2013 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部がん患者の治療経過に伴う”食”の認識・行動・健康状態と看護の展開
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23792584
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
長崎 ひとみ 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (00436966)
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Keywords | 頭頸部がん / 食生活 / 化学療法 / 放射線療法 |
Research Abstract |
【目的】本研究の目的は,頭頸部がんにより化学療法,放射線療法を受ける患者の各治療に伴う食事・栄養摂取状態の変化と,身体状態,食の認識との関連を明らかにし,看護師の視点で患者の治療過程に適った食生活指導を提言することである。 【研究計画の概要】化学療法中患者(以下,化学療法群),放射線療法中患者(以下,放射線療法群)を対象に,I期(治療前),II期(化学療法1週目,放射線療法40Gy),III期(化学療法2週目,放射線療法終了時)に食事・栄養摂取状態(1日の食事の食品群別摂取量,栄養摂取量),身体状態(自覚症状:VAS0~100mm,血液生化学的検査値:Alb,総リンパ球数等)を調査した。1日食事摂取量は3日間各食秤量した平均値とし,エクセル栄養君を用い栄養価計算した。分析はそれぞれ平均値・標準偏差を算出し,I期~III期の変化は一元配置分散分析を用いた。 【研究成果の概要】化学療法群6名の治療中に強く出現した自覚症状は,「食欲がない」(I期2.0±3.3・II期45.7±43.7・III期40.5±41.5),「下痢」(1.7±3.2・18.3±30.6 ・63.2±42.6)であり,I期とII期およびIII期に有意に変化した(P<0.05)。栄養摂取量は,エネルギー(1828.3±202.3・1221.9±436.3・1264.4±150.4),たんぱく質,炭水化物摂取量が低下し,特に穀類摂取量が低下した。放射線療法群8名に強く出現した自覚症状は,「口内痛」(I期8.0±10.0・II期68.8±27.0・III期46.2±43.8),「硬いものが食べにくい」(39.3±34.9・72.4±30.4・66.0±41.4)であり,I期からII期に有意に低下した。栄養摂取量では,炭水化物摂取量(272.1±27.3・219.0±79.0・170.7±78.9)が有意に低下し,特に穀類と肉類摂取量が低下した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は第二段階として化学療法中患者と放射線療法中患者の治療過程に応じた変化の特徴をみるために,I期~IV期の縦断的調査を実施した。当初計画の対象者数を各治療群20名程度と設定しているが,現在化学療法群12名,放射線療法群14名の調査が終了している。対象者の体調悪化(倦怠感,悪心,下痢,易感染状態等)により調査継続が困難と判断された対象者が多く,当初計画の対象者数に満たないため,補助事業期間を延長し調査を続行することとした。血液生化学的検査値では,第一段階の結果を受けて,血清Alb, Hb値に加え,総コレステロール,HDL, TG,ビタミンB2,ビタミンB6,鉄,亜鉛,葉酸)を調査することができた。自覚症状と栄養摂取量と血液生化学的検査値との関係について分析中であり,最終目的である既存のガイドラインであるChemotherapy and Biotherapy Guidelines and Recommendations for Practice(Oncology Nursing Society,2005)の食事・栄養に関する教育内容をこれらの結果に加え,頭頸部がん患者の治療別食生活指導への提言(案)を作成し,頭頸部がん患者の食生活指導への提言(案)を臨床で活用できるとしてまとめるまでには至っていない。これらのことから,現在までの達成度は「やや遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,調査を継続し対象者数を増やす。分析方法として,各項目の平均値,標準偏差を求め,治療前・中・後(I期~IV期)の変化の比較には一元配置分散分析を行う。食事・栄養摂取量と自覚症状,血液生化学的検査値,食の認識との関係性はSpearman順位相関係数を用いる。各治療中の栄養摂取量が特に低下している患者をピックアップし,他患者と比較することでその時期の患者の身体状態や栄養摂取量,摂取形態(調理法)の特徴を明らかにする。これらの食生活の実態の分析結果から,治療別患者の食生活指導に必要な項目を抽出する。摂取しやすい食品,調理法,食物特性,食事・栄養摂取量,必要量等の分析結果をもとに,既存のガイドラインであるChemotherapy and Biotherapy Guidelines and Recommendations for Practice(Oncology Nursing Society,2005)の食事・栄養に関する教育内容を加え,頭頸部がん患者の治療別食生活指導への提言(案)を作成する。作成した頭頸部がん患者の食生活指導への提言(案)について医師・看護師・管理栄養士に示し,臨床で活用できるとしてまとめ,臨床看護師に向けて配布する。これらの結果を,日本臨床栄養学会,日本看護科学学会等に投稿し発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度から第二段階調査として対象者を化学療法,放射線療法中患者に絞りI期~IV期の縦断調査を実施しているが,対象者の体調悪化(倦怠感,悪心,下痢,易感染状態等)により調査継続が困難と判断された対象者が多く,IV期まで調査を完了できた対象者が各治療群10名程度で当初計画の各20名に及ばないため未使用額が生じた。 未使用額は,対象者の血液生化学的検査値(TP,亜鉛,鉄,葉酸,ビタミンB2,B6,T-cho,HDL,LDL等)の血液分析費用および,研究成果の発表を行うための費用に充てることとする。
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