度は対象者の生化学的血液検査で亜鉛,ビタミンB2・6,葉酸等の調査を実施予定であり,本年度の未使用金額も含め血液分析費用に研究費を充てる予定である。また,本研究結果を,看護師が活用できるような「頭頸部がん患者の食生活指導への提言」として冊子にまとめるための費用として使用する予定である。
|